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紫水晶は輝いている(4)
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「教頭先生には報告してきました。まあ、今回は紫水晶だった。残虐性はないとのことで、さくっと片づければオッケー」
「つまり。先生が報告書を書けばいいってことですね」
「そうよ。榎木君の言うとおりよ」
すばり言い当てられた山口先生は、不満そう。
「ところで。今日、先生が理科室を最後に確認したのはいつですか?」
リュウジくんの口調が、取調べをする刑事みたい。
「今日は五校時が始まる前に確認したね」
「そのときは?」
「もちろん、何もなかったわよ」
「となると、五校時の間に誰かが紫水晶を机の上にばらまいたことになりますね」
それは今日の授業は五校時で終わりだったからだ。給食を食べて、昼休み。その後に掃除をして、五校時目の授業を受けた。それが終われば帰りの会、そのあと、わたしたちはここに来た。
山口先生は、掃除が終わってから理科室を確認したらしい。もちろん、理科室にも当番で掃除をするから、掃除の時間には何もなかったというのは、掃除を担当した生徒も証言してくれるだろう。
「ホント、こんな短時間の間にやられるとは思ってもいなかったわ……」
そこで山口先生はスマホを取り出すと、この状況を撮り始める。
「じゃ、悪いんだけど。これをこのバケツに入れてもらってもいいかな」
スマートホンをスラックスのポケットにしまう。今日は、しっとりと気温も高いので、山口先生は上着を着ていなかった。
そして、いつの間にか、紫水晶を片づけるための金属製のバケツを二つ、準備していた。
「素手で触ると怪我をするからね。必ず手袋をしてちょうだい」
「先生、片づけた紫水晶はどうするんですか?」
そんなことを聞くのはコトミちゃんしかいない。先ほど、ヒカルくんからも「証拠品だからもらえるはずはない」と言われていたにもかかわらず。
「うん、そうね。澤君の話を聞いた限りでは、多分、例の鉱山の跡地から拾ってきた可能性が高いのよね」
ヒカルくんは力強くうなずく。
「だから、先生のいる研究所に送って、本当にそこの鉱山のものであるかどうかを確認してもらおうかなと思っている」
山口先生の言葉に納得したわたしたちは、せっせと紫水晶をバケツの中に入れ始めた。
紫水晶は、山口先生が言っていた通り、角が鋭いものが多かった。
この紫水晶は『ズリ』と呼ばれる鉱山などで捨てられた土や石に含まれているものらしい。『ズリ』とは採掘したときに出た土、もしくは目的の鉱物の含有量が低いために捨てられた石のことのようだ。ヒカルくんが教えてくれた。
そんな捨てられるような土や石にも、こんなきれいな紫水晶があるのはもったいないなと思った。
「うん。大きなものは、ほとんど取り除けたね。細かいものは先生がハケではきます」
最後に雑巾をかけて、理科室の机は元通りになった。
「先生。バケツ、一個運びますよ」
すかさずヒカルくんが、紫水晶の入ったバケツを一つ、手に取った。
「澤君、ありがとう。じゃ、先生の部屋にまで運んでくれるかな」
「はい」
「ほかのみんなは、いつものように宿題をやってからだよ」
ガチャン、ガチャッ、ガン、と不規則な音を立てながら、山口先生とヒカルくんはバケツを運んでいく。
「イチカ、机、かえたら?」
そうやって心配そうにわたしの顔をのぞき込んできたのは、リュウジくんだった。
「あ、うん。コトちゃんの前の机にする」
「いつもイチカの机が狙われているように見えるけれど、それはたまたまだと思うから。気にしないほうがいい」
そう言ったリュウジくんは、わたしの頭をぽんとなでてくれた。
ちょっとだけ不安に思っていたわたしの気持ちは、たったそれだけで落ち着いた。
「つまり。先生が報告書を書けばいいってことですね」
「そうよ。榎木君の言うとおりよ」
すばり言い当てられた山口先生は、不満そう。
「ところで。今日、先生が理科室を最後に確認したのはいつですか?」
リュウジくんの口調が、取調べをする刑事みたい。
「今日は五校時が始まる前に確認したね」
「そのときは?」
「もちろん、何もなかったわよ」
「となると、五校時の間に誰かが紫水晶を机の上にばらまいたことになりますね」
それは今日の授業は五校時で終わりだったからだ。給食を食べて、昼休み。その後に掃除をして、五校時目の授業を受けた。それが終われば帰りの会、そのあと、わたしたちはここに来た。
山口先生は、掃除が終わってから理科室を確認したらしい。もちろん、理科室にも当番で掃除をするから、掃除の時間には何もなかったというのは、掃除を担当した生徒も証言してくれるだろう。
「ホント、こんな短時間の間にやられるとは思ってもいなかったわ……」
そこで山口先生はスマホを取り出すと、この状況を撮り始める。
「じゃ、悪いんだけど。これをこのバケツに入れてもらってもいいかな」
スマートホンをスラックスのポケットにしまう。今日は、しっとりと気温も高いので、山口先生は上着を着ていなかった。
そして、いつの間にか、紫水晶を片づけるための金属製のバケツを二つ、準備していた。
「素手で触ると怪我をするからね。必ず手袋をしてちょうだい」
「先生、片づけた紫水晶はどうするんですか?」
そんなことを聞くのはコトミちゃんしかいない。先ほど、ヒカルくんからも「証拠品だからもらえるはずはない」と言われていたにもかかわらず。
「うん、そうね。澤君の話を聞いた限りでは、多分、例の鉱山の跡地から拾ってきた可能性が高いのよね」
ヒカルくんは力強くうなずく。
「だから、先生のいる研究所に送って、本当にそこの鉱山のものであるかどうかを確認してもらおうかなと思っている」
山口先生の言葉に納得したわたしたちは、せっせと紫水晶をバケツの中に入れ始めた。
紫水晶は、山口先生が言っていた通り、角が鋭いものが多かった。
この紫水晶は『ズリ』と呼ばれる鉱山などで捨てられた土や石に含まれているものらしい。『ズリ』とは採掘したときに出た土、もしくは目的の鉱物の含有量が低いために捨てられた石のことのようだ。ヒカルくんが教えてくれた。
そんな捨てられるような土や石にも、こんなきれいな紫水晶があるのはもったいないなと思った。
「うん。大きなものは、ほとんど取り除けたね。細かいものは先生がハケではきます」
最後に雑巾をかけて、理科室の机は元通りになった。
「先生。バケツ、一個運びますよ」
すかさずヒカルくんが、紫水晶の入ったバケツを一つ、手に取った。
「澤君、ありがとう。じゃ、先生の部屋にまで運んでくれるかな」
「はい」
「ほかのみんなは、いつものように宿題をやってからだよ」
ガチャン、ガチャッ、ガン、と不規則な音を立てながら、山口先生とヒカルくんはバケツを運んでいく。
「イチカ、机、かえたら?」
そうやって心配そうにわたしの顔をのぞき込んできたのは、リュウジくんだった。
「あ、うん。コトちゃんの前の机にする」
「いつもイチカの机が狙われているように見えるけれど、それはたまたまだと思うから。気にしないほうがいい」
そう言ったリュウジくんは、わたしの頭をぽんとなでてくれた。
ちょっとだけ不安に思っていたわたしの気持ちは、たったそれだけで落ち着いた。
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