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第二部4章 表裏一体 抱く光は闇 抱く闇は光の章
1.闇、始動。騙し騙されは世の常なり?!④
しおりを挟むディオンが指を鳴らすと、空間が白む。
切り替わった景色は…………
「アストラル?な、んで、ここに?」
「邪魔されず、話をする必要があるので、敢えて場所を移しました」
「ディオン?」
ディオンの格好……深い緑を基調とした、黒と金古美の刺繍の入った、魔導師が着るようなローブに、背丈ほどもある長さの錫杖。
「お二人に、問いがあります。よろしいでしょうか?」
「い、けど?」
応える俺に、ディオンが痛みを堪えるように一度目を伏せ、スッと顔を上げて真っ直ぐ見据えてくる。
「今生、光が選びし者は水、水が選びしは光……これに相違なく、また、違えし事はなし……間違いありませんね?」
「え、と……?」
何か小難しい言い方してるけど…俺が選んだのは水のバルドで、バルドが選んだのは光の俺で合ってるか?って事だよな?
ちらっとバルドを見ると、小さく頷かれる。
「相違ない。俺も、アヤも……この先何があろうとも、お互い離れる事はない」
バルドが力強く応える。バルドの応えを聞き、ディオンが小さく溜め息をつく。
「さようですか……同じ、女神の魔導として、嬉しい限りです。ですが…………………」
え…………………………………………??
隣にいたはずのバルドが移動し、目の前に赤い花びらが飛び散る。
花びらは温かく、俺の顔や手にも飛び散り流れ………
流れ……?
顔についた花びらを手で触る。ヌルッとしたそれを纏った手を眼前に持ってくる。
「え……?な、ん……これ」
血?花びらじゃ、ない。
「ぐっ…………!!!」
呻き声が聞こえ、ハッとしてそちらに目をやる。胸から血を流し苦痛に顔を歪めるバルド。
憂いの顔でそれを見据えたまま、バルドの胸を貫く錫杖の柄を握るディオン。
違う…バルドが移動したんじゃない。
俺が移動させられた。
「バ、ルド?」
俺の声に、ノロノロと顔を上げるバルド。コポッと、空気と一緒に口から血が溢れ出る。
「…………ヤ…ッ」
「ぅ……あ、!うわぁぁぁああああああぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!」
現実を目の当たりにし、俺の口から絶叫が迸る。
「あ、あ、あぁぁぁあアァァァッッッッッッ!!!」
力が……黒い昏い、ドロドロした覚えのあるものが這い上がってくる。
駄目だ!駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ!!
分かってる!分かってるけど…………
「や、だ!ヤダァあっっ!!バルド!バルドっっ!」
「ぅ……めろ!アヤ………落ち、着け………力、し、ずめ、ろ」
「と、止まら、なッッッ!バルド…止ま……な、い、よーーーーーーーー!!」
ヒュッと苦しさに息を吸うと同時に、耳飾りのレイティア・サラマンディアが片方、バンっという音を立てて砕け散る。
砕けた欠片と共に、空を舞う紫色の煌めきに、涙が溢れ目の前が霞む。
アメジスト……バルドが、くれた大切な……………
肌を、禍々しい黒い鎖の紋様が覆っていく。
虚ろな目をバルドにやると、錫杖に貫かれたまま、バルドの瞳から光が消えていく。
絶望に声なき声をあげ、力が爆散しそうになった瞬間、首の後ろに衝撃を受け目が回り、意識が遠のく。
「……お許しを、姫。それは本意ではありません。させるわけにはいかない故、手荒をどうかご容赦を……」
「ぃ………ゃだ……………バ…………ル、ド………」
必死に手を伸ばす。
届かない……バルド、届かないよ…………
虚しく空を掻く手がだんだん力を失い、吸い込まれるように暗転していったーーーーーーーーーーーーーー
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