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紫水晶は輝いている(3)
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キイチくんの声が聞こえてきた。となりの部屋から山口先生を連れてきてくれたようだ。
「ちょっ、え? 何、何があったの?」
山口先生はキイチくんに手を引かれるようにしてやってきた。
「え? は? はぁ? 何、これ……」
理科室に入ったとたん、山口先生は力が抜けたかのようにぼう然と立ちつくす。
「これは、紫水晶ですね」
ヒカルくんは、先ほどわたしたちに説明した内容と同じことを口にした。
「その紫水晶がなんでこんなところに?」
「まぁ、手っ取り早く入手しやすかったから、というところでしょうね」
こんなにしゃべるヒカルくんも珍しい。
「実は、この辺には多くの鉱山があったんです。だいたい、昭和の初期頃までは鉱山でいろいろと発掘されていたようですが。この、紫水晶が採れる鉱山は、火事によって閉山してしまったんです。そのあと、再開しようとしたのですがうまくいかなかったようで。今でもたくさんの紫石英が眠っています」
ヒカルくんがその土地名を口にすると、本当にとなりの市の名前でわたしたちはびっくりしてしまった。
ヒカルくんは石の名前だけでなく、そういった鉱山にも詳しいみたい。
「休みの日には、お父さんと閉山した鉱山めぐりをすることもあるから」
少しだけ照れたように笑っていた。
「だけど。なんで? そんな紫水晶をここにばらまく必要がある?」
先生の疑問はもっともである。
「まぁ、いたずら、と考えるのが無難でしょうね」
リュウジくんが眼鏡を押し上げながら答えた。
「先生。とりあえずこれも写真に撮っておいてください。もしかして、これも教頭先生に報告しなければならない……ですよね?」
そうリュウジくんが尋ねると、山口先生は「うぅ……」と悔しそうにくちびるをかんでいる。
「まぁ、上に報告するのは先生の仕事ですが……。とりあえず、先に教頭先生に報告してきます。現場保存。現状維持。触らないでね」
ピシャリと言い放った山口先生だけど、理科室を出ていくそのうしろ姿はしゅんとしていた。
ピシャン――。
閉じられたとびらの音が静かにひびく。
わたしの心臓はドキドキと激しく鳴っていた。紫水晶で変なモノではないとわかっていても、こんないたずらをされたことが怖い。
「イッチャン、大丈夫?」
コトミちゃんに声をかけられて、はっとする。
「あ、うん……」
「顔色悪いけど……」
「うん。大丈夫……」
そう答えてみたけれど、わたしの心臓は大丈夫ではなかった。とにかく、胸が苦しい。手足の先がしびれてくるような感覚さえある。
「そういえば、なんでヒカルくんって紫水晶が採れる場所を知ってたの?」
コトミちゃんが明るい声で尋ねていた。この雰囲気を変えようとしてくれているのかもしれない。
「父さんと母さんが子どものときには、紫水晶がごろごろとっていたらしい。学校の授業? 課外活動? そんな感じで鉱山にいって、話を聞いて、落ちている紫水晶を持って帰ってきたんだって」
昔はそんな簡単に紫水晶が手に入ったみたい。
「それで、父さんと母さんはちがう小学校だったんだけど。学校交流会をきっかけに文通を始めたみたいで……」
ヒカルくんの両親の馴れ初めまで始まってしまった。
「その手紙に、紫水晶の欠片をいれて送り合っていた」
「へぇ~。なんか、ロマンティックだね?」
コトミちゃんがうっとりとしている。
「そんな話を聞いちゃうと、わたしもあの紫水晶が欲しくなる」
「あそこから取るのはダメだろ? 証拠なんだから。そんなに欲しいなら、父さんに聞いてやるよ」
ヒカルくんが言ったら、コトミちゃんはうれしそうににっこりと笑った。
「でも、あれって何ゴミ? どうやって回収するの?」
そんな現実的なことを口にしたのはキイチくんだ。
「紫水晶は、ゴミではない」
このままではヒカルくんとキイチくんの口論が始まりそうだった。
「あぁ~。みんな、お待たせ~」
