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第三部3章 思惑の全能神と真白き光の眠り姫 編

6.女神、帰還への序章⑤

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「アウフィリア。ルーと言ったら、お前が前に言ってた?」
『そうよ。”結愛と光の時女神”。私と同じく、7柱創造神の一人』
「それは聞いた。だがルーは………」

俺が言い淀むと、アウフィリアが小さく頷く。

『えぇ…ルーは睡りについてるわ。だから、妙なのよ』
「どういう事だ?」

俺の問いに、アウフィリアが困惑したように首を振る。

「分からないわ…あぁ、違うわね。妙なのが分からないんじゃないの。何でそんな事が起こり得たのかが分からないの」
「アウフィリア…そんな答えでは、我もグレインバルドも分からぬ。何が妙であるのか話せ」

ギルゼルトの促しに、アウフィリアが溜め息をつく。

『さっきも言った”揺りカゴ”よ』
「どういうものなんだ?」
『私達、神や女神は、まぁ、滅多にないけど、永い睡りにつく時、揺りカゴと呼ばれる空域に入るの。場所はアストラルに似てるわ。違うのは、入れるのは空域の持ち主だけ』
「それは………」

アウフィリアの言葉がそうなら、確かに妙だ。
アヤが見たのが揺りカゴだと言うなら………

「アヤはその空域で、ルーを見ておる。なれば、空域の主足り得ぬアヤがそこに入れたは……精神体だったからではないのか?」
『無理ね。例え精神体だろうと、ルーの揺りカゴに入れるのはルーだけよ。空域の持ち主以外が入れば、異物とされ攻撃を受けるわ』
「アヤも最初は攻撃を受けなかったと……涙がアメジストに変わった途端に攻撃されたと言ってたが………」
『アメジスト……ルーの守護石だわ。攻撃を受けたという事は、やっぱり揺りカゴね。何で入れたのかしら……?』

それは知りたいが……今はそれより、、

女神お前の仕業じゃねぇんなら、あれは何処に消えたんだ?」
『分からないわ……』
「ルーが関与しておるのか?」
『私に聞かないでよ!』

アウフィリアが半分怒ったように言い放つ。
肝心な時に使えねぇ女神だ。
不意に、リィ……ンッと、微かに澄んだ小さな波動を感じた。

「グレインバルド?」
「シっ!ギルゼルト、少し黙れ……」

手で制す俺に、何事か感じてギルゼルトが口を閉ざす。
ゆっくりと目を閉じ、意識を集中させていく。
額にもう一つ目があるのを思う。
ややあり、頭の中にが飛び込む。
目を開け、見えた場所に歩いていく。

『ちょっと、何なの?急に』

アウフィリアの問いには答えず、魔鉱石の標柱を退かす。
現れたを拾い上げた。

「それは………!」
「あぁ…」
『だから!何なのよ⁉︎』

手の平にのる小さな欠片。
見つけた。
これなら………!!

「やれるのか?」
「やれる?はっ!!誰に言ってる⁈できるに決まってんだろうが!人のモノ奪っておいて、このまま逃げられると思ったら大間違いなんだよ!!俺から、アヤを奪おうとする奴は、相手が誰だろうと許さねぇ……たとえ、この世界が敵だろうとな!」

手の平の中に握りしめ、ギルゼルトに向かい不遜に笑う。

『ちょ、ちょっと⁈何する気?』
「奪われたなら、奪い返す!」
『はぁ?誰がとか何でとか、何も分からないのに?まさか、使って⁈無茶すんじゃないわよ!どんだけの魔導と波動が入り乱れると思ってるの?下手したら、塔が………ッ!』
「魔鉱石を解放しよう。我が補う。好きにせよ」
『ギルっ⁉︎あんた……っ!!』

ギルゼルトが静かに言い放ち、アウフィリアがそれにギョッとしたように噛み付く。

『ああァッッ!!もうッッッ!!!!!言い出したら聞かないったら!!似てないって言ったの撤回するわ!!その頑固さ!あんた初代水の魔導エルネイレスそっくりよ!!』

アウフィリアが眦キリキリ吊り上げて怒るのに、ニッと不敵に笑い、俺は手の平に握り込んだものに意識を集中させ、体の周りに魔導の方陣を三つ創り出す。
一つは水、一つは氷、一つは闇…
闇はまだ制御しきれてないが、そんな場合じゃない。
三つの方陣に魔導を流し込む。方陣が光り出したのを確認し、中央に手の平の中のモノを放る。
キラキラと煌きながら三方方陣の中に収まる。

「アウフィリア…結界を」
『当たり前でしょ⁈もう、やってるわよ!闇の魔導、まだ操りきれないくせに無茶して!暴走なんかしようものなら、どれだけの理が壊れる事か…』

ギルゼルトに、アウフィリアがキーキー怒って噛み付くを横目に見る。
右目が熱を持つ。のを感じる。
それまで聞こえていた、ギルゼルトとアウフィリアの声が遠くなっていく。


「仕方あるまい?グレインバルドはアヤがそれだけ大切なのだ。女神の魔導は総じて、光の魔導を激愛するもの……我らをそう創りしは、女神、お前だ。まぁ、女神の魔導でなくとも、アヤの本質は好ましい。それ、抜きにしても、アヤに対すれば、惹かれずに居られまい…無論、我も同じく……」
『アーシルと違うわ……ううん。歴代のどの光の転生者とも違う。変ね……女神が創った筈なのに、アヤに関しては………』
「アウフィリア?」
『な、んでも………何でもないわ。構えなさいな、ギルゼルト。我が儘皇子グレインバルドが、方陣を開くわよ』








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