9 / 18
9.
しおりを挟む
「昨日のパーティーでトライセラ殿下が口にしていた通り、王太子教育を受けながらも極端に仕事に追い詰められたことが判明しました。以前の王太子が残していた仕事と通常の王太子の仕事に加え、視察中の国王陛下の仕事も少し回されていたことも発覚しました」
「マグーマ様のやり残した仕事に国王陛下の仕事も?」
「ろくな家族がいなかったわけか……」
「家族といえば十歳になったばかりの第三王子トップス・ツインローズ殿下も兄であるトライセラ殿下に甘えたくて部屋から抜け出して遊んでもらっていたということも判明しております。幼い少年なので身内にまだ甘えたかったのでしょうが、トライセラ殿下は兄として可能な限り接していたようです。自分の寝る間を削ることで……」
「……弟思いということですね」
「それは責められんことで……」
「学園でも王太子になったトライセラ殿下にあやかろうという貴族の令嬢令息たちも数多く、彼らを振り切るのも一苦労であり、生徒会長としての職務もこなしておりますゆえ、学園で身の休まる場所は無いも同然……」
「婚約者になった私ともお話する機会もありませんでしたね。学園でも王宮の仕事をなさっていたようでしたし」
「お嬢様にまで学園で仕事をさせるようであればと思っておりましたが、流石に婚約者に負担をかけることはしなかっただけ元王太子よりはマシでしたね」
「…………」
コーク・ローチはジェシカのことを本気で恨めしく思った。ジェシカの存在こそがトライセラがリリィに頼らなかった原因でもあるのだから。
(狂信的に忠誠心の高いこの女さえいなければ……トライセラ殿下だって……リリィ嬢に頼ったのに!)
「さきも言いましたようにトライセラ殿下は寝る間も削って職務を全うなされようとしていたため、推測される睡眠時間は一日で約三~四時間とのことです」
「そんな!? 三~四時間!? それは十分に安めないではありませんか!」
「お嬢様、男性ならそれくらい我慢できるでしょう。そもそも騎士である私も睡眠時間などそれくらいですよ?」
「じぇ、ジェシカ!? こんな時に冗談は言うものではないわよ?」
「いえ、厳しき鍛えられた騎士である私ならばお安い御用ですよ。眼の前にいる並の騎士ではわかりませんが」
「…………!」
コーク・ローチはジェシカのことを心底憎々しく思った。心の中で『化け物』と吐き捨てる思いだった。
(くそ、化け物め!)
「トライセラ殿下の過剰労働に気づいた多くの文官たちは、コアトル殿を筆頭に可能な限り殿下の抱える仕事を担わなければと躍起になっています。ただ、国王夫妻方が側近の家臣とともに隣国に視察に……」
「ああ、旅行中でしたね」
「役に立つ家臣を引き連れて温泉とは脳天気な国王夫妻だな」
「…………」
「マグーマ様のやり残した仕事に国王陛下の仕事も?」
「ろくな家族がいなかったわけか……」
「家族といえば十歳になったばかりの第三王子トップス・ツインローズ殿下も兄であるトライセラ殿下に甘えたくて部屋から抜け出して遊んでもらっていたということも判明しております。幼い少年なので身内にまだ甘えたかったのでしょうが、トライセラ殿下は兄として可能な限り接していたようです。自分の寝る間を削ることで……」
「……弟思いということですね」
「それは責められんことで……」
「学園でも王太子になったトライセラ殿下にあやかろうという貴族の令嬢令息たちも数多く、彼らを振り切るのも一苦労であり、生徒会長としての職務もこなしておりますゆえ、学園で身の休まる場所は無いも同然……」
「婚約者になった私ともお話する機会もありませんでしたね。学園でも王宮の仕事をなさっていたようでしたし」
「お嬢様にまで学園で仕事をさせるようであればと思っておりましたが、流石に婚約者に負担をかけることはしなかっただけ元王太子よりはマシでしたね」
「…………」
コーク・ローチはジェシカのことを本気で恨めしく思った。ジェシカの存在こそがトライセラがリリィに頼らなかった原因でもあるのだから。
(狂信的に忠誠心の高いこの女さえいなければ……トライセラ殿下だって……リリィ嬢に頼ったのに!)
「さきも言いましたようにトライセラ殿下は寝る間も削って職務を全うなされようとしていたため、推測される睡眠時間は一日で約三~四時間とのことです」
「そんな!? 三~四時間!? それは十分に安めないではありませんか!」
「お嬢様、男性ならそれくらい我慢できるでしょう。そもそも騎士である私も睡眠時間などそれくらいですよ?」
「じぇ、ジェシカ!? こんな時に冗談は言うものではないわよ?」
「いえ、厳しき鍛えられた騎士である私ならばお安い御用ですよ。眼の前にいる並の騎士ではわかりませんが」
「…………!」
コーク・ローチはジェシカのことを心底憎々しく思った。心の中で『化け物』と吐き捨てる思いだった。
(くそ、化け物め!)
「トライセラ殿下の過剰労働に気づいた多くの文官たちは、コアトル殿を筆頭に可能な限り殿下の抱える仕事を担わなければと躍起になっています。ただ、国王夫妻方が側近の家臣とともに隣国に視察に……」
「ああ、旅行中でしたね」
「役に立つ家臣を引き連れて温泉とは脳天気な国王夫妻だな」
「…………」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
54
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる