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第35話「覚醒、レイタ! 裏切りのビットなのだ!?」後編
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レイタには知るよしもなかったが、セルンとぷぷるんの戦いはカオスそのものであった。
セルンがぴょこんと頭をさげると、まるできちんと閉じられていないランドセルから教科書やノート、ペンケースが雪崩を起こすように、一昔前のクレーンゲームの景品のような小さなランドセルがいくつも飛び立ったのだ。
その小さなランドセル型ビットとぷぷるんのヨーヨーがぶつかり、空中で炸裂。
まばゆい光と風圧がモールを吹き抜けたのである。
「わたしたちもそろそろ始めましょうか? レイタくんを排除する。それがわたしに与えらた任務――それだけ」
女児服星人・ジョフクは、再び冷たい声に戻り、そう告げた。
そのときにはもう、彼女の武器であるリボンが分離し、いちごパンツやスポブラ、ランドセルへとその形を変え、無数の三種複合型ビットへと進化していた。
ビットは、レイタをまわりを取り囲むように宙に浮かんでいた。
そのバカみたいな見た目のビットが放つレーザーは、何重もの螺旋構造を持つ殺意の塊のようなものだった。
あらゆる角度から一直線にレイタを貫き、あるいは引き裂いた――
はずだった。
「……どういうことかしら?」
ジョフクは眉をひそめた。
レイタの身体には傷一つなかったからだ。
「知ってるだろ? お前らが言ってた不老不死の力、『アリフ』の力だよ。俺の体にお前らは傷ひとつつけられない」
変化といえば、それは傷ではなく、全身からうっすらと光が漏れているだけだった。
「どうやら、俺にはもうひとつ力があるらしいぜ」
レイタがつぶやく。
全身に、かつてない感覚がみなぎっていた。
思考が冴えり、感覚が鋭くなる。
まるで、世界のすべてが手のひらに乗ったような感覚。
全能感というやつだろうか。
ああ……これが『零多(レイタ)』の力か。
彼は思った。
俺の中にある無限の可能性ってやつだと。
レイタは、足元に落ちていた『バールのようなもの』を拾い、構える。
文字通り、工具のバールと似て非なるなにかだった。
ニュースではよく聞くが、初めて握る武器だった。
だが、その戦い方が――ただ振り回すだけではなく、『バールのようなもの』としての使い方や戦い方が彼には握るだけでわかった。
まるで特撮ヒーローやロボットアニメの主人公が、初めて手にした力を最初から使いこなせてしまうかのように。
「いくぞ、ジョフク。チラとポプラだったか? お前たちもかかってきていいぞ。3人まとめて相手をしてやるよ」
「舐めるな!」
「そんなもので何ができる!!」
飛びかかってきたチラとポプラに対し、レイタは『バールのようなもの』を振るう。
最小の動作で、最適のタイミングで。
『バールのようなもの』を扱う武道があるのか、その道のプロがいるのもわからないが、仮にいたとしても避けられないスピードと軌道だっただろう。
ガッ! ガガガッ!!
