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龍神の儀式
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「龍神の儀式………でございますか?」
ローズは目を白黒させながら、それでも私の怒りが薄れたことを感じ取ったのだろう。花瓶の中の花を取り換えながら教えてくれた。
「規定通りなら龍神の儀式は聖年2166年………6年後でございますね」
「6年後………?!」
夢の中の私は、16歳だった。
私は今、10歳だ。6年後に龍神の儀式があるというのであれば、辻褄が合う。
(…………あれって、)
あれって、本当に夢だったの………?
ただの、夢………?
嫌な予感がじわじわして来て、私は半ば縋るような、必死の声でローズに聞いた。
「龍神の儀式に女性って必要なの!?」
「は?………えっ。えっと、どういう………?」
「りゅ、龍神の儀式に16の娘が必要と聞いたわ!!贄にするって!本当!?」
信じたくない気持ちでいっぱいになりながら聞く。ローズは持っていた白の蕾かついた花をタオルに丁寧に包むと、少し困ったような顔をした。
「さぁ………。聞いたことがありませんわ。そもそも龍神の儀式と言ってもここ数十年はただのお祭りの日になりつつありますし………。儀式を取り仕切るのは当然王族の方ですけれど、今どきそんな古風的な文化、ないと思いますわ」
「そう……………よ、ね」
「お気になるのでしたらご婚約者様にお伺いになられたらいかがですか?来週お茶会の約束でしたでしょう?」
「らい、しゅう………」
私はそこでふと、思い出した。そうだ、来週のお茶会。そこでレイと会うのだ。レイに会える。それはいつもだったら凄く嬉しいはずなのに、夢の影響で私はただ恐ろしくなってしまった。夢の中のレイはとてつもなく冷たい顔をしていた。まるでゴミを見るような、嫌悪しきった目。一秒でも早くその場から離れたいと彼の瞳が告げていた。
(また、あんな目で見られたら………)
「セシリア様?」
「………私、蔵書室に行ってきます!」
「セシリア様!まだ朝のご準備がーーー」
そこでふと、私はベッドをおりた自分を見た。裸足だし、白のネグリジェのままだし、髪だってゴワゴワだ。昨日乾かさないで寝たのだから当然といえば当然なのだが、寝癖も凄まじい。
そして、夢の中の自分を思い出す。
そういえば、夢の中の自分は豚足のような足をしていた。手も饅頭のようだった。お腹はまるで樽のようで、そのくせ露出の多い服を着ていたように思う。しかも夢の中の私はそれを『少しぽっちゃり』している程度だと判断していた。空恐ろしくなった。
今の私はどうだろうか。子供ながらややぽっちゃりとしているように見える。だけど今の私の体重は夢の中の私よりも断然軽い。無論、夢の中の私は、今よりも身長が高かったけれど、それ以上に体重の増幅も激しかった。
ちらりと花瓶周りを拭いているローズを見る。すっきりした輪郭に、ほっそりとした腰のライン。華はないが醜くもない。元々の顔立ちが薄いのか、頼りない雰囲気があるが、それでも超え太ったデブよりは余程マシだ。
私はじっとローズを見た。薄い茶髪を後ろでひとつに結んだローズは私の視線に気づくと困ったように笑った。
「セシリア様?いかがなさいますか」
「…………まずは、朝ごはんにするわ。蔵書室に行くのはその後にする」
言うと、セシリアはやはり目を見開いた。
私が言うことを聞くと思わなかったのだろう。私の世界では、私が一番偉い。今までずっとそう思っていた。
命令されるのも嫌いだし、言うことを聞くのも嫌いだった。
今回も私は言う事を聞かず蔵書室に行くのだと思ったのだろう。衝動性とそれに伴う無計画さは自覚がある。私は苦々しい気持ちになりながらぷいっと視線を背けた。
「………朝ごはん、持ってきて」
言ってから、はっとする。
いや、持ってきてもらうんじゃなくて取りに行った方がいい。それなら多少は運動になる。私の鼓膜には、夢の中で聞いた暗い暗い、低い声の「醜悪だ」という言葉が離れなかった。
「やっぱり、自分でいくわ」
ローズは目を白黒させながら、それでも私の怒りが薄れたことを感じ取ったのだろう。花瓶の中の花を取り換えながら教えてくれた。
「規定通りなら龍神の儀式は聖年2166年………6年後でございますね」
「6年後………?!」
夢の中の私は、16歳だった。
私は今、10歳だ。6年後に龍神の儀式があるというのであれば、辻褄が合う。
(…………あれって、)
あれって、本当に夢だったの………?
