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第1章 黒の双極 傾く運命は何処なりや
3.子どもたちの楽園……?
「申し遅れました、貴人様。私、この神殿にて、副神官長をしております、ボリスと申します」
太ったおっさん、ボリスが名乗る。
副神官長……思ったより高い地位にあった。
「レーヴェは?」
「………あいにくと、本日は諸用あり外しております。貴方様の事は、このボリスがお世話するよう申しつかっておりますゆえ……」
「ふ~ん?……諸用、、ね」
なんかムカつく。
別に会いたくもないが、それでも。人をこんな強引なやり方で呼び出しておいて、当の本人がいませんとは、イマイチ納得いかない。
「第一皇子とレーヴェは何の為に俺を神殿に?なんか魂胆でもあるわけ?」
「魂胆などと、滅相もない!!我々、神殿の者は、貴人様のお力になれればと……」
うんたらかんたら……
ボリスが俺に構わず、つらつらペラペラ喋っているが無視する。
しようがなく神殿には来たが、未だに意図が見えない。
レーヴェが俺に使った妙な力。警戒しながらも、探った方がいいと思ったが、どうやら無理そうだ。
「神殿内をご案内いたします」
「それより、見たいものがあるんだけど」
「ははっ!如何様にも、ご随意に。何をご所望にございましょう?」
「珍しい本……書物でいいのか?まぁ、歴史とか魔導だとか、あとは、時渡りに関してのなんかだとか?そういうのが分かるものが見たい」
「それは………大神官長の伺いがいるものになるかと」
「何でも見ていいって言ったじゃん!それとも、何でもかんでも、レーヴェの許可がいるほど、あんたには力が無いわけ?」
「滅相もない。左様にございますね…承知致しました。副神官長の権限に於いて差配致します。ただ……大神官長の咎めを受けた際は………」
「OK……いいよ!俺が、あんたは悪くないって言うから」
満足そうに笑み、ボリスが案内に立つべく先になる。
言ったら悪いが、チョロい。
案外、単純で動かしやすいおっさんかもしれない。
神殿内を通り、深部にある中庭らしき場所に出た。
きゃあきゃあいう声が聞こえ、そちらへ目をやる。
「子ども?」
「神官、神女習いの子どもらですよ。神殿では、身寄りのない子らを引き取り、習わせ、十六の歳で残すか出すか決めるのです」
「出すって……神殿から?」
「はい。あぁ、ご心配なさらず。出すと言っても、放り出すわけではございません。きちんと、寄る辺を探し宛てがって出しますので」
慈善事業的なことをしてるらしい。
あの底意地悪そうな第一皇子の印象には、悪いが、まったく似合わない。
「ボリス様!」
「こんにちは、ボリス様!」
子どもらがわらわら寄ってきた。皆んな、神官が着るような、それよりも簡素だがひと続きの同じ服を身につけていた。
「ボリス様。この人、誰ですか?」
「皆、粗相がないように。こちらは、第一皇子殿下の大切なお客人である貴人様だよ。ご挨拶を」
大切な客人……ね。
俺はその第一皇子から罵られ、危うく殴られかけたのだが、このおっさんは知ってるんだろうか?
「ご機嫌麗しく存じます、貴人様。当、神殿へようこそお越しくださいました!」
胡乱な目をボリスに向けた俺へ、子どもたちが元気に挨拶してきた。
しっかり躾と行儀が叩き込まれているらしく、挨拶も淀みない。
「楽しそうだったけど、何かしてたの?」
「この時間は自由時間ですから、会話したり中庭で遊んだりですね」
神官の一人が応える。
子どもは皆小さな子が多く、興味津々で俺を見てくる。それを見て、苦笑すると共に、ピンと来た。
本を見に行く前に一つ寄り道だ。
「中庭、明るくていいな。少し、休憩がてら、子どもたちとおしゃべりしたい。子どもたちと俺だけにしてくれる?」
「貴人様!なりません、ここには護衛はおりませんので、我々、神官が……」
「子どもたちが俺に何かするって?どっちかって言ったら、俺が何かする方じゃね?そう言いたいわけ?」
「め、めめ、滅相もない!!そのような事は決して!」
「じゃ、どっか行ってて。書物は後で案内して」
ニッコリ笑い、キッパリ言う俺に、ボリスたちが狼狽える。これ以上聞く気も引く気もない。空気で気持ちを出すと、ボリスたちが渋々頭を下げる。
「か、しこまりました。それでは、後ほどまた参ります」
「よろしく~!」
離れていくボリスたちを見やり、姿が見えなくなるのを確認し、俺は改めて子どもたちに視線を向けた。
「話、しよっか?教えて欲しい事があるんだ」
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