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第三部1章 嫁取り騒動再発 逃避の蜜月編

4.想い合うが故に、すれ違い…⑤

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ハァ……と、溜め息が漏れる。

ユリウスに部屋まで運んでもらって、すぐに一人にしてもらった。
俺の態度はあまりよろしいものじゃなかったが、ユリウスは静かに笑って聞き入れてくれ、心配するアリッサとローレンを促し、今は一人きり。
いつの間にか疲れて寝てたらしい。

ハァ……また、溜め息。

「貴妃……イザベルを迎えるのかな?」

庭園で会った時、仲良く寄り添ってたし……多分、そうなんだろう。

顔が歪む。マジ、凹む。

「嘘つき皇子……貴妃なんかいらないって言ったくせに!…………俺だけだって」

最初に目が合っただけ。あとは、こっちを見もしなかった。
不本意とはいえ、ユリウス皇子の腕に掴まった俺に対して、一言もなかった。
それだけ、俺に対して怒ってる?
確かに怒らせるような事言ったのは俺だ。でも、だからって……あんな見せつけるように、イザベルを腕に纏わせて……………………………………………………
………………………………………………………………

「何だろ……めっちゃ腹立ってきた!俺だけが悪いのか?!バルドだって、俺の不安を煽るような事して、約束だって破ろうとしてんのに?!」

考えたらだんだんだんだん腹が立ってきた!
第一、俺もなんでこんな弱い女みたいに、一人めそめそしてんだよ!?

ムカつく………ムカつくムカつくムカつく!

「ああああッッッ!!!!!もうッッッ!!!!!!無理ッ!我慢できんわ!!そうだよ、何で俺が一人我慢するわけ?!」

言うだけ言ってやる。
イザベルを貴妃として迎えるってなら、俺は一人でクレイドルに戻る。
三人並んで仲良しこよしなんかできるかッ!!

寝台から起き上がり、服を着替えた。
寝室から、隣の部屋を覗くと、部屋はランプシェードの灯りのみ。

「夜、か?何時頃なんだろ……」

部屋を訪れるには遅い時間なんだろうか?

「まぁ、大丈夫…かな」

遅い時間だとしても知るか!

アリッサとローレンはいない、か?
バルドの部屋の場所、聞こうと思ったけど……

「それらしい部屋あったら覗いてみればいいかな」

部屋をそっと抜け出す。
廊下はランプシェードの仄かな灯りがあり、真っ暗ではない。
城とは違い、あちこちに護衛兵がいるわけではないので静かだ。
結局、最初に聞いてた、俺とバルドが使う予定の貴賓室、場所は聞けずじまいだし、俺は別室使ってるからナ・コルテスでは一緒に居ないまま。

「ラァムの実!確か預けたまんま…場合によっちゃ、あれだけは持って帰んなきゃ」

あれはまだ魔大陸にしかないもの。かなり希少なものだし、うっかり出回ったりしたら騒乱の元だ。
話次第という事で、とりあえず部屋を探して歩き回る。

「あれ?ここ、どこだ?」

見知らぬ場所に出た。
庭園に出られる、渡り廊下みたいな場所。案内された覚えはないから、迷ったらしい。
屋敷はかなり広く、元の部屋にちゃんと戻れる自信がない。

「えぇ~…、と…どうしよう」

すでに道順すら覚えてない。
勢いに任せて出てきたけど……早くも後悔だ。

「誰か居ないかなぁ……居ない、か」

こんな夜に、庭園歩いてるような奴……………………

「あ……居た」

視界の端に、男数人が荷物らしき大きなものを抱え、庭園を静かに歩いているのが映る。

「使用人、かな?」

大型のゴミでも捨てに行くのか?それにしても、大の男数人がかりって……

「まぁ、いいや。使用人なら、部屋分かるよな。聞いてみよ」

道と部屋を聞くべく、俺は男たちの方へ駆ける。

「あの、部屋が分からなくなって……」
「ッッッ!!!!!」
「えっ…………?!」

振り向いた男の顔を見て、俺は固まった。男たちは三人。その三人ともが、オペラ座の怪人に出てくるような仮面(色は黒)を付けていたからだ。

「おい!どうする、見られたぞ!」
るか?」
「これ以上長居できん!」

男たちが慌てふためき一気に捲し立てる。

やるって……”る”って言ったよな?今……

マズい……

俺の中で警報が鳴る。
こいつら、使用人なんかじゃない。
男の一人が抱えた布に包まれた荷物の端から覗いたものが目に留まり、思わずハッとなる。
深いエメラルド色の……

「イザベル?!おい!お前ら、一体…ッッ!!!!!」

男たちが抱えたものの正体を悟り、声を張り上げようとした瞬間、首の後ろに強い衝撃を受け、目の前がぐらりと揺らぐ。
四人、目?
男三人の他にも居たらしい。
目の前が急激に暗くなる。朦朧となる意識の中、ゆらゆらと振り向いた目に、月光で逆光となる中、鈍く光る暗めのシルバーを見てとり、俺の意識はそこで完全に闇に呑まれた…………ーーーーーーーーーーーーー








*久方ぶりの、トラブルほいほい発動!(笑)
さて、真相は?!次回にてm(_ _)m
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