ただの、夢………?
嫌な予感がじわじわして来て、私は半ば縋るような、必死の声でローズに聞いた。
「龍神の儀式に女性って必要なの!?」
「は?………えっ。えっと、どういう………?」
「りゅ、龍神の儀式に16の娘が必要と聞いたわ!!贄にするって!本当!?」
信じたくない気持ちでいっぱいになりながら聞く。ローズは持っていた白の蕾かついた花をタオルに丁寧に包むと、少し困ったような顔をした。
「さぁ………。聞いたことがありませんわ。そもそも龍神の儀式と言ってもここ数十年はただのお祭りの日になりつつありますし………。儀式を取り仕切るのは当然王族の方ですけれど、今どきそんな古風的な文化、ないと思いますわ」
「そう……………よ、ね」
「お気になるのでしたらご婚約者様にお伺いになられたらいかがですか?来週お茶会の約束でしたでしょう?」
「らい、しゅう………」
私はそこでふと、思い出した。そうだ、来週のお茶会。そこでレイと会うのだ。レイに会える。それはいつもだったら凄く嬉しいはずなのに、夢の影響で私はただ恐ろしくなってしまった。夢の中のレイはとてつもなく冷たい顔をしていた。まるでゴミを見るような、嫌悪しきった目。一秒でも早くその場から離れたいと彼の瞳が告げていた。
(また、あんな目で見られたら………)
「セシリア様?」
「………私、蔵書室に行ってきます!」
「セシリア様!まだ朝のご準備がーーー」
そこでふと、私はベッドをおりた自分を見た。裸足だし、白のネグリジェのままだし、髪だってゴワゴワだ。昨日乾かさないで寝たのだから当然といえば当然なのだが、寝癖も凄まじい。
そして、夢の中の自分を思い出す。
そういえば、夢の中の自分は豚足のような足をしていた。手も饅頭のようだった。お腹はまるで樽のようで、そのくせ露出の多い服を着ていたように思う。しかも夢の中の私はそれを『少しぽっちゃり』している程度だと判断していた。空恐ろしくなった。
今の私はどうだろうか。子供ながらややぽっちゃりとしているように見える。だけど今の私の体重は夢の中の私よりも断然軽い。無論、夢の中の私は、今よりも身長が高かったけれど、それ以上に体重の増幅も激しかった。
ちらりと花瓶周りを拭いているローズを見る。すっきりした輪郭に、ほっそりとした腰のライン。華はないが醜くもない。元々の顔立ちが薄いのか、頼りない雰囲気があるが、それでも超え太ったデブよりは余程マシだ。
私はじっとローズを見た。薄い茶髪を後ろでひとつに結んだローズは私の視線に気づくと困ったように笑った。
「セシリア様?いかがなさいますか」
「…………まずは、朝ごはんにするわ。蔵書室に行くのはその後にする」
言うと、セシリアはやはり目を見開いた。
私が言うことを聞くと思わなかったのだろう。私の世界では、私が一番偉い。今までずっとそう思っていた。
命令されるのも嫌いだし、言うことを聞くのも嫌いだった。
今回も私は言う事を聞かず蔵書室に行くのだと思ったのだろう。衝動性とそれに伴う無計画さは自覚がある。私は苦々しい気持ちになりながらぷいっと視線を背けた。
「………朝ごはん、持ってきて」
言ってから、はっとする。
いや、持ってきてもらうんじゃなくて取りに行った方がいい。それなら多少は運動になる。私の鼓膜には、夢の中で聞いた暗い暗い、低い声の「醜悪だ」という言葉が離れなかった。
「やっぱり、自分でいくわ」
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