17 / 149
17.反論?
しおりを挟む
「何馬鹿なこと言ってんのよ! こんなに美しい私がふさわしくないですって!? あの女は地味で平凡な顔でしょう、そんな女よりも私のほうが断然いいじゃない! それが分からないというの!?」
自分は美しいと主張するワカナ。学園でその美しさで周りからちやほやされていたようだが、カーズにはそんなものは通用しない。王太子という立場のおかげで、美しい令嬢や婦人と接する機会が多い彼にとっては、こんな茶番に慣れているのだ。ただ、目の前にあるのはカーズの人生の中で一番ひどい茶番かもしれない。
「美しければ誰からも求められるなどと思わないことだ。少なくとも、私はそんな人間ではない。お前は確かに美しい外見をしているがそれだけだろう?」
「なっ!? それだけ!? それが何よ!」
「…………(ダメに決まってるだろ)」
ワカナとカーズの口論を聞いているベーリュだったが、もはや止める気にもならなかった。ワカナが強引な手で絡んで爆弾発言を口にした時点で諦めてしまったのだ。むしろ、ワカナが王太子のカーズに叩きのめされたほうがいいかもしれないとすら考えた。ワカナを少しでも矯正できるかもしれない。期待は薄いが。
「そもそも、見かけだけではどうにもならないほど性格が腐り果てている。中身は醜いと言っていいではないか。思い上がるな!」
「み、醜いですって!? この私が!?」
「…………(よく言ってくださいました)」
ベーリュはうんうんと頷く。ワカナは父親の視点でも性格が壊滅的にひどすぎるのだ。それでもワカナは怯まない。
「なんてこと言うのよ! 女神のように美しいこの私の何が醜いって言うのよ!」
「女神のようにだと? 魔女の間違いだろ」
「ま、魔女ぉ~!?」
目を丸くして驚くワカナに、カーズは容赦なく攻め込む。
「他者に対する情も、貴族に必要な礼節も気品もお前にはない。サエナリアに比べるとな」
「な!? く、比べるって、あの女なんかと……」
カーズには確証があった。サエナリアとマリナの本当の関係を知っているため、サエナリアが情の深い令嬢であると信じられるのだ。目の前の愚か者にはないものだ。
「そもそも父親である公爵に対する態度と言い、実の姉をあの女呼ばわりと言い、肉親に対する情すらも薄いと見える。最悪だな」
「さ、最悪? この私が!?」
「そうだ。それが分からないところを見ると、随分と甘やかされて育ったようだな。私の妻になるというのならそんな生活は一切許されない。王家の者は皆国のために身を粉にして働くんだ。そんなことも分からないのか?」
「はあっ!? 身を粉に? 何よそれ、嫌よ、そんなの知らないわ!」
「…………(そんなことも知らないのか。ネフーミの馬鹿め)」
カーズの言う通り、王家の者に嫁ぐということは必然的に国の政に関わることを意味する。甘やかされたり贅沢できることは絶対にないことは、上級貴族なら分かりそうなものだ。これが下級貴族ならまだしも、仮にも公爵令嬢のワカナが知らないなどあってはならないことだ。ネフーミの偏った愛情がここでも響く。
自分は美しいと主張するワカナ。学園でその美しさで周りからちやほやされていたようだが、カーズにはそんなものは通用しない。王太子という立場のおかげで、美しい令嬢や婦人と接する機会が多い彼にとっては、こんな茶番に慣れているのだ。ただ、目の前にあるのはカーズの人生の中で一番ひどい茶番かもしれない。
「美しければ誰からも求められるなどと思わないことだ。少なくとも、私はそんな人間ではない。お前は確かに美しい外見をしているがそれだけだろう?」
「なっ!? それだけ!? それが何よ!」
「…………(ダメに決まってるだろ)」
ワカナとカーズの口論を聞いているベーリュだったが、もはや止める気にもならなかった。ワカナが強引な手で絡んで爆弾発言を口にした時点で諦めてしまったのだ。むしろ、ワカナが王太子のカーズに叩きのめされたほうがいいかもしれないとすら考えた。ワカナを少しでも矯正できるかもしれない。期待は薄いが。
「そもそも、見かけだけではどうにもならないほど性格が腐り果てている。中身は醜いと言っていいではないか。思い上がるな!」
「み、醜いですって!? この私が!?」
「…………(よく言ってくださいました)」
ベーリュはうんうんと頷く。ワカナは父親の視点でも性格が壊滅的にひどすぎるのだ。それでもワカナは怯まない。
「なんてこと言うのよ! 女神のように美しいこの私の何が醜いって言うのよ!」
「女神のようにだと? 魔女の間違いだろ」
「ま、魔女ぉ~!?」
目を丸くして驚くワカナに、カーズは容赦なく攻め込む。
「他者に対する情も、貴族に必要な礼節も気品もお前にはない。サエナリアに比べるとな」
「な!? く、比べるって、あの女なんかと……」
カーズには確証があった。サエナリアとマリナの本当の関係を知っているため、サエナリアが情の深い令嬢であると信じられるのだ。目の前の愚か者にはないものだ。
