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第2章 新天地編
第41話 兄さん?
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邪教と聖教のくだらないやり取りが終わった次の日。俺は王都郊外にあるマイホームのソファに身を埋めて、まったりしていた。
「トンカツー、生きてるー?」
近所に住む七歳の少女“ムギッコ”が門の前に来た。収穫前の麦の穂のような三つ編み金髪をしている。彼女は騎士団No.93豚鎧兵のトンカツがお気に入りのようで門番の時にいつも来るのだ。
「そりゃあ生きてるトン」
両手を腰にやり、胸を張る。トンカツは豚の兜で横に大きな鎧兵だ。名前の由来はみなさんご存知、俺の好きな食べ物トンカツ。久しぶりに食べたいなー。
「でもいつも死んだ顔して、頭を掻く、腰をトントンする、伸びをするのを繰り返してるのしか見ないよー?」
ぎくっ。目ざといな。鎧兵には人間味を持たせるためランダムで様々な仕草を行うようプログラミングしているのだ。ムギッコは割と油断している時に来るし本当要注意だな。
その時。道の先に人影。その人物が手に持っていた紙袋を落として、いくつかのオレンジの実が転がった。よく見ると、貧民街のボスで聖教ポテトの教祖でもある豚鼻中年のキャロブゥだった。こちらを見て鯉のように口をパクパクしている。何かに驚いているようだ。
「あ、あなたは……まさか、ニィさん!?」
誰が兄さんだよ。お互いブタっぽくて似てるけども。
「知らないトン。勘違いではないのかトン」
「似ている……その独特な訛り……!」
これ訛りなのか? ただのキャラ付けの語尾なんだが。ブヒだとありきたりだからトンにしたんだが。俺って天才だよな。
「はぁ、よく分からないトン」
「……いや、別人なのは分かっているんでさぁ。ニィさんは風の噂で、肘についたクリームを舐めようとして首がおかしな方向に曲がって死んだらしいんでさぁ」
笑っていいのか迷う死に方やめろ!
「よかったらニィさんって呼んでもいいですかい?」
「好きにしてくれトン」
「あっしのことはキャロっちと呼んでくだせぇ」
呼ばねぇよ! かわいこぶってんじゃねぇぞオッサン!
「弟が出来てよかったねトンカツ!」
楽しそうなムギッコ。よくねぇよ。せめて姉か妹がよかったわ。
「そういえば何か用事でもあったトン?」
「ああ、そうそう。うちの“オレンジャ”が嫌がらせしていないかと思ったんで様子を見に来たんでさぁ」
最近、何かと聖騎士団に突っかかってくる右眼に眼帯をした新キャラで、十代後半くらいの青年だ。貧民街に住んでいるらしい。
「無いことは無いトン。でもまぁカワイイもんトン」
「そいつぁ良かった。もしバカなことしていたらぶん殴っていいんで遠慮しないでくだせぇ」
「二人はどういう関係なんだトン?」
「近所に住む中年と悪ガキ、ただそれだけですぜ」
キャロブゥは、こちらから目を逸らし、少し遠い目をした。なんだか複雑な事情がありそうだな。
その時だった。馬に乗った衛兵らしき男が焦った様子でこちらに向かってきた。
「た、大変です! 神樹の下で人が巨獣に追われています! 早く来てください!」
え? 嘘だろ? 国外は巨獣が徘徊していて人の出入りはまずできない。となると、外から来たということになるが……マズイ、俺のアイデンティティがなくなっちゃう!
「トンカツー、生きてるー?」
近所に住む七歳の少女“ムギッコ”が門の前に来た。収穫前の麦の穂のような三つ編み金髪をしている。彼女は騎士団No.93豚鎧兵のトンカツがお気に入りのようで門番の時にいつも来るのだ。
「そりゃあ生きてるトン」
両手を腰にやり、胸を張る。トンカツは豚の兜で横に大きな鎧兵だ。名前の由来はみなさんご存知、俺の好きな食べ物トンカツ。久しぶりに食べたいなー。
「でもいつも死んだ顔して、頭を掻く、腰をトントンする、伸びをするのを繰り返してるのしか見ないよー?」
ぎくっ。目ざといな。鎧兵には人間味を持たせるためランダムで様々な仕草を行うようプログラミングしているのだ。ムギッコは割と油断している時に来るし本当要注意だな。
その時。道の先に人影。その人物が手に持っていた紙袋を落として、いくつかのオレンジの実が転がった。よく見ると、貧民街のボスで聖教ポテトの教祖でもある豚鼻中年のキャロブゥだった。こちらを見て鯉のように口をパクパクしている。何かに驚いているようだ。
「あ、あなたは……まさか、ニィさん!?」
誰が兄さんだよ。お互いブタっぽくて似てるけども。
「知らないトン。勘違いではないのかトン」
「似ている……その独特な訛り……!」
これ訛りなのか? ただのキャラ付けの語尾なんだが。ブヒだとありきたりだからトンにしたんだが。俺って天才だよな。
「はぁ、よく分からないトン」
「……いや、別人なのは分かっているんでさぁ。ニィさんは風の噂で、肘についたクリームを舐めようとして首がおかしな方向に曲がって死んだらしいんでさぁ」
笑っていいのか迷う死に方やめろ!
「よかったらニィさんって呼んでもいいですかい?」
「好きにしてくれトン」
「あっしのことはキャロっちと呼んでくだせぇ」
呼ばねぇよ! かわいこぶってんじゃねぇぞオッサン!
「弟が出来てよかったねトンカツ!」
楽しそうなムギッコ。よくねぇよ。せめて姉か妹がよかったわ。
「そういえば何か用事でもあったトン?」
「ああ、そうそう。うちの“オレンジャ”が嫌がらせしていないかと思ったんで様子を見に来たんでさぁ」
最近、何かと聖騎士団に突っかかってくる右眼に眼帯をした新キャラで、十代後半くらいの青年だ。貧民街に住んでいるらしい。
「無いことは無いトン。でもまぁカワイイもんトン」
「そいつぁ良かった。もしバカなことしていたらぶん殴っていいんで遠慮しないでくだせぇ」
「二人はどういう関係なんだトン?」
「近所に住む中年と悪ガキ、ただそれだけですぜ」
キャロブゥは、こちらから目を逸らし、少し遠い目をした。なんだか複雑な事情がありそうだな。
その時だった。馬に乗った衛兵らしき男が焦った様子でこちらに向かってきた。
「た、大変です! 神樹の下で人が巨獣に追われています! 早く来てください!」
え? 嘘だろ? 国外は巨獣が徘徊していて人の出入りはまずできない。となると、外から来たということになるが……マズイ、俺のアイデンティティがなくなっちゃう!
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