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一月(弟)
#6
しおりを挟むこれはあれだ、間違いなく麻緋の。
何で……?
口止めにしても脅しにしても、他にいくらでも方法があるだろ。何でこれなんだ。
分からないから余計に怖い。抱かれる彼を見ていたから、まさか彼が自分を抱くなんて微塵も思わなかった。
「あっ………がっ、麻緋、やだ……!痛い、抜いて、ってえ……!」
無我夢中で泣き叫んだ。視界を奪われた状態で、この上何をされるのか。
「やだ、おかしくなっちゃう……っ」
「いいよ。おかしくなって。その方が絶対幸せだからさ」
見えないぶん、彼の声が、肌が、汗が何倍にもなって身体に染み込む。どこもかしこも爛れたように熱くて、馬鹿みたいに腰を振った。先端がぬれたペニスがぺたぺたと肌を打つ。でも逃げられないから、そんな恥ずかしい音もどうにもできない。
ベッドが軋む音がうるさい。床が抜けやしないかとヒヤヒヤするほどだ。
「千紘、やっと力抜けてきたな。お前のお尻の穴緩くて、気持ち良いよ」
やっていることと対照的に、麻緋の声は優しい。腰を掴む手も、唾液を拭ってくれる指も。……でも激しく突かれる度に、脆い心臓が止まりそうになる。
いやらしい水の音が鼓膜に張り付き、膜を張る。前も後ろもぐしょぐしょにぬれて気持ちが悪い。まるで粗相をしてしまったみたいだ。こんな状態で、麻緋も本当に気持ち良いんだろうか。
「千紘……っ」
「んうっ」
彼の性器が奥深くに潜り込む度に、理性が丸裸になる。自分自身を手放していくような感覚だ。
俺どうなっちゃうんだ……。
怖い。
「麻、緋……ねぇ、見えないのやだ……怖い……っ」
兄が今、どんな目で自分を見下ろしているのか。知るのが恐ろしいけど、それでも彼の顔を見たい。うわ言のように繰り返し、泣きながら懇願した。
「お願い」
「……うん」
ゆっくり、丁寧な手つきで目隠しが外される。目の前には、影がかかった麻緋がいた。いつもと変わらない、穏やかな笑みを湛えている。
「麻緋、怒ってる……?俺のこと嫌い……?」
ここまでされて、今さら訊くことだろうか。
嫌いに決まってる。いつも身の回りのことをしてもらってるくせに、脅してくるような弟。
わざわざ確かめなくてもいいことを訊いている。そう頭ではわかっているのに、何故か繰り返してしまった。
「千紘……」
しかし、麻緋は何故か驚いた顔を浮かべた。自身が犯した行為に今さら気付いたような様子だ。
セックス中の写真を脅して見せた時はまるで動じなかったのに。今までで一番、瞳の色を揺らしている。
麻緋はわずかに俯いた後、かぶりを振って額にキスしてきた。
「嫌いになるわけないだろ。何があったって俺はお前の味方だよ。お前を愛してる」
夢にも思わなかった言葉だった。
だって自分は麻緋を毛嫌いして、避けて、関わらないようにしていたぐらいなのに。
それでもそんなことを言ってくれるなんて。
人生史上最低で最悪なことをされている。だけど彼に大事に想われている、それが分かったら何かが中和されてしまった。なんて単純な脳みそだろう。
「う、ん……っ」
辛くて悲しくて、涙が止まらなかった。
「ごめん……。麻緋、俺……あんな酷いこと言って……」
彼の胸に顔をうずめ、泣きじゃくりながら謝る。
「俺麻緋が羨ましくて……いつも父さんは麻緋のこと話すから……俺はこの家にいらないんじゃないかって……っ」
「馬鹿。いらないわけないだろ。誰が何と言おうと、俺はお前が一番大事だ。お前は誰にも、どこにもやらないよ」
麻緋は優しく、首や胸に口付けしていく。赤ん坊にするみたいに、柔らかい部分を触って確かめていく。
「ごめん、麻緋」
「もういいから。可愛い、俺の……ほんとのお前を見せて?」
時針が進む音がぴたりと止まった。また、激しい律動が始まる。
「ああっ……」
同じセックスなのに、さっきまでと全然違う。すごく気持ち良い。
「千紘、気持ち良い?」
「ん、気持ち良いっ、麻緋の……もっと、もっといっぱい……っ!」
頭がおかしくなるぐらい恥ずかしいことを、必死に。何度も何度も叫ぶ。
快楽に負けた。こんなところを父に見られたら、それこそ人生終了だ。賭けのような危うさに揺れ動いたが、シーツに振り落とされる度に泡のように消えていった。あれだけ燃えたぎっていた彼に対する憎しみも綺麗さっぱり、浄化されていく。身体はどんどん汚れていくのに不思議だ。
不可解。
「千紘はおちんちん大好きなんだね。エッチな子」
「ん、好き、麻緋のが好き……っ」
身を捩りながらねだると、中でまた大きくなった気がした。
「こんな身体にした責任はとらなきゃね。千紘、一緒にイこ」
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