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第28話 笑う者、笑い者
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カリブラが教室から出ていったあと、野次馬となった生徒はアスーナに同情したりバニアを称賛した。当の本人たちは互いに笑い合っている。
「あはは! あー面白かったー」
「もう、バニアったら怒らせすぎよ? 相手は侯爵令息なのよ」
「でも、事実を言ったまでだし自業自得じゃない」
確かに事実だ。ただ、バニアは意図的にカリブラを怒らせるように煽るような言い方をしている。アスーナはそこが気になったのだ。
「怒らせすぎて強引なことをするかもしれないわよ。私には『陰』がいるから大丈夫だけど……」
「それなら私も対策はしてるから大丈夫。これでも名門の伯爵家なのよ?」
「向こうも結構な名門だし、それにカリブラ様は無駄にプライドが高いから……」
「――それでも、あれくらいはしてやらないと私の気がすまないのよ。ドッキリで婚約破棄するなんて、いくらなんでも女を舐めすぎてるし」
バニアは真剣な顔に変わる。バニアの思惑としては、カリブラを煽ったのも怒りからくるものであったのだ。親友であるアスーナを軽んじて悪質なドッキリを仕掛けたことに、バニアは同じ女として激しい憤りを感じていた。だからこそ、人がいる前で嘲笑の的になるように誘導したわけだ。
そんなバニアの思惑にアスーナは気づかないはずがない。
(ハラド様に今日のことは伝えなきゃいけないわ。カリブラ様の性格を考えるとバニアに仕返しとか考えそう……ハラド様もお仕事はお忙しいみたいだけど)
ハラドはグラファイト公爵家の嫡男として重要な仕事を受け持っている。その関係で学園に来れない日も多い。今日のように。
「バニア、貴女が私のことで怒ってくれるのは嬉しいわ。でもそのせいで貴女がカリブラ様に害されるようなことになれば私は……」
「アスーナったら心配性ね。わかった、これからは程々にするわ。でも向こうから来たら言ってやるけどね」
「もう、バニアったら……」
アスーナとバニアは互いにほほえみ合う。二人の仲の良さをクラスメイトも微笑ましく眺める者も少なくない。教室の窓からもカリブラの怒号を聞いて何事かと覗いていた者まで。
そういう意味では、カリブラが教室を去ったのは良かったのかもしれない。アスーナが危惧していた通りろくでもないことを企み始めたのだから。
◇
「くそっ! なんでこの僕が笑い者にならなければならないんだ! 笑いものになるべきは婚約破棄したアスーナの方であるべきなのに!」
カリブラは納得できないでいた。アスーナが婚約破棄してきたこと。そんなアスーナとハラドが婚約したこと。ソルティアが家に迷惑をかけることが自分の責任になること。今日、笑いものになったことも。
その全てを理不尽だと思った。これまでアスーナや周りにしてきたことを棚に上げて。
「アスーナめ、この僕の要求を断るなんて生意気すぎる。ソルティアの教育を間違えていたくせに責任を投げ出すなんて許せない。何としてでもソルティアをあいつに戻してやる。そしてあの女……!」
カリブラは笑い者にされた屈辱を晴らしたくて堪らなかった。
「あはは! あー面白かったー」
「もう、バニアったら怒らせすぎよ? 相手は侯爵令息なのよ」
「でも、事実を言ったまでだし自業自得じゃない」
確かに事実だ。ただ、バニアは意図的にカリブラを怒らせるように煽るような言い方をしている。アスーナはそこが気になったのだ。
「怒らせすぎて強引なことをするかもしれないわよ。私には『陰』がいるから大丈夫だけど……」
「それなら私も対策はしてるから大丈夫。これでも名門の伯爵家なのよ?」
「向こうも結構な名門だし、それにカリブラ様は無駄にプライドが高いから……」
「――それでも、あれくらいはしてやらないと私の気がすまないのよ。ドッキリで婚約破棄するなんて、いくらなんでも女を舐めすぎてるし」
バニアは真剣な顔に変わる。バニアの思惑としては、カリブラを煽ったのも怒りからくるものであったのだ。親友であるアスーナを軽んじて悪質なドッキリを仕掛けたことに、バニアは同じ女として激しい憤りを感じていた。だからこそ、人がいる前で嘲笑の的になるように誘導したわけだ。
そんなバニアの思惑にアスーナは気づかないはずがない。
(ハラド様に今日のことは伝えなきゃいけないわ。カリブラ様の性格を考えるとバニアに仕返しとか考えそう……ハラド様もお仕事はお忙しいみたいだけど)
ハラドはグラファイト公爵家の嫡男として重要な仕事を受け持っている。その関係で学園に来れない日も多い。今日のように。
「バニア、貴女が私のことで怒ってくれるのは嬉しいわ。でもそのせいで貴女がカリブラ様に害されるようなことになれば私は……」
「アスーナったら心配性ね。わかった、これからは程々にするわ。でも向こうから来たら言ってやるけどね」
「もう、バニアったら……」
アスーナとバニアは互いにほほえみ合う。二人の仲の良さをクラスメイトも微笑ましく眺める者も少なくない。教室の窓からもカリブラの怒号を聞いて何事かと覗いていた者まで。
そういう意味では、カリブラが教室を去ったのは良かったのかもしれない。アスーナが危惧していた通りろくでもないことを企み始めたのだから。
◇
「くそっ! なんでこの僕が笑い者にならなければならないんだ! 笑いものになるべきは婚約破棄したアスーナの方であるべきなのに!」
カリブラは納得できないでいた。アスーナが婚約破棄してきたこと。そんなアスーナとハラドが婚約したこと。ソルティアが家に迷惑をかけることが自分の責任になること。今日、笑いものになったことも。
その全てを理不尽だと思った。これまでアスーナや周りにしてきたことを棚に上げて。
「アスーナめ、この僕の要求を断るなんて生意気すぎる。ソルティアの教育を間違えていたくせに責任を投げ出すなんて許せない。何としてでもソルティアをあいつに戻してやる。そしてあの女……!」
カリブラは笑い者にされた屈辱を晴らしたくて堪らなかった。
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