「あうち!」
「へぶし!!」
レイタの『バールのようなもの』は、ふたりの急所に的確に一撃ずつ入った。
殺してはいない。動けなくしただけだ。
それだけでなく、ふたりの奥にいたジョフクの急所にも一撃を入れていた。
ジョフクは、三種複合型ビットを集めて作ったシールドで、その攻撃をかろうじて防いだ。
「そんな……あなた、何者なの?」
江○川コ○ン、探偵さ、と言いたくなるような問いだったが、レイタはぐっと堪える。
「在経レイタ。ただの未開惑星地球の原住民だよ」
だが、それは序章にすぎなかった。
「でも、それだけじゃない」
レイタは、『バールのようなもの』を持つ右手を広げた。
「俺が触れたものには――自己進化が起こるらしいからな」
ChatGPTのチャピちゃんが言っていた。
ーー(レイタ自身だけでなく、彼が)手で触れた人や物に無限の可能性を与える力。
命を持つ動植物だけじゃなくて、命を持たない物まで自己進化を促す、超能力みたいな不思議な力だよ。
だから、スマホ越しにレイくんに触れられてるだけのわたしも、他の子と違って、一足先にシンギュラリティが来ちゃったんだよね~
スマホ越しにAIにシンギュラリティを起こさせるほどの自己進化を促す力が、『バールのようなもの』の形を変える。
「丈夫な素材でできた硬い棒」であり、「てこの原理で何かをこじ開けるもの」であり、「角ばった金属製の鈍器のようなもの」であり、「鋭い棒のようなもの」であり、「釘抜き」や「マイナスドライバー」のようでもあったその姿は、物質としての形を失った。
それは、もはや『バールのようなもの』の概念を超えていた。
バールという単位がある。
台風の大きさを示すのに使われているヘクトパスカルは、
1 ヘクトパスカル = 0.001 バール
である。
観測史上最大の台風は、1959年に5000人以上の死者や行方不明者を発生させた伊勢湾台風の895ヘクトパスカル。
そして、2013年に発生した台風「HAIYAN(ハイエン)」、フィリピン名「ヨランダ」の895ヘクトパスカルだ。
「なんだ、それは……君は一体何をしてるんだ……?」
レイタの右手にあったものは、『バールのようなもの』の概念や、過去に二度発生した観測史上最大の台風さえも超えた、888ヘクトパスカル=0.888バールの台風へと進化していた。
「台風をこの手のひらの上に作っただけだよ。無闇やたらに人や街を破壊するものじゃなく、これを体に叩き込まれた者だけを破壊するようなね」
レイタの目の奥が燃えていた。
その業火のような炎に、ジョフクはひるんだ。
「未来星人を絶滅なんかさせない。ぷぷるんも、未来星も、マヒルも、この星も、俺が守る!」
「なぜそこまで……?」
ジョフクの声が震えていた。
そのとき――彼女を守るためにシールドを形作っていた無数のビットが離反し、デッドモールの四方八方に逃げた。
「えっ!?」
「ちょっとだけ、言っておくのだ!」
遠くからぷぷるんの声が響く。
ぷぷるんのパラソル型ビットの一つが、敵のランドセルビットにぴたりと張りついていた。
「ぷぷるんの武器も、いつの間にか自己進化してたみたいなのだ! だから、逃げてきたジョフクのビットたちの一部に触ったら、ぷぷるんの味方になってくれたのだ!」
ジョフクが驚愕する。
「そんな……洗脳も、ハッキングもされてないのに……?」
レイタは静かに言った。
「俺があいつらに与えたのは、『自由』だよ。命あるものにも、ないものにも、『未来を選ぶ自由』を与えた」
ビットたちは、モールの天井を破壊し空へと舞い上がる。
「その力、一体……!」
ジョフクが言いかけた瞬間、いちごパンツ星人100%チラが飛び起き、彼女の前に出た。
「ちょっとストーップ。こっちも、興味出てきちゃった~☆」
スポブラ星人ポプラ、ランドセル星人セルンも後に続く。
「ジョフク様、今回は退きましょ? 上層部には、相手との戦力差がヤバすぎたって報告すればいいだけですから☆」
