5 / 6
第5話「じゃあ、『アレ』も見たの?」
しおりを挟む
やがて、目の前から重い声が聞こえてきた。
「それで大事な娘が二人死んだら、お前はどう責任をとってくれるんだ、エェ?」
背筋がゾクリとした。
「生き残ったとしても俺みたいに片腕なくしたら、お前は面倒みれんのか? 俺はかつてヤツと戦ったことがある。だからこそ、こいつらにはまだ早えッつってんだ」
「でも、二人の泳ぎは……」
「まともに泳げねえ素人がよ。ぐちぐち口出ししてんじゃねぇよ。そんな生意気な口を叩くんなら、テメェから〝教育〟してやろうか!?」
やっぱ一発殴ったくらいじゃ現代の戸塚宏は目を覚さないか。だったら正面から殴り合って……
いや、待てよ。そんなことやって二人が喜ぶか。それに、俺はこれでも病人だ。万が一のことがあったら————
「星月さんよ、もう、いいんでねえか」
ふと、後ろから声が聞こえた。
振り返ると、島で有名な「偉そうなオーラを出してるおじいちゃん」がいた。かつてナメック星人の襲撃から島を守ったと噂されているが、俺は嘘だと睨んでいる。
「しかし、会長……彼女らはまだ……」
「二人の泳ぎは、二人がよぉく知っとる。娘を信じてやるのも、父親の役目だべ」
「そうだべ、ルリノちゃんクルリちゃん、二人ともよう泳げるべ」
「巣立ちの年頃よぉ」
周囲から続々と島の漁師たちが出てきた。少なくとも10人以上はいる。
「高校の先生方から話は聞いとる」
「雲川さんとこの息子さんがイカがないと死んじまいよるんって」
「ワシらも船から見守るたい。行かせてやってもえぇんじゃねぇか?」
海の男たちは次々と双子の味方につく。
「しかし、2人に万が一のことがあったら……」
父親は渋い表情を浮かべるも、
「大丈夫たい。俺たちが保障する」
「それともなにかい。ワシらのいうことが信用できねぇってか!?」
ついには頭を垂れることになった。
* * *
双子の出陣が決まると、妹の瑠璃乃は俺と姉の紅瑠璃を漁業組合事務所の裏まで連れてきた。
プレハブ小屋の裏は日陰になっていて人気がなく、潮の匂いと魚の臭いが入り混じって夏の熱で茹でられたような、ジメジメとした空気をしていた。
「どうしたの、急に」
俺が言うが早いか、
瑠璃乃が、真正面から俺に抱きついてきた。
鼓動が大きくドクンといった。紅瑠璃は「なっ……」と声を上げたっきり、俺たちに釘付けになっている。
「ど、どうしたの、瑠璃乃ちゃん」
「ありがとう、センパイ……」
瑠璃乃は俺のワイシャツに顔を埋めながらつぶやいた。
「アタシ、怖かった……お父さんに叱られるだけじゃない……アタシたちだけで〝海の主〟を倒せるか不安だった」
腰に回した腕の締め付けが強くなる。モチモチした肌と柔らかい桃——今まで感じたことのない感触が体に密着して……、
彼女の震えを敏感に伝えていた。
「だから、センパイがアタシたちのことを『大丈夫』っていってくれて嬉しかった。……ありがとう」
そんなことないよ、といおうとしたときだった。
紅瑠璃が、俺の背後から抱きついてきた。
Wow!
