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お出迎え
#18
しおりを挟む「お酒の失態なら俺も山ほどありますよ、叔父さん。鈴もすごい反省してますし……今回だけ、どうか許していただけませんか」
「和巳君は甘過ぎるんだよ。この馬鹿は一回ガツンと言ってやらないと分からない!」
自業自得だけど、すごく居づらい。
この歳で親の説教に半泣きだった。十年前の俺が今の俺を見たら、きっと幻滅間違いなしだな。
「……こんな状態で目を離していたら、次は何をしでかすか分かったもんじゃない。やはり、家に戻ってきてもらおうか」
「えっ!? ちょっ、それだけは勘弁してください!」
それには焦って、思わず勢いよく立ち上がった。
実家に戻ったら今度こそ自由という自由を失う。また、あの息苦しい日々が始まる。
「お前は社会人として、この家の人間として自覚が足りないんだ。大学を卒業する前にもう一度、性根から鍛え治してやる」
さっきと同じだ。手が震えだした。
戻りたくない。でも言い訳のしようもない。
どうしよう……。
「叔父さん、その必要はありませんよ」
俯き狼狽えていると、和巳さんは静かに手を挙げた。
「叔父さんの手を煩わせなくても、俺が責任持って鈴を指導します。どうせこれから一緒に住む予定でしたから」
この場にいる全員、あんぐりと口を開ける。彼の台詞は、色んな意味で驚愕した。
一緒に住む予定なんてなかったはずだけど……助け舟なのか、そんなことを言い出したのだ。
「指導?」
「えぇ。ウチの名に恥じない、立派な大人にしてみせます」
当の俺は置いてけぼりで、話は進む。
「ううん……確かに、和巳君になら安心して任せられるか……」
しかも、父はあっさり納得した。いやいやいくらなんでも彼を信用し過ぎじゃないか?
かなりツッコミたかったけど、家に戻らずに済むならその方が絶対良い。黙って、そうなるように祈った。
「和巳、鈴鳴君と一緒に住む気なのか?」
「うん。俺も日本久しぶりだし、感覚が戻ってないから鈴の家でゆっくりさせてもらおうかと思って」
和巳さんは伯父さんに笑って話す。こんなんで大丈夫なのか不安だったけど、父さんはサッと立ち上がった。
「……分かった。でも和巳君、見込みがないと思ったら連絡してくれ。すぐに家に連れ戻す」
「かしこまりました!」
「それじゃあ、今日はお先に失礼するよ」
父は鞄を持ち、伯父さん達に挨拶するとあっさり部屋を出て行った。
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