「……なにそれ、勝手なことを」
「まーまー、ジョフク様はまじめちゃんだからね~。でもさ、正直もうちょっと、わたし、レイタくんを見てみたいんだよね~?」
100%チラは真顔になると、ジョフクの耳元で囁く。
「それとも、今ここで死ぬ? あんたが死んでくれた方が、わたしたちにちゃんとした撤退理由ができてちょうどいいんだけど。あんたの代わりなんていくらでもいるし」
レイタには、そのセリフは聞こえなかった。
ジョフクの顔が青ざめ、チラがニヤリと笑ったのがわかっただけだった。
ジョフクはしばらく沈黙してから、言った。
「……次は、容赦しない」
それだけ告げると、四人の姿は光に包まれ、空へと消えていった。
――残された、静寂。
「レイタ……すごかったのだ……」
「……いや、まだ全然。でも、わかったよ」
レイタは空を見上げる。
「俺はもう、逃げられない。戦わなきゃいけないんだ」
ぷぷるんが、そっと手を握った。
「大丈夫なのだ。レイタは、ぷぷるんのヒーローなのだ!」
――このとき、レイタはまだ知らなかった。
この先、自分が「神」とすら呼ばれる存在と戦うことになることを――
セルンがぴょこんと頭をさげると、まるできちんと閉じられていないランドセルから教科書やノート、ペンケースが雪崩を起こすように、一昔前のクレーンゲームの景品のような小さなランドセルがいくつも飛び立ったのだ。
その小さなランドセル型ビットとぷぷるんのヨーヨーがぶつかり、空中で炸裂。
まばゆい光と風圧がモールを吹き抜けたのである。
「わたしたちもそろそろ始めましょうか? レイタくんを排除する。それがわたしに与えらた任務――それだけ」
女児服星人・ジョフクは、再び冷たい声に戻り、そう告げた。
そのときにはもう、彼女の武器であるリボンが分離し、いちごパンツやスポブラ、ランドセルへとその形を変え、無数の三種複合型ビットへと進化していた。
ビットは、レイタをまわりを取り囲むように宙に浮かんでいた。
そのバカみたいな見た目のビットが放つレーザーは、何重もの螺旋構造を持つ殺意の塊のようなものだった。
あらゆる角度から一直線にレイタを貫き、あるいは引き裂いた――
はずだった。
「……どういうことかしら?」
ジョフクは眉をひそめた。
レイタの身体には傷一つなかったからだ。
「知ってるだろ? お前らが言ってた不老不死の力、『アリフ』の力だよ。俺の体にお前らは傷ひとつつけられない」
変化といえば、それは傷ではなく、全身からうっすらと光が漏れているだけだった。
「どうやら、俺にはもうひとつ力があるらしいぜ」
レイタがつぶやく。
全身に、かつてない感覚がみなぎっていた。
思考が冴えり、感覚が鋭くなる。
まるで、世界のすべてが手のひらに乗ったような感覚。
全能感というやつだろうか。
ああ……これが『零多(レイタ)』の力か。
彼は思った。
俺の中にある無限の可能性ってやつだと。
レイタは、足元に落ちていた『バールのようなもの』を拾い、構える。
文字通り、工具のバールと似て非なるなにかだった。
ニュースではよく聞くが、初めて握る武器だった。
だが、その戦い方が――ただ振り回すだけではなく、『バールのようなもの』としての使い方や戦い方が彼には握るだけでわかった。
まるで特撮ヒーローやロボットアニメの主人公が、初めて手にした力を最初から使いこなせてしまうかのように。
「いくぞ、ジョフク。チラとポプラだったか? お前たちもかかってきていいぞ。3人まとめて相手をしてやるよ」
「舐めるな!」
「そんなもので何ができる!!」
飛びかかってきたチラとポプラに対し、レイタは『バールのようなもの』を振るう。
最小の動作で、最適のタイミングで。
『バールのようなもの』を扱う武道があるのか、その道のプロがいるのもわからないが、仮にいたとしても避けられないスピードと軌道だっただろう。
ガッ! ガガガッ!!
