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番外編 貴方と過ごせる時間だから
番外編 貴方と過ごせる時間だから
しおりを挟むそんな私の言葉に、柚瑠木さんは大きなため息をついて。どうすればいいのかとオロオロしているうちに、柚瑠木さんの運転する車は大きなホテルのエントランスへ。
すぐにドアサービスのホテルマンが近寄り、柚瑠木さんは車の鍵を渡します。
運転席を降りた彼は助手席のドアを開けて私を抱き上げたかと思うと、そのままホテルの中へと歩き出してしまいます。
「ゆ、柚瑠木さん! 私、ちゃんと歩けますからっ」
「この方が都合が良いんです、ちょっとだけこのまま大人しくしていてください」
そう言った柚瑠木さんは、フロントのスタッフの女性に……
「予約していた二階堂です。この通り妻の体調がすぐれないようなので、予定より早くチェックインしたいのですが」
……柚瑠木さん、今の私は健康そのものですよ? とはさすがに口に出してはいけなさそうなので黙っている事にします。
「もちろんです。二階堂様のお部屋の準備は出来ていますので、ゆっくり過ごされてください」
フロントスタッフに渡されたカードキーを持って、私を抱き上げたままエレベーターへと乗り込む柚瑠木さん。結局エレベーターを降りて部屋に来ても彼は私を降ろしてはくれませんでした。
柚瑠木さんは器用に私を抱いたまま、カードキーで部屋の鍵を開けます。そのままドアを開くと思ってたのに、柚瑠木さんはクスッと微笑んで……
「月菜さんが部屋のドアをあけて?」
柚瑠木さんは自分が手が塞がってるからと、私に部屋の扉を開けさせました。今さっき器用にカードキーを使っていたのに、こんな風に私が恥ずかしがるの楽しむなんて狡いです。
ドアを開けると柚瑠木さんは私を抱いたまま、部屋の中をゆっくり見る暇もなく奥のベッドへ。そのまま柔らかなベッドの上へ降ろされると、バッグを奪われ履いていたサンダルも脱がされて……
驚いて柚瑠木さんを見上げると、そのまま優しいキスを何度も浴びせられてしまいました。いつの間にか私の服に手をかけていた柚瑠木さんに、私は慌てて待ったをかけます。
「柚瑠木さん、シャワー! せめてシャワーを」
さすがの私でも今の柚瑠木さんを見れば、彼が私を望んでくれていることくらい分かります。ですが今日は動植物園でたくさん歩き、動物とだって触れ合ったりもしたんです。
それに……今日は私の誕生日だから、ちゃんと綺麗な自分を見て欲しい。
「でも我慢出来そうにない。月菜さん、一緒に入ってくれませんか?」
「い、一緒に?」
柚瑠木さんは本当に切羽詰まったような、熱のこもった目で私を見てくるんです。こんなにも真っ直ぐに求められては嫌とは言えるわけも無くて……
「お願い、月菜さん」
「うう、やっぱり柚瑠木さんは狡いです……」
結局……柚瑠木さんのおねだりを断ることは出来ず、また彼に抱きかかえられてバスルームへと運ばれることになったのでした。
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