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お出迎え
#21
しおりを挟む「でもさっきも話したように、酔ったのはわざとじゃないんです。ほとんど怪我の功名ですよ」
「良いんだよ、お前の失敗なんて可愛いもん。俺酔っ払って二階のバルコニーから飛び降りたことあるよ」
「な、何で?」
「飛べる気がしたんだ。気付いたら病院に運ばれてたね」
はぁ……よく分からないけど、そのチャレンジ精神はさすがだ。
再び複雑な気持ちになってると、和巳さんに両手を握られた。
「鈴。本当に、しばらくお前ん家に泊めてもらっても平気か?」
「もちろん、大丈夫ですよ。むしろお願いします!」
「良かった……。ありがとう」
即答すると、強く抱き締められた。
鼓動が速くなる。和巳さんはすぐ俺を抱き締めるけど、これは挨拶代わりのハグなんだろうか。
子どもの頃は、俺に抱きついてきたことなんてなかった。むしろ俺の方が彼に抱きついてたんだ。
うわぁ。そう思うと恥ずかしい。
でも今も……大の男二人で抱き合ってるのはいかがなもんか。もちろん意識飛びそうなほど嬉しいけど。
色々考えてると、和巳さんはまるで俺の心の中を読み取ったような質問をしてきた。
「鈴は、こういう風に誰かと触れ合うことよくある?」
「えっ? いえ、ありません」
「じゃあ、……こんな風に触られるのは、あまり好きじゃない?」
和巳さんの優しい掌が、俺の胸の辺りに触れた。シャツと肌着一枚の上から、ゆっくりとした動きで回っていく。
「ちょっ……和巳さん?」
その指先は何かを探してるようだった。
「んっ!」
ある一点に触れ、変な声を出してしまった時にそれが分かった。少し尖った、胸の突起。そこを執拗に弄られる。
何で……。
訳が分からなくて混乱した。抵抗することも忘れ、布団の上に押し倒される。
彼は俺の上に覆い被さると、耳元で囁いた。
「昔と変わらず、俺のそばにいてくれるか」
「……!」
彼の手が、とうとう腰の辺りに回った。
「会えないのが辛くて、触れられないのが寂しかったよ。……お前は、俺がいなくても平気だった?」
何とか横を向いたことで、視線が交わる。彼は泣きそうな顔をしていた。
会えなくて平気……なんてことは全くない。
「俺も……」
平気だったら、こんな好き放題されてない。
「和巳さんに会えなくて……本当に辛かった」
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