〘完結〛婚約破棄ですか、ところで浮気相手はどちら様で?

桜井ことり

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「だ、黙れ! 黙れ、リリアンヌ!」

ついに、アルフレッド殿下が、獣のような叫び声を上げた。

「そ、そのような書類、お前が仕組んだに決まっている! 俺を陥れるための、罠だ!」

彼は、最後まで見苦しく言い逃れをしようとした。自分が犯した罪の重さから、目を逸らそうと必死だった。

「罠、でございますか」

私は、静かに首を振った。

「よろしいでしょう。ならば、この方々にも、証言していただきましょうか」

私の合図で、広間の隅に控えていた数人の男たちが、前に進み出た。

王宮の財務を司る、財務官。
国の会計を監査する、会計監査官。
そして、殿下に命じられ、実際に金のやり取りを行った、王宮の侍従長。

彼らは、国王陛下の前に進み出ると、深々と頭を下げた。

「陛下、恐れながら申し上げます」

財務官が、震える声で口火を切った。

「リリアンヌ様がご提示された書類は、全て、真実でございます。我々は、幾度となく殿下をお諌め申し上げました。しかし、殿下は我々の諫言をお聞き入れになられず、権力を盾に、不正な支出を強要なさいました…」

「我々も、監査において、この不正な金の流れを把握しておりました。ですが、王太子殿下のご命令とあっては、公にすることができず…誠に、申し訳ございません!」

会計監査官が、涙ながらに続く。

次々と、殿下の罪を裏付ける証言が、側近たちの口から語られていく。

アルフレッド殿下は、信じられないといった顔で、彼らを睨みつけた。

「き、貴様ら…! 俺を、裏切るのか!」

「裏切ったのは、殿下の方ではございませんか!」

侍従長が、悲痛な声で叫んだ。

「我々が、どれほどの思いで、ヴァイス王家にお仕えしてきたと! その忠誠を、殿下ご自身が踏みにじられたのですぞ!」

もはや、アルフレッド殿下に味方する者は、誰もいなかった。

彼が信じていた愛は、醜い嘘だった。
彼が信じていた忠誠は、彼自身の裏切りによって失われた。

全ての言い逃れの術を失い、自分が犯した罪の重さと、その結果としての完全な孤立を突きつけられ、アルフレッド殿下は、ついに、糸が切れた人形のように、その場に膝から崩れ落ちた。

「あ…あぁ…」

力なく、床に両手をつく。その姿は、未来の国王たる威厳など、もはや一片も残っていなかった。ただの、犯した罪の重さに打ちのめされた、哀れな男の姿だった。

セラフィーナは、その様子を見て、自分の運命も尽きたことを悟ったのだろう。金切り声を上げる気力も失い、ただ呆然と、床にへたり込んでいる。

広間は、静寂に包まれていた。

華やかだった舞踏会は、今や、二人の罪人を裁く、厳粛な法廷と化していた。

私は、崩れ落ちた元婚約者を見下ろし、静かに告げた。

「殿下。これが、あなたの選んだ道の、結末ですわ」

その声は、誰の耳にも、まるで運命の宣告のように響いた。
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