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第二部1章 黒き鎖の呪痕 奪われつつある光の章
3.魔大陸上陸 白き狼の子守唄②
しおりを挟む俺とバルドを見つめる瞳。
キョトンとしたそれは、あどけないと言っていいくらいだ。
「殿下、アヤ!」
バルドに遅れて、セレストとイアンも駆け寄ってきた。
「犬狼族!?魔物!!」
少年を見とめたイアンが構える。途端、ビクッと怯えた様子に、俺が止めようとするが、それより早く……
「止めんか!」
「いってぇーーーーーーーーッ!セ、セレスト!?何で蹴るんだよ?!」
「言葉で言ったくらいじゃ、お前は止まれんだろうが!それより、よく見ろ。魔物と言ってもまだ子供だろう?お前の目は飾りか?この脳筋が!」
「ひ、ひでぇ……あんまりだ、セレスト」
本気でショックを受けたらしいイアンが、ガーンとばかりに呆然となるが、セレストは完全無視だ。
ちょっと気の毒だな。
「失礼いたしました、殿下」
未だショック冷めやらないイアンを引っ張り、セレストが下がる。
とりあえず、可哀想だがイアンはひとまず放っといて、少年に対峙した。
「え、っと、ごめんな?何もしないからさ、怖がらなくていいよ?」
「あの……はい。あ、助けて下さりありがとうございます。あの、僕、ユフィカっていいます」
「俺はアヤ。こっちがグレインバルド。で、セレストとイアンだよ。えっと、ユフィカは魔物?」
我ながら何て質問だと思ったが、ユフィカは気にしてないようで、コックリ頷く。
「はい。犬狼族です。あなた方、人族で言うところの魔物になります」
やっぱり魔物なんだ。こんなに可愛いのに、魔物なんだ……
「そっか。あ!あのさ、さっきの奴らも犬狼族だよな?仲間なのに何であんな乱暴されてたんだ?」
「仲間…そうですね。確かに同じ犬狼族ですが、住む村が違います。縄張りが違えば、種族は同じでも仲間とは違います」
「そうなんだ?」
「はい。あのひとたちは、隣村の族長の息子のお付きのひとたちです。いきなり連れてかれそうになって、理由はわからないです」
よっぽど怖かったのか、耳とシッポがヘタンとなってる。可哀想だが可愛い。
「あ、の…ところで、あなた方はなぜここに?」
「え?あ~……え~っ、と…」
う~ん…どう切り出したもんか?目的の犬狼族に、偶然にも接触できたものの、あまりに突然すぎてどう話を持っていけばいいか分からない。
「あっ!い、った」
「え?あ、怪我した?!足か?」
「はい……さっき、捻ったみたいです……」
「わ……ちょっと腫れてる。その足じゃ歩くのは無理だな。家は近い?送ってくよ」
「いえ!そんな、わるいです」
ユフィカが慌てて首を振る。う~ん…怪我が心配なのは本当だが、二心がないわけじゃないから、ちょっと良心が……
「大丈夫だから、な?送ってく。えっ、と…俺じゃ、ユフィカは抱き上げらんないから……バル「断る!」
「は?何で??」
「俺にお前以外に触れろと?お前以外に優しくする気はない。イアン、抱き上げて運んでやれ」
「いいっ?!俺ですか?いや、俺もセレストが怒「らないから、運んでやれ」
「はい………」
セレスト、そろそろ優しくしてやって?イアン、可哀想通り越して、憐れになってきた。
ユフィカはイアンに抱き上げてもらい、俺たちはユフィカの案内で、村への道を歩き出す。
「犬狼の村はどのくらいの数が?」
「数は全部で六つです。ただ、大きなものは、僕の村とさっきのひとたちの村になります」
「そっか。あのさ、さっきの奴らと、ユフィカたちって仲悪いわけ?」
「いい…とは言えないですね。でも、それだけじゃなくて……僕が白いから」
「白い?確かに、ユフィカは白だな。でも、それが何……」
「アヤっっっ!」
「え?あっ、わっ!?」
突如、バルドに鋭く呼ばれ、手首を掴まれ引き寄せられた。胸元に抱き寄せられ、何事かと思った瞬間、目の前でギィィンッッと鋭い音が鳴る。
バルドが片手に俺、片手に剣で応戦していた。
ギリギリと鍔迫り合い、交差した剣の向こう側に見たのは………ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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