双凶の妖鬼 蒼 ~再逢~

utsuro

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人の所業 ☆挿絵はお話当時の海神

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 いつのことだったか・・・・・。
 幾日経っても海神わだつみ白妙しろたえの元を訪れない時があった。

 その時海神は、ある神妖の心無い戯れにより困窮に瀕しているという町の嘆きと祈りを受け、その苦しみを取り除きに向かったはずだった・・・・・。

 だが、彼らを救いにいったはずの海神は、自身が救った人々の手により、怒りと苦しみのはけ口として、理不尽にも地下牢へ捕らえられていたのだ。 

 異変に気付いた白妙は、すぐにその町を訪れた・・・・・・。
 堀で囲われた、ひときわ大きな屋敷の奥に海神の気配を見つけると、扉をくぐることもせず敷地に入り込む。
 海神わだつみからそう離れていない場所にまとまった人の気配を見つけ、白妙はそこへ姿を現した。

 「曲者!・・・なんだ。女か。しかもかなりの上玉だ。」

 突然現れた白妙に気づき、そこにいた男たちは声を上げたが、女と見間違えるとすぐに警戒を緩め、いやらしい笑みを浮かべ下卑た言葉を吐き出し始めた。

 「女・・・。お前が勝手に入って来たんだ。何をされても、文句は言えまい。」

 「今捕えられている痴れ者は、美しいとはいえ男だからな。あれが苦しみに耐える顔にも恐ろしく高ぶるものがあるが・・・。俺が抱きたいのは女だ。虐めるのもやはり女の方が燃える。」

 「確かにな。あれは本当に美しい。男と知っていてもあのような表情かおで耐え忍ばれては、こちらの淫欲を抑えるのももはや限界・・・男でもかまわぬと、今夜あたり犯そうと思っていたのだ。」

 白妙は海神のように甘い心ばかりを持ち合わせてはいない。

 手を伸ばしてきた数人の守衛を宙づりにすると、一人を残し、怒りのままに残る男の四肢の指を、全て粉々に砕いてしまった。

 品の無い叫び声をあげ、のたうち回る男たちを冷たく見下ろすと、白妙は残った一人の男に、抑揚のない声で問いかけた。

 「貴様らの所業は理解した。弁明の余地などないが、聞いてやろう。正直に答えれば殺しはしない。なぜだ・・・・・・。あの男は貴様らを救いに来たはず。それをなぜ辱めた。」

 白妙の殺気にあてられ失禁しながら、男はガチガチと歯を鳴らす。

 「汚らわしい・・・。答えられぬのならば、用はない。死ね。」

 その言葉に戦慄した男は、無理やりに口を開く。

 「町の、町の大人たちで・・・決めたのだ。・・・こたび・・・この町を襲った禍の元は去ったが・・・所詮はこの男も・・・奴の仲間。・・・我らの中には・・・ひもじさで命を落とした子も多かった。・・・逃げ勝ちなどされては・・・我らのこの怨み・・・収まらん。・・・同族であるこの男をいたぶり・・・日々門前にて大衆にさらす。・・・それを石や棒で打ち据えることで・・・ようやく町の者の気が・・・紛れるものだと。それだけでは・・・まだ足りぬと・・・ここでいたぶり・・・辱めるよう・・・我らは言い渡されたのだ。」

 「・・・・・・。」

 白妙は何も答えず、男の指を全て砕きその身を乱雑に床に投げ捨てた・・・・・・。
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