妹よりは張りのある体で妹に負けじと締め付けてくる。
あまりの強さに腹が潰れるくらいの痛みが全身を駆け巡る。しかし、同時に女の子二人から——しかも美人双子姉妹から前後でサンドイッチされている状態に、脳は快楽物質を閉店セールよろしく分泌し続けた。
「あたしも、ありがとう……」
紅瑠璃がワイシャツに顔を埋めながらいう。
「あんたが来てくれなかったら、あたし達はあのまま暗い部屋に閉じ込められて、いつものように『はい』ということしかできない機械になるところだった。本当に……本当に、ありがとう」
その声は潤んでいた。
「別に、俺は依頼主の役割を果たしただけというか、二人が無事でよかったというか……」
このまま二人の手を握ろうとしたら、
「……そういえばセンパイ。アタシたちが泳いでるところ覗き見したんだよね」
瑠璃乃が口を開く。
「たまたま、ね」
「じゃあ、『アレ』も見たの?」
「アレ?」
「それで大事な娘が二人死んだら、お前はどう責任をとってくれるんだ、エェ?」
背筋がゾクリとした。
「生き残ったとしても俺みたいに片腕なくしたら、お前は面倒みれんのか? 俺はかつてヤツと戦ったことがある。だからこそ、こいつらにはまだ早えッつってんだ」
「でも、二人の泳ぎは……」
「まともに泳げねえ素人がよ。ぐちぐち口出ししてんじゃねぇよ。そんな生意気な口を叩くんなら、テメェから〝教育〟してやろうか!?」
やっぱ一発殴ったくらいじゃ現代の戸塚宏は目を覚さないか。だったら正面から殴り合って……
いや、待てよ。そんなことやって二人が喜ぶか。それに、俺はこれでも病人だ。万が一のことがあったら————
「星月さんよ、もう、いいんでねえか」
ふと、後ろから声が聞こえた。
振り返ると、島で有名な「偉そうなオーラを出してるおじいちゃん」がいた。かつてナメック星人の襲撃から島を守ったと噂されているが、俺は嘘だと睨んでいる。
「しかし、会長……彼女らはまだ……」
「二人の泳ぎは、二人がよぉく知っとる。娘を信じてやるのも、父親の役目だべ」
「そうだべ、ルリノちゃんクルリちゃん、二人ともよう泳げるべ」
「巣立ちの年頃よぉ」
周囲から続々と島の漁師たちが出てきた。少なくとも10人以上はいる。
「高校の先生方から話は聞いとる」
「雲川さんとこの息子さんがイカがないと死んじまいよるんって」
「ワシらも船から見守るたい。行かせてやってもえぇんじゃねぇか?」
海の男たちは次々と双子の味方につく。
「しかし、2人に万が一のことがあったら……」
父親は渋い表情を浮かべるも、
「大丈夫たい。俺たちが保障する」
「それともなにかい。ワシらのいうことが信用できねぇってか!?」
ついには頭を垂れることになった。
* * *
双子の出陣が決まると、妹の瑠璃乃は俺と姉の紅瑠璃を漁業組合事務所の裏まで連れてきた。
プレハブ小屋の裏は日陰になっていて人気がなく、潮の匂いと魚の臭いが入り混じって夏の熱で茹でられたような、ジメジメとした空気をしていた。
「どうしたの、急に」
俺が言うが早いか、
瑠璃乃が、真正面から俺に抱きついてきた。
鼓動が大きくドクンといった。紅瑠璃は「なっ……」と声を上げたっきり、俺たちに釘付けになっている。
「ど、どうしたの、瑠璃乃ちゃん」
「ありがとう、センパイ……」
瑠璃乃は俺のワイシャツに顔を埋めながらつぶやいた。
「アタシ、怖かった……お父さんに叱られるだけじゃない……アタシたちだけで〝海の主〟を倒せるか不安だった」
腰に回した腕の締め付けが強くなる。モチモチした肌と柔らかい桃——今まで感じたことのない感触が体に密着して……、
彼女の震えを敏感に伝えていた。
「だから、センパイがアタシたちのことを『大丈夫』っていってくれて嬉しかった。……ありがとう」
そんなことないよ、といおうとしたときだった。
紅瑠璃が、俺の背後から抱きついてきた。
Wow!
妹よりは張りのある体で妹に負けじと締め付けてくる。
あまりの強さに腹が潰れるくらいの痛みが全身を駆け巡る。しかし、同時に女の子二人から——しかも美人双子姉妹から前後でサンドイッチされている状態に、脳は快楽物質を閉店セールよろしく分泌し続けた。
「あたしも、ありがとう……」
紅瑠璃がワイシャツに顔を埋めながらいう。
「あんたが来てくれなかったら、あたし達はあのまま暗い部屋に閉じ込められて、いつものように『はい』ということしかできない機械になるところだった。本当に……本当に、ありがとう」
その声は潤んでいた。
「別に、俺は依頼主の役割を果たしただけというか、二人が無事でよかったというか……」
このまま二人の手を握ろうとしたら、
「……そういえばセンパイ。アタシたちが泳いでるところ覗き見したんだよね」
瑠璃乃が口を開く。
「たまたま、ね」
「じゃあ、『アレ』も見たの?」
「アレ?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。
とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。
ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。
お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!
※特別編3が完結しました!(2025.12.18)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる