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第2章 タイムリミットは20歳なんて聞いてない!
3.もう、こうなったら仕方がない!②
しおりを挟む俺の目を射抜くのは、銀髪青銅色の瞳。すらっとした長身、腰の位置が高く長い脚、柔和な笑みを称える顔は、張り合う気もなくすくらいの完璧なザ・イケメンっぷりだ。
「カレス……」
第3皇子、カレス。
こちらの世界での俺の異母兄だ。
王侯席の、父王の側近くに居たはずのカレスが何故ここに?
「何で居るわけ?親父……王の近くに居たんじゃ、、」
「どこへ行く?」
俺の質問を遮り応えようともせず、ひたとこちらを見据えたまま問われた。
無視かよ…
ほんっとにもう、誰も彼も俺の話を聞きゃしねぇ!
まぁ、もういい加減慣れてきたけどな。
溜め息だけはき、胡乱な目を向ける。
「どこへって……部屋に帰るんだけど?」
これ以上、くだらん見世物を見るつもりも、ましてや見世物になるつもりもない。やらなきゃならない優先事項が決まった以上、まごついてるわけにはいかないのだ。
「あれだけ注目浴びておいて、また更に目立つ事を起こすのか?」
まるでわざとそういう行動起こしてるかのような言い方に、さすがにカチンときた。
ほう?するってぇと、何か?俺が注目浴びたくてそうしてると言いたいのか?
怒りの沸点ブチ抜いて、逆に落ち着いてきたわ!
沸々ゆっくり沸騰する怒りを感じつつ、静かに口を開く。
「好きで浴びたわけじゃない。ユーグが勝手にしただけだ。俺は下らない見世物の景品……褒美、、になるつもりはないんだけど?」
「お前の意思は関係ないんだよ。継承権のない今のお前の立場は微妙な位置だ」
また継承権に意味深な言葉。早々に調べる必要有りだ。さっさと帰って調べたいというのに、カレスは俺を解放する気配がない。
苛々が募り、自分でもかなり顔が剣呑になるのを感じる。
「悪いけど、俺、人形じゃないから、意思無視されて好き勝手される謂れない!帰るんだから、離せよ!」
「帰るのなら止めはしないが、帰る場所が違うな」
「は?」
怪訝な顔で眉を顰めるが、返答はない。
帰る場所が違うって、俺の部屋は一箇所だけだ。
それとも、この世界、皇子様はいくつも部屋をお持ちなのだろうか?あり得ない話ではないが、俺はそんなこと知らないし、たとえ、あったとしても部屋なんか一つあれば十分だ。
「部屋はこっちで合ってるし、何言ってるか、、、ッッッ、って、ちょっッ⁈」
いきなりグルっと世界が反転し、目を白黒させてる間に、目線が高くなる。
カレスの肩に担ぎ上げられたと気づいたのは、すでに呆気にとられる俺に構わず歩き出された後だ。
「何すんだよ!降ろせッ!!荷物じゃねぇんだぞ!!」
軽々持ち上げられたのもそうだが、何より、見た目だけなら好青年然としたカレスが、人を荷物のように肩に担ぎ上げるなど、些か行儀悪い行動起こすとは思わず慌てふためく。
この皇子様が外見にそぐわず体が鍛えられているのは分かっている。
俺みたいなモヤシ(元の俺はどうあれ、今は不本意だがそれ)が抵抗したところで無駄だ。
無駄だが……「はいそうですか」とはならないのが俺だ。
やるだけ無駄とは分かっていても、担ぎ上げられた肩の上で必死に身動ぐ。
背中をバシバシ叩き、やっと煩そうにカレスが視線を寄越した。
「何だ?」
「「何だ?」じゃねぇだろ!何だよ、この扱い!どこ連れてくんだよ!!」
向かっているのは明らかに俺が帰ろうとした方とは真逆。
「帰る場所が違うと言ったろう?」
「帰る場所って……俺が俺の部屋に帰るんだから、違うなんて……」
「お前は俺のものだから、俺が帰る場所、俺の宮がお前の帰る場所だ」
「は??????」
煩わしそうに言うカレスの言葉を一瞬理解し損ねた。
俺が帰る場所が俺の帰る場所?
俺の宮って、カレスの宮が、俺の帰る場所って………
って言うか、さっき、カレス何て言った?
俺が、カレスのものって……………………
「はぁーーーーーーーーーーーーーーー?????」
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