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第三部1章 嫁取り騒動再発 逃避の蜜月編

1.卵持参で逃避行?宰相様、いい加減にして下さい(怒)①

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居心地が悪い。

今の俺の感情はそれに尽きる。ちらっと横目にを見る。
うぅっ…黒い、、オーラが物凄く黒い。

「で、あるからして!クレイドルの皇太子殿下たる者、お子をお持ちになるは当然の事にて…(うんたらかんたら)…………………」

大臣の一人(名前は忘れたけど……ヒゲ立派だから、ヒゲ大臣でいっか?)が、何やらさっきから長々(クドクドとも言う)説教……ではなく、力説中。
今、俺たちがいるのは接見室という、私的な用途で使うための部屋の一つ。
その部屋で、俺とバルドは大臣と宰相レズモントより話を聞いている。と、いうより聞かされている。

「で?だから、其方らは何が言いたい?」

俺の隣で黒い怒りのオーラを放ち、不愉快だと顔にも態度にも表したバルドが、低く冷たく言い放つ。言葉遣いは一応、皇太子としての言葉遣いだが、ソファの肘掛けに肘をつき、頬杖ついた態度は不遜以外の何物でもない。

「殿下にはご側室を、貴妃を迎えていただきます」

宰相レズモントの言葉に、バルドがついっと、凍てつく視線を向けた。さすがは、腹に一物どころか、二物三物もある曲者宰相だけあり、バルドのそんな視線一つ怯みもしない。しれっと受け止め、歯牙にも掛けない。

「俺のには、アヤがいるが?其方らには見えておらぬか?」
「無論、承知致しておりまする。様は、崇高なる女神の光の魔導。魔導の中でも稀有なる光…殿下の伴侶たるに相応しき方。こうして、御目を合わせるだけでも不敬なれど、見えぬなどとは恐れ多い」
「分かっているなら何故言う?」
「殿下!それにつきましては……ッ!」

別の大臣が口を開きかけ、バルドに睨めつけられて黙り込んだ。
バルドの気がささくれ立ってる。側にいるだけで、肌がピリつくようで痛い。
バルドに睨まれただけで、あっさり黙り込んだ大臣に、レズモントが不甲斐ないとばかりに顔を顰めた。小さく体を縮める大臣に、呆れのため息をつき代わりに口を開く。

「アルシディア様は、殿下のご正妃。それは変わりありませぬ。むしろ、そうでなくては困りまする。さればこそ、他は側室…貴妃なのです。お立場は天と地ほどの差があります」
「言いたかった事でもないし、聞きたかった事とも違う。分からんようだから、言葉を変えようか?正妃アヤがいるのに、何故、貴妃をあてがおうとする?」
「分かってはおりますよ、殿下。不敬を承知で、率直に申し上げても?」
「今更だろう?お前が不敬でなかった事があるか?」

怖い…怖い怖い怖い怖い怖~~~い!
方や不遜な暴れ狼。方や百戦錬磨の古狸。どっちもお互い譲らないからこの場の空気がめっちゃ重い……

「問題はお子です」

レズモントの切り出しに、俺は無意識に体をビクッと戦慄かせた。
ちらっとバルドが横目に視線を寄越し、さりげなく体をずらして体を寄せてくれた。

「つまり何か?アヤが男なのが問題だと?」
「単的に申し上げますれば、左様にございます。アルシディア様が如何に稀有でお美しかろうと、男性では子はできませぬ」

しれっとズバッと、躊躇いもなく言い切ったレズモントに、バルドの額に怒りの青筋が浮く。
スーーッと冷えていくバルドの魔導と空気。
マズいかも………

「バルド……」
「…………………」

横から服の袖を軽く摘んで名前を呼ぶ。
レズモントを凍てつかんばかりに睨みつけ、バルドが目を伏せ小さく息を吐いてから開けた。

「忘れているようだが…こちらは、陛下の命により、魔大陸より同じ性同士でも子を成せるすべを持ち帰っている」
「存じておりまする」
「それを承知で尚、言うと?」
「恐れながら。魔大陸などという下等な地の、得体も知れぬ術…例え陛下の命とはいえ、私はこの国の宰相として、そのような卑賤な血をクレイドル帝都に混ぜる事は受け入れかねまする」
「………ッッッ!!!!!」

くわっと目を見開き、無言でバルドが憤然と立ち上がりそのまま部屋を出て行く。

「バルドっ!?」
「アルシディア様」

慌てて後を追おうとしたら、レズモントに呼び止められた。
うぅっ…やだなぁ~……俺、こいつ嫌い。

「な、に?」
「殿下をお諌めするのも、正妃の役目。どうぞ、お忘れなきよう」
「……………………」

もっともらしい事言ってるけど、結局は宰相こいつも大臣たちも、クレイドルだけが大事なんだ。バルドを国を良くするためだけの付属品ぐらいにしか思ってない。
なんか、腹立ってきた!

「…………やだ」
「アルシディア様?」

レズモントの呼びかけに、キッと睨みつける。

「やだっつったんだッ!バルドがやなモンは俺も嫌!人を道具にしか思ってないような奴らに、誰が従うか!バーーーーーッカ!!!」

フン!と鼻で吐き捨て、呆気にとられた面々を尻目に部屋を出た。

「な……」

しばし呆然としていた大臣の一人が我に返り、思い切り顔をしかめる。

「なんと、無礼な!いかな光の魔導様といえど、宰相閣下に向かい、あのような物言いをするとは!」
「宰相様、ここは陛下に報告し動いて……」
「いいや、構わぬ」
「宰相閣下?!」
「どうせ、すぐに思い知る事となる。すぐに……な」









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