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第46話 勝ち負け
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「アスーナが囮になるっていうのは危険だと私もハラド様も反対だったけど、どうしても自分にしかできないっていうから私も協力したのですよ、カリブラ様~? アスーナにここまでさせるなんて~……本当に最低な男」
「さ、最低……!」
「アスーナが囮になってでもカリブラを懲らしめたいと言い出した以上、俺も根負けして万全の準備を整えたわけだ。カリブラ、お前という害虫をぶっ潰すためにな」
「――っっ!!??」
バニアもハラドも冷たい目にカリブラを睨みながら言う。最低だの害虫だのと言われるが、もはやカリブラには怒る気力も失われていた。
「な、なんで……なんでそこまで手の込んだことを……お、お前たちは、そこまで僕を……?」
「なんで? それは貴方が最低で害虫で、醜くて見苦しくてくだらないからですよ。もう何度も苦言を呈してきましたが貴方は何も反省しないで人のせいにするばかり。そんな貴方の思い通りになるなんてまっぴら御免ですから」
「あ、アスーナ……」
カリブラは絶望した。アスーナの目がハラドやバニアのように冷たいものに変わったのだ。目に映るカリブラの全てを全否定するような冷徹な目に。
ようやくカリブラも悟った。アスーナが自分にはどうにもできないし頼れないことも。
「そ、そんな……僕は、アスーナになんかに……見放されるというのか……アスーナに、負けたというのか……?」
「そうですね。私の勝ちですね」
「…………」
カリブラは膝から崩れ落ちて、涙を流す。アスーナも初めて見るような惨めな姿をさらすカリブラだったが、そんな彼に同情するものはこの場にいない。憐れむなどもってのほか、自業自得だった。
「もういいだろう。近衛兵、カリブラ達を取り押さえろ」
ハラドの合図で、隠れて待機していた兵士たちが現れる。彼らは王家から派遣された近衛兵であり、ハラドのために王太子エーム・タースグバが派遣したのだ。そして、カリブラと取り巻きたちはあっという間に身柄を拘束されていく。
「カリブラ様、これから貴方はハラド様が呼んでくださった近衛兵の方々に連行されて詳しい話をしてもらいますが、一ついいですか?」
「……なんだよ、もうすきにしろよ……」
全てを諦めたカリブラはアスーナに問われても振り向きもしない。アスーナはそんなカリブラの態度も気にすることなく気になっていたことを問う。
「貴方はソルティアが怪我をしたのは事実だと言っていました。あの子に何があったのですか?」
「…………殴った」
「?」
「殴ったんだ……。そしたら泣き叫んで部屋に閉じこもったんだ……。そしたら、そのまま出なくなったから、静かになって、そのままにしてるんだ……」
「――っ!」
「母上も父上も、女性を殴るなんて最低だとか……でも、静かになったのなら――ぶっ!?」
カリブラは話の途中で殴られた。ただ、それはアスーナではない。アスーナが殴るのを制して、ハラドがカリブラを殴ったのだ。
「――は、ハラド様?」
「アスーナ、君がその手を汚す必要はないよ。そもそも、俺は君の手がこの男に触れるなんて嫌だからね」
「ハラド様……!」
「さ、最低……!」
「アスーナが囮になってでもカリブラを懲らしめたいと言い出した以上、俺も根負けして万全の準備を整えたわけだ。カリブラ、お前という害虫をぶっ潰すためにな」
「――っっ!!??」
バニアもハラドも冷たい目にカリブラを睨みながら言う。最低だの害虫だのと言われるが、もはやカリブラには怒る気力も失われていた。
「な、なんで……なんでそこまで手の込んだことを……お、お前たちは、そこまで僕を……?」
「なんで? それは貴方が最低で害虫で、醜くて見苦しくてくだらないからですよ。もう何度も苦言を呈してきましたが貴方は何も反省しないで人のせいにするばかり。そんな貴方の思い通りになるなんてまっぴら御免ですから」
「あ、アスーナ……」
カリブラは絶望した。アスーナの目がハラドやバニアのように冷たいものに変わったのだ。目に映るカリブラの全てを全否定するような冷徹な目に。
ようやくカリブラも悟った。アスーナが自分にはどうにもできないし頼れないことも。
「そ、そんな……僕は、アスーナになんかに……見放されるというのか……アスーナに、負けたというのか……?」
「そうですね。私の勝ちですね」
「…………」
カリブラは膝から崩れ落ちて、涙を流す。アスーナも初めて見るような惨めな姿をさらすカリブラだったが、そんな彼に同情するものはこの場にいない。憐れむなどもってのほか、自業自得だった。
「もういいだろう。近衛兵、カリブラ達を取り押さえろ」
ハラドの合図で、隠れて待機していた兵士たちが現れる。彼らは王家から派遣された近衛兵であり、ハラドのために王太子エーム・タースグバが派遣したのだ。そして、カリブラと取り巻きたちはあっという間に身柄を拘束されていく。
「カリブラ様、これから貴方はハラド様が呼んでくださった近衛兵の方々に連行されて詳しい話をしてもらいますが、一ついいですか?」
「……なんだよ、もうすきにしろよ……」
全てを諦めたカリブラはアスーナに問われても振り向きもしない。アスーナはそんなカリブラの態度も気にすることなく気になっていたことを問う。
「貴方はソルティアが怪我をしたのは事実だと言っていました。あの子に何があったのですか?」
「…………殴った」
「?」
「殴ったんだ……。そしたら泣き叫んで部屋に閉じこもったんだ……。そしたら、そのまま出なくなったから、静かになって、そのままにしてるんだ……」
「――っ!」
「母上も父上も、女性を殴るなんて最低だとか……でも、静かになったのなら――ぶっ!?」
カリブラは話の途中で殴られた。ただ、それはアスーナではない。アスーナが殴るのを制して、ハラドがカリブラを殴ったのだ。
「――は、ハラド様?」
「アスーナ、君がその手を汚す必要はないよ。そもそも、俺は君の手がこの男に触れるなんて嫌だからね」
「ハラド様……!」
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