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攫って結婚式って本気ですか
第四話
しおりを挟む少しだけ期待してしてしまったのかもしれない、そんな琴の想像とは違い加瀬の唇が触れたの彼女の柔らかな頬だった。
それでも加瀬の唇から伝わる彼の温度に胸のドキドキは大きくなるばかりで……一瞬で終わるキスのはずが琴にはずいぶん長く感じられた。
誓いのキスが終わり、加瀬が離れていくことを少しだけ残念に感じるのは何故なのか。そんなふわふわとした頭のまま、琴は牧師の宣言をぼんやりと聞いていた。
その後は讃美歌を聞き、二人はバージンロードを歩いて退場する。本当に夢でも見ているのかと思うほど、琴にとっては非現実な時間だった。
急な挙式だったため、披露宴はまたきちんと日を改めて行うつもりだと加瀬は話す。それなら自分の父も呼べるかもしれないと、琴は心から喜んだ。
「加瀬さん、ありがとうございます。本当に夢みたいな結婚式でした」
「そうか? 誓いのキスが頬で不満そうにも見えたがな」
そんな風に揶揄われて思わず加瀬の腕を叩いてみたが、あっさりと手首を掴まれ引き寄せられる。
「な、なんですか? 私は嘘なんてついてないですよ、本当に不満なんて……!?」
そう言いかけた琴の言葉は加瀬の唇によって塞がれる。彼からキスされているのだと琴が気付くまでに数秒は要しただろう。
先ほどの誓いのキスは頬だったのに、今度は間違いなくお互いの唇が触れていた。
ここの空気が乾燥しているのだろうか、加瀬の唇は琴が想像していたのより少しかさついているような気がした。
琴は自然と瞳を閉じて加瀬のキスを受け入れる、こうして彼が触れても嫌な気はしないから。
「嘘つきだな、やっぱり不満だったんじゃないか」
抵抗しなかった琴を見て加瀬は意地悪く微笑んでそう言ってくる。そんな彼の靴の踵をつま先で蹴ってみせるが、図星かと言われますます揶揄われてしまった。
着替えを済ませタクシーに乗せられると、温かい飲み物を渡された。そのまま加瀬に引き寄せられて彼の身体に寄り添うような体勢を取らされる。
「あの……?」
「俺の家まで距離がある、このまま少し休んでいろ」
そんなに眠くないと言うつもりだったが、飲み物を飲み終えると自然と睡魔に襲われそのまま琴は加瀬の肩を借りて眠りについた。
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