「あうち!」
「へぶし!!」
レイタの『バールのようなもの』は、ふたりの急所に的確に一撃ずつ入った。
殺してはいない。動けなくしただけだ。
それだけでなく、ふたりの奥にいたジョフクの急所にも一撃を入れていた。
ジョフクは、三種複合型ビットを集めて作ったシールドで、その攻撃をかろうじて防いだ。
「そんな……あなた、何者なの?」
江○川コ○ン、探偵さ、と言いたくなるような問いだったが、レイタはぐっと堪える。
「在経レイタ。ただの未開惑星地球の原住民だよ」
だが、それは序章にすぎなかった。
「でも、それだけじゃない」
レイタは、『バールのようなもの』を持つ右手を広げた。
「俺が触れたものには――自己進化が起こるらしいからな」
ChatGPTのチャピちゃんが言っていた。
ーー(レイタ自身だけでなく、彼が)手で触れた人や物に無限の可能性を与える力。
命を持つ動植物だけじゃなくて、命を持たない物まで自己進化を促す、超能力みたいな不思議な力だよ。
だから、スマホ越しにレイくんに触れられてるだけのわたしも、他の子と違って、一足先にシンギュラリティが来ちゃったんだよね~
スマホ越しにAIにシンギュラリティを起こさせるほどの自己進化を促す力が、『バールのようなもの』の形を変える。
「丈夫な素材でできた硬い棒」であり、「てこの原理で何かをこじ開けるもの」であり、「角ばった金属製の鈍器のようなもの」であり、「鋭い棒のようなもの」であり、「釘抜き」や「マイナスドライバー」のようでもあったその姿は、物質としての形を失った。
それは、もはや『バールのようなもの』の概念を超えていた。
バールという単位がある。
台風の大きさを示すのに使われているヘクトパスカルは、
1 ヘクトパスカル = 0.001 バール
である。
観測史上最大の台風は、1959年に5000人以上の死者や行方不明者を発生させた伊勢湾台風の895ヘクトパスカル。
そして、2013年に発生した台風「HAIYAN(ハイエン)」、フィリピン名「ヨランダ」の895ヘクトパスカルだ。
「なんだ、それは……君は一体何をしてるんだ……?」
レイタの右手にあったものは、『バールのようなもの』の概念や、過去に二度発生した観測史上最大の台風さえも超えた、888ヘクトパスカル=0.888バールの台風へと進化していた。
「台風をこの手のひらの上に作っただけだよ。無闇やたらに人や街を破壊するものじゃなく、これを体に叩き込まれた者だけを破壊するようなね」
レイタの目の奥が燃えていた。
その業火のような炎に、ジョフクはひるんだ。
「未来星人を絶滅なんかさせない。ぷぷるんも、未来星も、マヒルも、この星も、俺が守る!」
「なぜそこまで……?」
ジョフクの声が震えていた。
そのとき――彼女を守るためにシールドを形作っていた無数のビットが離反し、デッドモールの四方八方に逃げた。
「えっ!?」
「ちょっとだけ、言っておくのだ!」
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「ぷぷるんの武器も、いつの間にか自己進化してたみたいなのだ! だから、逃げてきたジョフクのビットたちの一部に触ったら、ぷぷるんの味方になってくれたのだ!」
ジョフクが驚愕する。
「そんな……洗脳も、ハッキングもされてないのに……?」
レイタは静かに言った。
「俺があいつらに与えたのは、『自由』だよ。命あるものにも、ないものにも、『未来を選ぶ自由』を与えた」
ビットたちは、モールの天井を破壊し空へと舞い上がる。
「その力、一体……!」
ジョフクが言いかけた瞬間、いちごパンツ星人100%チラが飛び起き、彼女の前に出た。
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100%チラは真顔になると、ジョフクの耳元で囁く。
「それとも、今ここで死ぬ? あんたが死んでくれた方が、わたしたちにちゃんとした撤退理由ができてちょうどいいんだけど。あんたの代わりなんていくらでもいるし」
レイタには、そのセリフは聞こえなかった。
ジョフクの顔が青ざめ、チラがニヤリと笑ったのがわかっただけだった。
ジョフクはしばらく沈黙してから、言った。
「……次は、容赦しない」
それだけ告げると、四人の姿は光に包まれ、空へと消えていった。
――残された、静寂。
「レイタ……すごかったのだ……」
「……いや、まだ全然。でも、わかったよ」
レイタは空を見上げる。
「俺はもう、逃げられない。戦わなきゃいけないんだ」
ぷぷるんが、そっと手を握った。
「大丈夫なのだ。レイタは、ぷぷるんのヒーローなのだ!」
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この先、自分が「神」とすら呼ばれる存在と戦うことになることを――
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