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13話 心境の変化
しおりを挟む小説の中のティアとフェルナンド様は、永遠の愛を誓い、とても幸せそうだった。
そんな二人の幸せを邪魔することなんて、私には出来ない!
(きっと、あの時はフェルナンド様も気が動転されて、離婚を拒んだだけ。あれだけ望んでいた離婚が急に目の前に現れたから、驚いてしまったの、そうに決まってる。じゃないと、私と離婚をしない理由がないもの)
私達が座っているテーブルの前は、フェルナンド様の席だ。転生してから一度だって、フェルナンド様と一緒に食事をしたことはない。
今日ばかりは、どんな顔をして会えばいいのか分からないから、いないことにホッとしてる。
(無理矢理、望まない結婚をさせられてしまった旦那様、離婚しましょう、早く私から解放されて、ティアと幸せになって下さい)
そう、心から思った。
◆◆◆
「離婚を受け入れれば良かったじゃないですか」
グリフィン公爵家の執務室で仕事をしていた俺に向かい、執事のミセスは、どこか飽きれたように言った。
「モンセラット伯爵の不正の証拠を集めて、二度と自分に接触出来ないよう、遠方の訳あり男爵との縁談までご用意したんでしょう? それだけ離婚を望まれていたのですから、離婚する絶好のチャンスじゃありませんか」
ミセスの言うことは最もだ。俺は、何よりもリーゼとの離婚を望んでいた。
土地が汚染され苦しんでいる領地を助けるために、裏があると分かっていながら、リーゼの援助を受け、結婚を要求された。
結婚後も、使用人はもとより、公爵夫人となった立場を鼻にかけ、社交界でも、我儘で傲慢な態度は強くなった。その上、夫なのだから妻である自分をもっと大切にしろ、ちゃんと愛して! と、要求は日に日に強くなるばかりで、辟易していた。
「最近はマシになったようですが、正直、フェルナンド様ならもっと良い結婚相手が見つかると思います。ああ、聖女様はいかがですか?」
「ティアは平民だぞ?」
「爵位くらい、やろうと思えば買えるでしょう。聖女ですし、功績によっては陛下から直接与えられる可能性もあります。国を救う聖女との結婚は、グリフィン公爵家の大きな利益になります」
聖女との結婚の利益は、考えなかったワケじゃない。
何より結婚してしまえば、土地を癒す力を持つ聖女を、ずっとここに留めておくことが出来る。
「リーゼ様に情でも移ったのでしたら、処罰は与えず、円満に離婚すればよろしいのでは?」
「……いや、今のモンセラット伯爵は、俺を手伝い、汚染で苦しんだ土地の援助活動をしている。それがある内は、リーゼには利用価値がある、彼女とは離婚しない」
「……さようでございますか。フェルナンド様がお決めになったことでしたら、反対致しません」
会話を終え、仕事を再開する。
(――離婚するつもりだった。だが、リーゼから離婚を切り出された瞬間、嫌だと思った)
あれだけ離婚したがっていたのに、自分でも意味が分からない。
(どうかしてる)
彼女は変わったと思う。我儘は言わなくなったし、傲慢な態度も取らなくなった。
それに、聖女を庇い、守った。
(彼女は特別酷かったが、貴族の女なんて、皆、似たようなものだと思っていたのに)
気持ちの変化に戸惑いつつ、今はまだ、リーゼには利用価値があるから離婚しない。そう、思うことにした。
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