明るいような疲れたような声を出しながら山口先生が戻ってきたため、二人はおとなしく口を閉じた。
「ちょっ、え? 何、何があったの?」
山口先生はキイチくんに手を引かれるようにしてやってきた。
「え? は? はぁ? 何、これ……」
理科室に入ったとたん、山口先生は力が抜けたかのようにぼう然と立ちつくす。
「これは、紫水晶ですね」
ヒカルくんは、先ほどわたしたちに説明した内容と同じことを口にした。
「その紫水晶がなんでこんなところに?」
「まぁ、手っ取り早く入手しやすかったから、というところでしょうね」
こんなにしゃべるヒカルくんも珍しい。
「実は、この辺には多くの鉱山があったんです。だいたい、昭和の初期頃までは鉱山でいろいろと発掘されていたようですが。この、紫水晶が採れる鉱山は、火事によって閉山してしまったんです。そのあと、再開しようとしたのですがうまくいかなかったようで。今でもたくさんの紫石英が眠っています」
ヒカルくんがその土地名を口にすると、本当にとなりの市の名前でわたしたちはびっくりしてしまった。
ヒカルくんは石の名前だけでなく、そういった鉱山にも詳しいみたい。
「休みの日には、お父さんと閉山した鉱山めぐりをすることもあるから」
少しだけ照れたように笑っていた。
「だけど。なんで? そんな紫水晶をここにばらまく必要がある?」
先生の疑問はもっともである。
「まぁ、いたずら、と考えるのが無難でしょうね」
リュウジくんが眼鏡を押し上げながら答えた。
「先生。とりあえずこれも写真に撮っておいてください。もしかして、これも教頭先生に報告しなければならない……ですよね?」
そうリュウジくんが尋ねると、山口先生は「うぅ……」と悔しそうにくちびるをかんでいる。
「まぁ、上に報告するのは先生の仕事ですが……。とりあえず、先に教頭先生に報告してきます。現場保存。現状維持。触らないでね」
ピシャリと言い放った山口先生だけど、理科室を出ていくそのうしろ姿はしゅんとしていた。
ピシャン――。
閉じられたとびらの音が静かにひびく。
わたしの心臓はドキドキと激しく鳴っていた。紫水晶で変なモノではないとわかっていても、こんないたずらをされたことが怖い。
「イッチャン、大丈夫?」
コトミちゃんに声をかけられて、はっとする。
「あ、うん……」
「顔色悪いけど……」
「うん。大丈夫……」
そう答えてみたけれど、わたしの心臓は大丈夫ではなかった。とにかく、胸が苦しい。手足の先がしびれてくるような感覚さえある。
「そういえば、なんでヒカルくんって紫水晶が採れる場所を知ってたの?」
コトミちゃんが明るい声で尋ねていた。この雰囲気を変えようとしてくれているのかもしれない。
「父さんと母さんが子どものときには、紫水晶がごろごろとっていたらしい。学校の授業? 課外活動? そんな感じで鉱山にいって、話を聞いて、落ちている紫水晶を持って帰ってきたんだって」
昔はそんな簡単に紫水晶が手に入ったみたい。
「それで、父さんと母さんはちがう小学校だったんだけど。学校交流会をきっかけに文通を始めたみたいで……」
ヒカルくんの両親の馴れ初めまで始まってしまった。
「その手紙に、紫水晶の欠片をいれて送り合っていた」
「へぇ~。なんか、ロマンティックだね?」
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「そんな話を聞いちゃうと、わたしもあの紫水晶が欲しくなる」
「あそこから取るのはダメだろ? 証拠なんだから。そんなに欲しいなら、父さんに聞いてやるよ」
ヒカルくんが言ったら、コトミちゃんはうれしそうににっこりと笑った。
「でも、あれって何ゴミ? どうやって回収するの?」
そんな現実的なことを口にしたのはキイチくんだ。
「紫水晶は、ゴミではない」
このままではヒカルくんとキイチくんの口論が始まりそうだった。
「あぁ~。みんな、お待たせ~」
明るいような疲れたような声を出しながら山口先生が戻ってきたため、二人はおとなしく口を閉じた。
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