平凡な村人だと思われていた俺、実は神々が恐れる最強存在でした〜追放されたけど、無自覚チートで気づけば世界の頂点〜

にゃ-さん

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第20話 無自覚な救世主

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風が止んだ。  
草原を照らしていた陽が翳り、空が赤に染まる。  
そこに現れたのは、かつての仲間――勇者カイル。  
その身体は神の光に包まれ、翼のような後光を背に宿していた。  

「レオン……久しいな」  
声は懐かしい。しかしそこにあったのは温もりではなく、冷たい鋼の響きだった。  
リリアが歯を食いしばる。  
「また神の操り人形になったのね、カイル!」  
だがカイルは微笑を浮かべるだけだった。  
「違う。俺は選ばれたのだ。真の“光”として。創世の加護など偽り――神の御心に背く呪いにすぎん」  

レオンは静かに一歩前へ出た。  
「カイル。俺はあの日、ただ人を守りたかっただけだ。あんたも同じだったろ?」  
「過去の話だ。人の救いなど無意味。神々は完璧な秩序を作る。俺はその器になる」  

その言葉と同時に、空から無数の光が降り注いだ。  
矢のように放たれる聖なる炎が、地を穿ち、大地を焦がす。  
リリアが跳んでその刃を弾き、フィオナの竜翼が光の盾を生み出す。  

「くそっ、容赦ないわね!」  
「主、あれは神界の“裁きの炎”。一発でも直撃すれば消滅します!」  

レオンが両手を広げる。  
風が逆巻き、草木が白く輝く。  
「……全部、無駄な破壊だ。こんな力で何が救えるんだよ!」  
彼の叫びに呼応するように、地面から緑の光が溢れた。  

世界樹の加護が再び発動する。  
焼けた大地が瞬く間に蘇り、黒煙が透明な風に変わった。  
まるで神の炎さえも受け入れ、抱きしめるかのように。  

「なっ……この力は……!」  
カイルが目を細める。  
「秩序を否定し、反逆の理を持つもの……その存在が世界の崩壊を招く!」  
「崩れるのは世界じゃない。力に縋る心だ!」  

二人の声が重なり、空気が裂けた。  
カイルが聖剣を構える。刃が天へと伸び、光が槍となって降る。  
同時に、レオンの手元に花のような魔法陣が咲いた。  

爆風。雷鳴。  
真っ白な閃光の中で、リリアが何かを叫んだが、音は届かない。  
世界は光と闇のぶつかり合う戦場と化していた。  

時間が止まったかのようだった。  
フィオナが圧力に耐え、息を詰める。  
「主……これ以上は危険です。世界が裂けます!」  
しかしレオンは首を振った。  
「大丈夫。誰も傷つけないから」  

その瞬間、彼の目が優しく光を帯びた。  
次の瞬間、カイルの放った神光すら吸い込まれて消えた。  
風が止み、近くの花の一枚一枚が透明な輝きを放ち始める。  

気づけば戦場の光景が変わっていた。  
そこにあったのは破壊でも勝利でもなく、静寂と生命。  
草原に立つ二人の周囲で、花が一面に咲き誇る。  

カイルが目を見開き、剣を握る手を震わせた。  
「……俺の力が……封じられた……?」  
「封じてなんかない。受け入れたんだ。神さえも、この世界の一部でしょ?」  
「貴様……何を言っている!」  
「世界を壊してでも支配しようとする神々を、俺は恨まない。でも、俺は選ぶ。人として、生きたい人たちを守る」  

風が吹き抜けた。  
それはまるで、古の神々の息吹のように柔らかく、温かかった。  

リリアが息を飲む。  
「……レオン、あんた、本気で神と共鳴してるの?」  
「わからない。でも、たぶん、神も迷ってるんだよ」  

カイルの瞳が揺らぐ。  
「神が……迷うだと?」  
「永遠であることは、終わりを失うことだ。悲しみも後悔も止まらない。だから、俺たち“人”が必要なんだ」  

二人の会話の間にも、草原全体が光を放って揺れていた。  
カイルはつぶやいた。  
「俺たちは……何を信じるべきだったんだ……」  
その声に、レオンは微笑んだ。  
「信じること自体を、恐れないこと。それだけで十分だよ」  

カイルが剣を下ろした瞬間、彼の身体を包んでいた神光が薄らいだ。  
力の制御を失い、膝をつく。  
その手をレオンが支えた。  

「カイル、あの頃のように、また笑おう。俺たちは同じものを見てたはずだ」  
「……レオン。俺は……どうすれば……」  
「生きて、確かめようよ。神がいなくても、光はあるって」  

沈黙。  
そして、カイルの頬を伝うものがあった。  
それは涙だった。  

だが、その穏やかな瞬間を、酷薄な声が切り裂いた。  

「人の感情に戻るとは、滑稽なものですね」  

上空に光の陣が再び現れた。  
エルメリアが、冷たい微笑を刻みながら降り立つ。  
「勇者カイルの役目は終わりました。では次に――創世の子、あなたの番です」  

リリアが剣を構え、フィオナが翼を広げる。  
だがレオンは二人を制した。  
「……下がって。話す」  
「今度こそ通じない相手だ!」リリアが怒鳴る。  
それでも彼は、柔らかく笑った。  

「それでも、俺は“信じる”んだ」  

その言葉に、エルメリアの瞳が一瞬揺らいだ。  
「あなたは、なぜそこまで……」  
「誰かの悲しみを見たら、放っておけない。それだけですよ」  

女神は沈黙する。  
一瞬、彼女の表情にほんのわずかな悲しみが浮かんだ。  

しかし、天の光は止まらない。  
「ならば確かめましょう。あなたの“優しさ”が、どこまで世界を救えるのかを」  

光が弾け、神々の軍勢が降下を始める。  
無数の翼が空を埋め、天地が震えるような音が響いた。  

リリアが叫ぶ。  
「っ、この数は……!」  
フィオナが鋭く声を上げる。  
「主、これは神界の総軍です!」  

レオンは静かに息を吸い、青空を見上げた。  
「……いいよ。全部、受け止める」  

彼の周囲から淡い緑の光が広がり、やがてそれは世界を覆うほどに膨れ上がった。  
その光には敵も味方もなく、ただ生命の温もりがあった。  

神の軍勢が降下する瞬間、風が止まり、時が封じられたような静寂が訪れる。  
レオンの声が響く。  

「争う世界を終わらせたい。ただ、それだけなんだ」  

そして――  
光が爆ぜ、天と地の境界が消えた。  

誰もが息を呑む中で、レオンは微笑を浮かべていた。  
無自覚のまま、“救世”の力を解き放ちながら。  

続く
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