「そもそも父親である公爵に対する態度と言い、実の姉をあの女呼ばわりと言い、肉親に対する情すらも薄いと見える。最悪だな」
「さ、最悪? この私が!?」
「そうだ。それが分からないところを見ると、随分と甘やかされて育ったようだな。私の妻になるというのならそんな生活は一切許されない。王家の者は皆国のために身を粉にして働くんだ。そんなことも分からないのか?」
「はあっ!? 身を粉に? 何よそれ、嫌よ、そんなの知らないわ!」
「…………(そんなことも知らないのか。ネフーミの馬鹿め)」
カーズの言う通り、王家の者に嫁ぐということは必然的に国の政に関わることを意味する。甘やかされたり贅沢できることは絶対にないことは、上級貴族なら分かりそうなものだ。これが下級貴族ならまだしも、仮にも公爵令嬢のワカナが知らないなどあってはならないことだ。ネフーミの偏った愛情がここでも響く。
107
あなたにおすすめの小説
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜
みおな
恋愛
王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。
「お前との婚約を破棄する!!」
私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。
だって、私は何ひとつ困らない。
困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。
縁の鎖
T T
恋愛
姉と妹
切れる事のない鎖
縁と言うには悲しく残酷な、姉妹の物語
公爵家の敷地内に佇む小さな離れの屋敷で母と私は捨て置かれるように、公爵家の母屋には義妹と義母が優雅に暮らす。
正妻の母は寂しそうに毎夜、父の肖像画を見つめ
「私の罪は私まで。」
と私が眠りに着くと語りかける。
妾の義母も義妹も気にする事なく暮らしていたが、母の死で一変。
父は義母に心酔し、義母は義妹を溺愛し、義妹は私の婚約者を懸想している家に私の居場所など無い。
全てを奪われる。
宝石もドレスもお人形も婚約者も地位も母の命も、何もかも・・・。
全てをあげるから、私の心だけは奪わないで!!
勝手に勘違いして、婚約破棄したあなたが悪い
猿喰 森繁
恋愛
「アリシア。婚約破棄をしてほしい」
「婚約破棄…ですか」
「君と僕とでは、やはり身分が違いすぎるんだ」
「やっぱり上流階級の人間は、上流階級同士でくっつくべきだと思うの。あなたもそう思わない?」
「はぁ…」
なんと返したら良いのか。
私の家は、一代貴族と言われている。いわゆる平民からの成り上がりである。
そんなわけで、没落貴族の息子と政略結婚ならぬ政略婚約をしていたが、その相手から婚約破棄をされてしまった。
理由は、私の家が事業に失敗して、莫大な借金を抱えてしまったからというものだった。
もちろん、そんなのは誰かが飛ばした噂でしかない。
それを律儀に信じてしまったというわけだ。
金の切れ目が縁の切れ目って、本当なのね。
【完結】その溺愛は聞いてない! ~やり直しの二度目の人生は悪役令嬢なんてごめんです~
Rohdea
恋愛
私が最期に聞いた言葉、それは……「お前のような奴はまさに悪役令嬢だ!」でした。
第1王子、スチュアート殿下の婚約者として過ごしていた、
公爵令嬢のリーツェはある日、スチュアートから突然婚約破棄を告げられる。
その傍らには、最近スチュアートとの距離を縮めて彼と噂になっていた平民、ミリアンヌの姿が……
そして身に覚えのあるような無いような罪で投獄されたリーツェに待っていたのは、まさかの処刑処分で──
そうして死んだはずのリーツェが目を覚ますと1年前に時が戻っていた!
理由は分からないけれど、やり直せるというのなら……
同じ道を歩まず“悪役令嬢”と呼ばれる存在にならなければいい!
そう決意し、過去の記憶を頼りに以前とは違う行動を取ろうとするリーツェ。
だけど、何故か過去と違う行動をする人が他にもいて───
あれ?
知らないわよ、こんなの……聞いてない!
病弱を演じる妹に婚約者を奪われましたが、大嫌いだったので大助かりです
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
『病弱を演じて私から全てを奪う妹よ、全て奪った後で梯子を外してあげます』
メイトランド公爵家の長女キャメロンはずっと不当な扱いを受け続けていた。天性の悪女である妹のブリトニーが病弱を演じて、両親や周りの者を味方につけて、姉キャメロンが受けるはずのモノを全て奪っていた。それはメイトランド公爵家のなかだけでなく、社交界でも同じような状況だった。生まれて直ぐにキャメロンはオーガスト第一王子と婚約していたが、ブリトニーがオーガスト第一王子を誘惑してキャメロンとの婚約を破棄させようとしたいた。だがキャメロンはその機会を捉えて復讐を断行した。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる