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第2章 新天地編
第42話 ミミック戦
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神樹の下に巨獣に追われている人が現れたということで、俺は聖騎士団を操作して現場に向かわせていた。ただそのままだと時間が掛かるので“ストック”を使う。
今召喚できる五百体の鎧兵のうち四百体は神樹の周囲の森に隠している。それがストック。
目撃情報のあった神樹の森の北西側に着いた。木々の薙ぎ倒される音が響き、鳥の飛び立つ声が聞こえる。
近いな。俺が警戒心を強めた次の瞬間、巨獣の輪郭があらわになった。
視界を覆い尽くす移動要塞のような巨大な塊。石、泥、木などを固めた殻を背負い、無数の足と一対のハサミを持っている。簡単に言えば巨大なヤドカリだった。
手元の薄っぺらい巨獣資料“ニートン巨獣記”の名前欄には“ミミック”と書かれている。
ミミックの手前には馬に乗った十数人の追われている人間。全員、蜂のマークの外套を着ている。
まずは人間を助けないとな。鎧馬に乗せた団長ゼロを人間に並走させる。
「言葉が分かるか!? 助けにきた! 着いてこい!」
先頭にいるフードを被った痩せぎすの男が大きく頷いた。
人間を先導している間に別働隊を横から突撃させる。
「こっちだミミクソ野郎!」
そのままミミックを簡単に撃破——という事は残念ながらなく、鎧兵達は敵の腕の一振りで繊細なガラス細工のように砕け散っていく。ライオンにネズミをけしかけるようなもので全く歯が立たない。
しかしそれでもちょっかいを掛け続ければ無視できないもので、ミミックは焦げたマッチ棒みたいな目を別働隊に向けたかと思うと進路を急速に変更した。
よしよし、こっちに注意を向けられたな。
別働隊を一度、森の中に退避させる。するとこちらの狙い通り追いかけてきた。この間に人間は神樹の上へ避難できるだろう。あとはミミクソ野郎を殺すだけ。
さてと、とりあえずセオリー通りにやりますか。
今日は大盤振る舞い、ウォーター、ライト、ポイズンなどの女子チームを使う。たまたま近くにいたからだけどな。
ぐへへ、ミミックくん、女子と遊べて嬉しいだろ? オスかメスかしらねぇけど。
何体かの鎧兵を犠牲にしながら女子チームをミミックの口元へ移動させた。
こちらを視認した敵が鎧達をハサミで掴んで食べ始める——かと思いきや、焼き肉でも切るようにハサミでジョッキンジョッキン真っ二つにされた。
「あわわ、ぎゃあああ!」
「あらあら、ぎゃあああ!」
「おだまり、ぎゃあああ!」
女子チームが設定した断末魔の叫びを上げながら散っていく。おい、クソミミックふざけんなよ。好き嫌いせずにきちんと食べなさい! お母さん許しませんよ!
