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77話 シャインって子、邪魔ね
しおりを挟む「親孝行だと?」
「はい。私、お父様とお母様に、いっぱい、孫と触れ合う時間をあげようと思って……だって、ルエルお姉様には、子供が出来ないでしょう?だから、私が産んだ子が、お父様とお母様にとって、唯一の孫だから……」
可愛いお父様の孫を産んだ、自慢の可愛い娘が泣いて、可愛いことを言うんだから、すぐに手の平を返すに決まってる!『ずっと家にいていい』そんな言葉がお父様の口から聞けると、エレノアは信じて疑っていなかった。
子供も産めない女として欠陥品の姉と違って、可愛い孫を産んだ私こそが、愛される存在!もっと、大切にされて当たり前なの!
だが、父親から返ってきたのは、予想外の言葉だった。
「孫を使っての親孝行なら必要無いーーーすぐに出て行け」
「--え?」
「マルクス伯爵家には今日お前が戻ると話をつけてある。さっさとこの家を去れ」
「え?あ、お父様…!」
「この期に及んでルエルを見下す発言をするとは……愚かにも程がある。立て替えたお前の慰謝料は、最後の手切金としてくれてやる。次は無いと思え」
クリプト伯爵はそう言うと、一度も振り返らずに、その場から去った。
***
マルクス伯爵邸ーーー。
「エレノア!お帰り!」
「……ただ今戻りました、カイン様ぁ」
マルクス伯爵邸に着くと、私の旦那様が笑顔で迎え入れてくれた。
久しぶりの旦那様の香りーーー昨日まで腕の中にいた男とは、また違う香り。
「疲れただろう?部屋の用意はしてあるから、ゆっくり休んでくれ。僕達の子供は、今、母様と父様が見てくれてるよ!2人とも、僕達の可愛い子供にメロメロさ!」
「ありがとうございますカイン様」
エレノアはあれから、玄関から中に入ることすら許されず、追い出された。
「ムカつくムカつく!何よ……!可愛い孫と過ごしたいと思ったから、実家で過ごしてあげてたのにーー」
カインの言葉に甘え、パッと入浴を済ませると、エレノアは独り言を呟きながら、夫婦のベッドに倒れ込んだ。
「せっかく最近出会った男と良い感じだったのに、全部おじゃんじゃん!あーあー」
これが、本音。婚家に帰れば、自由に夜、出歩くことが難しくなる。外に行けなければーーー夫とは違う男と、遊べなくなる。
私は可愛い。可愛いから、男は放っておかないの。
私の実家であるクリプト伯爵家は、そこそこ名のある名家であり、資産があって、義実家のマルクス伯爵家も、1目置いてる。
ルエルお姉様の時と違って、お母様に大切にされてる私は、嫁ぎ先であるマルクス伯爵家に、結納金以上の多額の持参金を渡した。
だから義実家は、私の里帰り出産も快く許した。
里帰り出産後も、隙あらばちょくちょく実家に帰ろうと思っていたのにーー!
なのに、今日のお父様の態度から見て、そう易々と実家に帰るのを許してくれそうに無い。
「何なのよ……全部、ルエルお姉様のせいよ!」
昔のマルクス伯爵家ーーカイン様は、パッとしない男だった。貧乏で没落寸前。こんな人のもとにお嫁に行きたがるお姉様の気が知れないと、鼻で笑ってた。なのに、ルエルお姉様と結婚してから、マルクス伯爵家は持ち直し、実家と同じくらい、お金持ちになった。
カイン様は性格も良くて優しい。お義父様も領主として優秀で、お義母様もお茶会をよく開いてらして、素晴らしい気遣いの出来る素敵な人だと聞いた。
「ズルい」
それなら、私が欲しい。私はルエルお姉様から奪ったカイン様と幸せな結婚をして、実家にも甘やかされて、適度に男遊びして、優雅で楽しく幸せで、誰もが羨む生活を送るつもりだった。なにより、ルエルお姉様如きが幸せになっているのが、許せない。
だから奪った。奪った時のルエルお姉様の顔は、今思い出しても滑稽で、ルエルお姉様によく似合っていた。ルエルお姉様には、不幸が似合うもの。ルエルお姉様はそのまま、不幸な未来しか待っていないハズだった。
「まさか、ルーフェス様がルエルお姉様を見初めるなんてーーっ!」
マルクス伯爵令息であるカイン様なんかよりずっと格上の人。公爵様で、皇帝陛下にも頼りにされてて、強くて、顔も良くて、仕事も出来て、お金持ちでーーー長所を上げ出したらキリが無い。
「何で、ルエルお姉様なんかっっ!」
絶対に私の方が可愛いのに!お父様も!ルエルお姉様の肩を持つなんて!
『俺はルエルと一緒になれるなら、子供が出来なくても構わない。ルエルが側にいてくれれば、それで良い』
メトがエレノアに言った台詞は、エレノアには信じられないものばかりだった。
「私がハズレ嫁なワケ無い!絶対に有り得ないーー!ルエルお姉様より、私の方が劣ってるワケないんだから!」
ルエルお姉様に子供は出来ない。
今はルーフェス様が子供を望んでいないとしても、いずれ自分の子供が欲しくなった時、ルエルお姉様は確実に捨てられるの!だって男の人は、自分の優秀な子孫を残したいはずだもの!自分の跡を継がせたいハズだもの!!
「……ルーフェス様は、確か、自分の甥を、跡継ぎにしたいのよねーー」
社交界で聞いた事がある噂。
「甥がいるから、自分の子供を望まないのね」
エレノアはニヤリと、不気味に微笑んだーーー。
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