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和巳の一日
#13
しおりを挟む意固地で一辺倒。家庭内で威張り散らす父親の代表みたいな人。良くないと思ったけど、堰を切ったように否定の言葉ばかり溢れ出す。
「一人暮らししても変わらなかった。たまに帰っても、目も合わせてくれない。何をしても怒るし、何もしなかったら怒るんだ。そんな人が俺の心配なんてすると思う? しないよ! 普通に考えて! 分かるでしょ」
……分かってくれるでしょ?
ほとんど、同意を求めていた。俺達を傍で見てきた和巳さんなら分かる。むしろ、和巳さんにしか分からない。
まだまだ言葉は喉元まで出てきていたけど、彼は何も言わずに俺を見返していたから引っ込んでしまった。
自分でも恥ずかしくなるぐらい、熱くなってることに今さら気が付く。気まずくなってしまい、口を噤んだけど。
「……分かるよ。俺は、鈴の味方だから」
その言葉にホッとした。……のも束の間、軽くだけど頬をつねられる。
「でも、叔父さんの敵ってわけでもないんだ。強いて言うなら、俺は叔母さんの味方かな」
「え」
訳が分からなくて彼を見つめ返す。でも、そのまま優しく抱き締められた。
「日曜日だけは、今までのこと全部忘れて叔父さんに会いに行こう。おじいちゃん家でも約束したでしょ?」
「う……」
それを言われると弱い。父さんに連れ戻されそうになったとき、和巳さんが機転をきかせたおかげで助かったから。
「叔父さんにずっと会いに行かなかったら、あの場にいた皆を裏切ることになっちゃうよ」
……確かに、伯父さんやおじいちゃんに意思表明した。かなり漠然とだけど、俺が一人の大人として成長することを約束したんだ。
「でも和巳さん、俺あれから全然成長してないよ。父さんに会う理由にならないんじゃないかな」
「父親に会うのに理由なんていらない。理由を求める方が変だよ。鈴はあの家に帰る権利がある。だって、あの家の子なんだから」
抱き締める手の力が、また強くなった。
「それは……そうだけど」
「叔父さんも困ってんじゃない?」
「困る? 何に」
聞き返すと、和巳さんは俺から離れた。
さっきまでの熱く燃えたぎる感情はいつの間にか冷め、今は冷静に彼の話を聴いている。
「鈴と仲良くするタイミングだよ。頑固なところは二人ともそっくりだからね」
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