冗談は置いといて、そっちのパターンで来たか。巨獣が人間を見た時に取る行動は主に二つ。捕獲して食べるか、殺すだけで満足するかだ。前者なら俺の勝ち確定戦術である体内に潜入して内臓を破壊する“自己犠牲アタック”で倒せるのだが、後者なら柔軟に戦術を考えないといけないので面倒だ。
ミミックはどうやら後者の快楽殺人鬼タイプ。面倒だが他の戦術を考える。と言っても既に思い付いているけどね。ここまで伊達に何十頭も巨獣を倒していないからな。
俺は策を実行すべく、まずは囮の部隊をミミック正面にけしかけた。その隙に背後から別部隊をそっと近付ける。
敵はデカい殻を背負っているので背後は死角だと考えた。思った通り、割と簡単に飛び乗ることに成功した。
数体の鎧兵が頂上付近まで登り、一気に坂を駆け降りる。
「ヒャッハー!」
兵達は恐怖心がないので、何の臆面もなくほぼ垂直の殻を降りていく。ただし、やっぱりポンコツなので、足がもつれて何体か転倒してバラバラになった。
「こんなところで死にたくないハチ!」
「そんなのアリ?」
「死んだセミ」
「……死亡確定クモ」
「やられたテン!」
ったく、どいつもこいつもクソみてぇな語尾だな。誰だよ設定考えた奴。俺です。
さーて、そろそろ目を潰して口の中に入って終わりにしますか。しかし、攻撃の瞬間、兵がハサミで両断された。
「おいおい、嘘だろ?」
ハサミは四つあったのだ。持ち過ぎだろ。お前はカリスマ美容師かよ。
つーかニートン巨獣記にはハサミ四つあるなんて書いてないぞ。使えねぇ。途中までしか載ってないクソ攻略本かよ。
敵は器用にハサミを駆使して鎧兵達を排除していく。減っていく鎧達。反して俺のマイホームに鎧が増えていく。
「クソッ! もうダメだぁぁ! ……なーんてね」
次の瞬間、轟音と共にミミックの体が大きく傾き、落とし穴に落下した。
こういう時のために神樹の周りに対巨獣用の罠を仕掛けておいたのだ。鎧兵が増えたことで労働力も増加してこういう事前対策もしやすくなった。
「さーて、よくも俺の鎧兵達をチョキチョキしてくれたな」
仕返しにグーグーしてやるぜ。何言ってんだ俺。
ミミックはハサミと足をシャカシャカさせて必死に脱出を試みているが上手くいっていない。
俺の庭に入り込んだのが運の尽きだったな。それじゃあ、終わりにしようか。
「聖騎士団アイン突撃!!」
「うおおお!」
可動域の狭くなったハサミを上手くかわしながら口元へと距離を詰める。そして遂に鎧兵の一体が口から体内へと侵入した。
侵入した兵は、やっぱりNo.99ポテトさんだった。いつでも美味しいところを持っていく。それがポテトさんだ。こういうのは団長ゼロさんにやって貰いたいんだけどなぁ。ま、同一人物だしいっか。
ちなみにゼロさんは、三体ほどミミックに突撃させたが、折れたシャーペンの芯のようにバッキバキにされた。今は再召喚され、俺本体の横で三体並んでボケーっと突っ立っている。もっと頑張れよ。
そうこうしていると、内臓をズタズタにされたミミックは泡を吹いて動かなくなった。
今召喚できる五百体の鎧兵のうち四百体は神樹の周囲の森に隠している。それがストック。
目撃情報のあった神樹の森の北西側に着いた。木々の薙ぎ倒される音が響き、鳥の飛び立つ声が聞こえる。
近いな。俺が警戒心を強めた次の瞬間、巨獣の輪郭があらわになった。
視界を覆い尽くす移動要塞のような巨大な塊。石、泥、木などを固めた殻を背負い、無数の足と一対のハサミを持っている。簡単に言えば巨大なヤドカリだった。
手元の薄っぺらい巨獣資料“ニートン巨獣記”の名前欄には“ミミック”と書かれている。
ミミックの手前には馬に乗った十数人の追われている人間。全員、蜂のマークの外套を着ている。
まずは人間を助けないとな。鎧馬に乗せた団長ゼロを人間に並走させる。
「言葉が分かるか!? 助けにきた! 着いてこい!」
先頭にいるフードを被った痩せぎすの男が大きく頷いた。
人間を先導している間に別働隊を横から突撃させる。
「こっちだミミクソ野郎!」
そのままミミックを簡単に撃破——という事は残念ながらなく、鎧兵達は敵の腕の一振りで繊細なガラス細工のように砕け散っていく。ライオンにネズミをけしかけるようなもので全く歯が立たない。
しかしそれでもちょっかいを掛け続ければ無視できないもので、ミミックは焦げたマッチ棒みたいな目を別働隊に向けたかと思うと進路を急速に変更した。
よしよし、こっちに注意を向けられたな。
別働隊を一度、森の中に退避させる。するとこちらの狙い通り追いかけてきた。この間に人間は神樹の上へ避難できるだろう。あとはミミクソ野郎を殺すだけ。
さてと、とりあえずセオリー通りにやりますか。
今日は大盤振る舞い、ウォーター、ライト、ポイズンなどの女子チームを使う。たまたま近くにいたからだけどな。
ぐへへ、ミミックくん、女子と遊べて嬉しいだろ? オスかメスかしらねぇけど。
何体かの鎧兵を犠牲にしながら女子チームをミミックの口元へ移動させた。
こちらを視認した敵が鎧達をハサミで掴んで食べ始める——かと思いきや、焼き肉でも切るようにハサミでジョッキンジョッキン真っ二つにされた。
「あわわ、ぎゃあああ!」
「あらあら、ぎゃあああ!」
「おだまり、ぎゃあああ!」
女子チームが設定した断末魔の叫びを上げながら散っていく。おい、クソミミックふざけんなよ。好き嫌いせずにきちんと食べなさい! お母さん許しませんよ!
