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2章
にじゅーに。。
しおりを挟む霊力の受け渡しができるなんて聞いたことない。
だけど多分、それって相手の霊力が高くないと無理なんじゃないかな。
少なくとも少年では無理だと思う。
少年は霊力なさそうだから。
「無理だと思います」
答えると少年は泣きそうな顔をした。
申し訳ないけど少年の霊力はどれだけかき集めても塵ほどだと思う。
少年はそのまま続けた。
「で、でも。その、方法があるって」
少年でも渡せる方法があるのか。
私は少し気になって聞いた。
「あるんですか?」
「………性行為をすると受け渡しできるって本当?」
なんだその本は。
少年が見たのは不埒な本に違いない。
ちらりと少年を見る。
少年の顔は真っ赤だった。
あ。
会話に気が向いていて気が付かなかったけれど困ったわ。
ここも先客が結構いる。
女性が多いみたいだけど、地縛霊のようだ。
「困りましたね」
「べっ別に僕がするわけじゃ!」
当たり前だ。
少年は霊力がないのだから祓えるはずがない。
神楽鈴は先程取られてしまったけれど、いつでも呼び出せる。
便利な能力だ。少し霊力使うけど。
でも手首が自由でなければどうしようもない。
縄抜けなら出来るが鉄鎖は外せない。
壁にぶつけてたら壊れないかな。
そう思っていたら、少年がふと、私の手首に視線を落とした。
「それ、外そう」
「外せるのですか?」
「うん。多分これ知恵の輪になってるから」
知恵の輪なんだ。
それをひと目で見抜く少年もすごいが、あの短時間で知恵の輪を嵌めた男もすごい。
少なくとも私には外せない。だけど少年も縛られている。
どうするのだろう。
そう思っていたら、少年はもぞもぞ手を動かしたかと思ったら、縄を抜いた。
縄抜けしたらしい。
「万が一に備えて、縄抜けは出来るんだ。すごいだろ」
自慢げにいってきたので「いつ縛られても大丈夫ですね」と答えたら微妙な顔をされた。思春期の男の子は難しい。
少年はそのまま私の手首の鉄鎖を外してくれた。早い。すぐだった。
「これで手は自由になったけど、どうする?」
縛られていた手が少し痺れている。手首を擦りながら私は地縛霊を見た。
因縁が深そうだ。
祓うにも時間がかかる気がする。
困ったな。
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