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一章

愛の言葉は、決して口にしない ※R18

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一番上の棚には、夜の行為に必要なものが揃っている。
それは潤滑油であったり、軟膏だったり。
結婚した当初はそれらも使われていたが、行為に慣れてきてからは必要とされていなかった。
何をするのだろうと視線で追いかけていれば、彼が取りだしたのはつるりとした木の棒だった。
よく磨かれているようで、棍棒に見える。

「……?それは……」

「うん、僕もね少し考えたんだけど──きみはまだ、性交に慣れていないでしょう?だから、まずは拡張から始めるべきかな、と思って」

一緒に潤滑油が収められた瓶を手に取ると、ロディアス陛下はたらりとそれをてのひらに落とした。
そのぬるついた液体はあまりに卑猥で、それを平然と行う彼を見ていると、なんだかいけないものを目にしている気分になる。
ロディアス陛下はいつもと変わらず、落ち着いた様子で丸みを帯びた棍棒に潤滑油をまとわせた。潤滑油は、性行為の時に使うものだ。
そして、それをまとわせているということは──。

「……!?あ、あのもしかして」

思わず起き上がろうとするのを、肩を押されて止められる。そのまま、また、ころりとベッドに逆戻りだ。
ぎし、と音がする。
ロディアス陛下が私の肩の横に手を突いた。
彼は押し倒した私のことを見ながら、にっこりと笑った。

「力を抜いてね、エレメンデール」

「えっ?や、ァ──……!!」

止める暇も無かった。
にゅるり、となにか異物感がなかに入り込んでくる。ひんやりとしていて、固くて、重たい。
思わず彼の服の裾を掴む。

「やっ……なんで……!こ、これは子を作る行為と……!」

ぐっと奥まで入れられて、びくりと体がはねた。ただの無機物なのに。木を削って作ったに過ぎない道具なのに。
彼に見られている──彼にいれられている、という事実だけでどうしようもなく肌がざわざわした。シーツに顔を押し付けるようにして抗議する。ロディアス陛下は、私を宥めるようにこめかみに口付けを落とした。

「そうなんだけどね。でも、いれるにしてもきみが痛みを覚えていたらだめでしょ?セックスはふたりでするものなんだから。僕のひとりよがりじゃ、だめだ」

「だっ……だいじょっ……や、ぁあ!」

ぐっとそれを押し込まれて、体が跳ねる。
短い嬌声が零れて、痴態を隠せない。

「まだまだきみのここは、慎ましいし……。指を入れる時も少し、ひやひやするんだよね。無理に押し込んだら傷つけてしまいそうだ。だから、今日はこうして、きみの体を行為に慣らすのが目的」

ロディアス陛下が持つ角度を変えたのだろう。

「ッ──!」

角度を変えられ、突かれて、腰が跳ねる。
執拗に何度も擦られて、息を詰めて上り詰めた。
それは、ロディアス陛下のものより小さいように感じたが、それでも私が弱いとするところにはしっかりと届く。
彼は、私以上に私の体を熟知しているのだろう。
奥を突かれ、浅いところを擦られて、ひっきりなしに声が上がった。

「やぁ!ぁッ、ぁあ……!あ、っあ、あ──」

「予想以上だな。いつもそうやって喘いでたの?」

視線を感じる。
快楽が過ぎて、目を開けられないがきっと彼は私を見ているのだろう。
いつものように落ち着いた、静かな瞳で。

──私を観察している。

それに気がついて、ぼっと火を噴くように顔が熱を持つ。思わず、その手を止めるように彼の腕を掴む。

「だめだよ。大人しくしてて」

だけど、囁くようにそう諌められて、その手から力が抜けた。
ロディアス陛下は私の頬に口付け、額に口付け、そのまま首筋を舐めた。
時折、僅かな痛みを感じる。
きっと、吸われているのだ。
傷跡を舐めて癒す獣のようにぺろぺろと舐められて、彼の指先が棍棒を収めた入口を這った。

「や、ぁッ……!?だめ、だめ、です、ロディア…ぁっ、ひ、」

「何がだめなの?こんなに気持ちよさそうなのに」

薄らと目を開けると、涙で滲む視界の中、ロディアス陛下が笑っていた。
苦しくて、悔しい。
こうやって良いようにされて、私は悔しいはずだ。玩具のように弄ばれて、苦しさもある。
だけどそれ以上に──彼に触れられている、という。その手の熱に、歓喜している自分がいる。
それがあまりにも浅ましくて、みだらで、情けなくて。
ころり、と涙がまた零れる。
彼は苦笑して、その涙を舐めとった。
本当に、獣のよう。

「きみはこういう時、よく泣くね」

なかに収めた棍棒が意図を持って動く。
快楽の源を叩かれ、責めるように敏感な尖りを摘まれる。少し、強めに。
私は声を上げることも出来ずに達した。

「ァ、や……っ~~~!」

びくびく、と体が震えるのが抑えられない。
私の上にいる彼も、それには気がついたのだろう。
あまりにも深い絶頂に息を荒くしていると、彼が私の額に口付けた。

「……お疲れ様」

ちゅ、と可愛らしい音が鳴るのに、決して彼は愛を囁いてくれない。

そう、ロディアス陛下は最初から──
私に優しかったけれど、決して、愛の言葉は口にしなかった。

愛している、も。
好きだよ、のその言葉も。
なにひとつ、私はもらったことがない。

どうしてこのタイミングでそれに気がついてしまったのだろう。

彼が私に触れるのはただの義務。
そして、あるのは肉欲だけ。

そこに──愛など、あるはずがないのだ。
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