冗談は置いといて、そっちのパターンで来たか。巨獣が人間を見た時に取る行動は主に二つ。捕獲して食べるか、殺すだけで満足するかだ。前者なら俺の勝ち確定戦術である体内に潜入して内臓を破壊する“自己犠牲アタック”で倒せるのだが、後者なら柔軟に戦術を考えないといけないので面倒だ。
ミミックはどうやら後者の快楽殺人鬼タイプ。面倒だが他の戦術を考える。と言っても既に思い付いているけどね。ここまで伊達に何十頭も巨獣を倒していないからな。
俺は策を実行すべく、まずは囮の部隊をミミック正面にけしかけた。その隙に背後から別部隊をそっと近付ける。
敵はデカい殻を背負っているので背後は死角だと考えた。思った通り、割と簡単に飛び乗ることに成功した。
数体の鎧兵が頂上付近まで登り、一気に坂を駆け降りる。
「ヒャッハー!」
兵達は恐怖心がないので、何の臆面もなくほぼ垂直の殻を降りていく。ただし、やっぱりポンコツなので、足がもつれて何体か転倒してバラバラになった。
「こんなところで死にたくないハチ!」
「そんなのアリ?」
「死んだセミ」
「……死亡確定クモ」
「やられたテン!」
ったく、どいつもこいつもクソみてぇな語尾だな。誰だよ設定考えた奴。俺です。
さーて、そろそろ目を潰して口の中に入って終わりにしますか。しかし、攻撃の瞬間、兵がハサミで両断された。
「おいおい、嘘だろ?」
ハサミは四つあったのだ。持ち過ぎだろ。お前はカリスマ美容師かよ。
つーかニートン巨獣記にはハサミ四つあるなんて書いてないぞ。使えねぇ。途中までしか載ってないクソ攻略本かよ。
敵は器用にハサミを駆使して鎧兵達を排除していく。減っていく鎧達。反して俺のマイホームに鎧が増えていく。
「クソッ! もうダメだぁぁ! ……なーんてね」
次の瞬間、轟音と共にミミックの体が大きく傾き、落とし穴に落下した。
こういう時のために神樹の周りに対巨獣用の罠を仕掛けておいたのだ。鎧兵が増えたことで労働力も増加してこういう事前対策もしやすくなった。
「さーて、よくも俺の鎧兵達をチョキチョキしてくれたな」
仕返しにグーグーしてやるぜ。何言ってんだ俺。
ミミックはハサミと足をシャカシャカさせて必死に脱出を試みているが上手くいっていない。
俺の庭に入り込んだのが運の尽きだったな。それじゃあ、終わりにしようか。
「聖騎士団アイン突撃!!」
「うおおお!」
可動域の狭くなったハサミを上手くかわしながら口元へと距離を詰める。そして遂に鎧兵の一体が口から体内へと侵入した。
侵入した兵は、やっぱりNo.99ポテトさんだった。いつでも美味しいところを持っていく。それがポテトさんだ。こういうのは団長ゼロさんにやって貰いたいんだけどなぁ。ま、同一人物だしいっか。
ちなみにゼロさんは、三体ほどミミックに突撃させたが、折れたシャーペンの芯のようにバッキバキにされた。今は再召喚され、俺本体の横で三体並んでボケーっと突っ立っている。もっと頑張れよ。
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