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11話 貴族の義務
しおりを挟む「私……リーゼ様が助けに来てくれて、本当に嬉しかったんです。リーゼ様、今更こんなお願いをするのは図々しいかもしれませんが、私と……お友達になって下さいませんか?」
「嬉しい! こちらこそ、喜んで!」
推しのヒロインと友達になれるのは勿論、この世界で初めての友達! 嬉しくないはずがない!
このパーティーが終われば、フェルナンド様と離婚して、グリフィン公爵家からは離れてしまうけど、実家のモンセラット伯爵家から、友人関係は続けられる。
大好きなヒロインの友人のポジションで、ヒロインの活躍と恋の行方を応援出来るなんて、幸せ!
(ティアを守ることが出来たし、パーティーが終わるまで離婚を待って良かったぁ)
なんて、この時までは、幸せな気持ちでいた。
◇◇◇
「お疲れ様でした、リーゼ様」
「ありがとう、アルル」
パーティーが終わり、グリフィン公爵邸に帰ってきた時には、もう夜がふけていた。
すっかり気心知れた侍女のアルルにお世話されながら、寝る支度を進める。
(あ、そう言えば、離婚のことをフェルナンド様に伝えるの忘れてた)
パーティーが終わったらと思っていたけど、帰りの馬車はお父様と一緒だったし、結局、言えずにいる。
(明日……でもいいけど、今日までなぁなぁで離婚を先延ばしにしちゃったし、ここでちゃんと伝えておかないとなぁ)
パーティーで踊るフェルナンド様とティアの姿は、本当に美しくて、もう、二人は想いあっているんだなぁって、しみじみと思った。これ以上は、私の存在が二人の邪魔になる。
(小説でも、パーティーが終わった直後にフェルナンド様はリーゼに離婚を告げてるし、軽くだけでも伝えておこうかな)
「アルル、フェルナンド様のお部屋ってどこ?」
「ああ、旦那様のお部屋に行かれるのですね? かしこまりました、支度致します」
(支度?)
部屋に行くことの何に準備があるのか分からないけど、アルルは慣れたように、その支度とやらを始めた。
綺麗に髪をとかれ、薄く化粧され、良い匂いのするクリームを体中につけられる――旦那様の部屋に行くのに、一々、こんな支度しなきゃいけないものなの?
「リーゼ様が旦那様のお部屋に行かれるのは久しぶりですね」
「そ――うね」
転生前の記憶が無いから全く知らないけど、不審に思われないよう、アルルの言葉に合わせておく。
支度を全て終えると、アルルの誘導で、フェルナンド様の部屋の前まで案内された。
(もう寝てたらどうしよう)
ちょっと行って離婚を伝えて帰るつもりだったのに、何故か念入りに支度されてしまった。
「では失礼します」
「うん、ありがとうアルル」
それなら、明日また伝えればいいか。なんて、軽い気持ちでノックする。
一度、二度、これで出て来なければ、諦めて帰る。そう思っていたら、二度目のノックで、扉が開いた。
「……何の用ですか?」
「夜遅くにごめんなさい、ちょっと話がしたかったんですけど……」
フェルナンド様の髪は微かに濡れていて、入浴を終えて部屋に戻って来たばかりなんだと思った。
「話?」
「迷惑なら明日でも大丈夫ですよ」
「………………」
葛藤してるのが分かる長い沈黙ね。
少しでも早く伝えてあげた方が良いかなって思い立っただけだし、別に無理しなくてもいいんだけど。
「どうぞ」
長い熟考の末、フェルナンド様は私の話を聞くことに決めたようだ。扉を開き、中に入るよう促されたので、私は素直に従い、中に入った。
「お邪魔します」
そこで、フェルナンド様が部屋の鍵を閉めたことに、私は気付きもしなかった。
――――彼氏ナシ=年齢の男性経験ゼロの私でも、夜遅く、男性の、旦那様の部屋に行くことがどういうことなのか、知識として知らなかったわけじゃない。
でも、考えもしなかった。だって、フェルナンド様はリーゼのことを毛嫌いしてたから。
豪華なベッドの上、私の上に覆いかぶさり、見下ろすように見つめる、とても美しい整った顔をしたフェルナンド様。
今この状況が、死ぬほど信じられない。
「あ……の? 何ですか、これ?」
気付いたらフェルナンド様にベッドの上に押し倒されていて、見上げている状態。
「決まっているでしょう?」
「いや、待って下さい! 何で!? どうして、私達がこんなこと――」
「何を言っているんですか? 子供を――跡継ぎを作ることは貴族の義務なんでしょう?」
「義務って……」
頭の中がグルグル回る。
義務? そりゃあ、夫婦なら当たり前のことかもしれないけど、フェルナンド様はリーゼのことが嫌いだし、離婚するつもりだったはずでしょ? なのに何で!?
「借金をたてに何度も関係を迫っておきながら、いまさらですか?」
(リーゼーーーー! 何してくれてんのよ!)
小説では、リーゼとフェルナンド様の夫婦の話はそこまで描かれていなかったけど、夫婦なんだから、そういった行為があっても不思議ではない。ないかもしれないけど!
「あ、でも! 今は借金はなくなったんですよね?」
お父様が今までの謝罪として借金は返さなくていいと伝えていたから、フェルナンド様が意に沿わない行為をする必要はないはず。
「そうですが、貴族として跡継ぎが必要なのは事実なので、仕方ありません」
「仕方ないって……」
そんな風に思われるなんて、嫌。
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