New Life

basi

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第八話

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 さて、本日の予定はエルファが言っていた、魔法を使えるようにならなければ魔法防御が紙装甲、というやつ。

 初期段階で魔法使う敵がいるのかどうか謎だけど、どうせ必要なら初期に取得しておいたほうが後々便利だろう。

 と、思い立って再び街のNPCに声をかけた。

「すいません。ちょっと聞きたいのですが……」

 たらい回しにされました。

 六人目と話をしたときにようやく城の訓練所前の兵士に聞けという情報を得ることができた。

 途中でエルファに聞けばすぐ解決するんじゃ? と思ったのは内緒。怖いし。



 そんなこんなで城に来た。堀に囲まれた城はゲームなどで見る洋風の城だ。あ、これゲームだった。

 堀にかられた橋の先にある門がやたらとでかい。門扉は開いていて意外と人が出入りしている。結構自由なのか?

 近づくと門の横の兵士に声をかけられた。

「初めて見る方ですね。御用はなんでしょう」

 え、この人達ってここに来る人の顔を覚えてるのか? すげぇな。

「あの、城の訓練所に行くと魔法を教えてくれると聞いたので」

「おや、珍しいですね。あ、いや失礼。では訓練所まで案内しましょう」

 そう言って兵士は門の横の詰所の扉へ入り、別の兵士を呼んできた。どうやら女性の様だ。

「この者について行ってください」

「ありがとうございます」

 案内の兵士さんは軽く会釈をすると近づいてきた。って、結構近いんですが。もう一歩近づくとくっつくんですけど。案内してくれるんじゃないの?

「これを付けますので」

 あ、入城証か何かですか。案内の兵士さんは何やら紋様の書かれた紙を持っている。

「手を。リラックスしてくださいね」

 言われて手を差し出すと、手の甲に紙を乗せた。どうなるのか見ていると紙が光り出し、光りが消えると手の甲に紙に書かれていたのと同じ紋様が写っていた。

「おお!?」

「これで次からはそのまま門を通れます。と言っても第一門だけですが。何かの犯罪を犯すと色が変わりますので通れませんが」

 なるほど。顔を覚えていた訳じゃなくてこの入場許可紋? みたいので判断してたのか。便利なものだ。

「行先が分からない時などはまた私共に声をかけてください。それでは行きましょう」

 身を翻すと結構な速度でスタスタと歩く兵士さん。慌ててついて行った。



 ついて歩きながら周りを観察していると、なるほど。第一門の中はちょっとした役所の様なものらしい。幾つか受付の様なものの前に何人か並んでいるようだ。

 きょろきょろしているとどうやら着いたみたいだ。

「こちらが魔法訓練所です」

 そう言って兵士さんは扉を開けた。

「では私はこれで」

「あ、ありがとうございます」

 さっと戻る兵士さんに声をかけて中に入った。



 中には誰もいなかった。どうしようかと思っているとすぐに二人の人が中へ入ってきた。結構若い二十代半ばくらいの女性と腰に手をやった爺さんだ。

「私が魔法の基礎教官、ベリーです」

「ワシが気功術の教官、ロウという」

 ? ? ? 何故に?

「えと、ユルと言います。あの、魔法を使いたいんですが」

 気功なんてものあるとは知らなかったので教えて欲しいとは思うものの、とりあえず魔法を教わりに来たのだから先にそっちを済ませたい。

「ふむ、まず基本から教えようかの」

 ロウが意味ありげに、ふぉっふぉっふぉっと笑う。普通にそんな笑い方をする奴にお目にかかれるとは思ってもみなかったが、なんだか馬鹿にされた気分になる。

「まあ、知らんのも無理はない。気功術は今となっては使い手がほとんどおらんからな」

 そうなのか。俺としたら魔法と同じくらい憧れるんだけど。

「ユル君だったかしら? 一般的には知られていないけど実は魔法と気功は同じ『エーテル』という物を使うの。エーテルは私たちの中にあるエネルギー。別の言い方をすれば生命力とかかしら?」

 驚きの事実。なら気功術の使い手がいない理由は?

「生命力とはいっても使うのは『生命』そのものではなく、生命に必要なエネルギーの余剰分じゃよ。じゃが扱いに慣れないものが大きな力を使おうとしたり、魔法や気功を酷使して無理をすると生命力そのものを使用することになり、寿命を縮め、最悪は生命を落とすことになる。このことを忘れてはならん」

 俺の疑問は置いてきぼりで話を進める二人。ただ、なんとなくのイメージは出来た。今まで知らなかったのに『魔力を感じるのよ』と言われるより『自分の元気パワーが重要』とか言われる方がイメージしやすい。そして、



《アビリティ《エーテル概念》《エーテル》取得。これにより一定期間エーテルのバーが表示されます》



 二人の話が終わると同時にシステムアナウンスがなった。《エーテル概念》? 《エーテル》はさっきの話にも出てきたし、システムの通りHPバーの下にEPと表示されたバーが出てきたからわかる。《エーテル概念》ってなんだ?

 アビリティの説明を見ると、

『エーテル概念:エーテルに関する基礎知識。知力成長率、基礎エーテル値、エーテル濃度の上昇。エーテル強度の上昇』

 とある。つまりEPを使う量を増やしたければ勉強しろってこと? あれ? だとすると《エーテル》の方はどういった効果なんだ?



『エーテル:EP。エーテル使用速度、エーテルコントロール、エーテル濃度、基本エーテル値の上昇。消費エーテル量の減少。エーテルの濃度と強度が上昇すると比例してステータスの上昇効果』



 てことは、エーテルに関する知識と熟練度が別アビリティになるのか。ぬぁ~めんどくさ。もしかして他にも一つの事柄で複数アビリティを成長させる物が出てくるのか? 

 エルファがアビリティ絞ったほうがいいってのはこういうことなのかな。

「……ユル君? 聴いてるかしら」

「! はい、聞いてます」

 やべ、ベリーの声が少し怖かった。

「……まぁいいわ。続けるわよ。同じエーテルを使うのに魔法と気功とで別れるのは、エーテルそのものとして使うのか、それともエーテルを魔素に変換して精霊をコントロールして様々な現象を引き起こす、あるいは変換させた魔素で大気中の魔素そのものを操作するのか、その違いよ」

「気功で分かり易いのは身体強化かの? これを使用するのは『内気功』と呼ばれる。これは体の中で気を操作し、身体能力を上げるのじゃ。先も言ったようにエーテルは生命力じゃ。心身をエーテルで満たせば身体は丈夫になる。もちろん怪我の治療にも使えるわい」

 ふむ。大体俺の知っている気功術っぽい。そして続けるベリーが俺の疑問にやっと手を付けてくれた。

「気功術の使い手が減ったのはその違いよ。魔法は多くのことが出来るわ。使い手による各属性の得手不得手は有ってもある程度は万能よ」

「しかし、気功術は出来ることが限られる。しかも自身のエーテル強度が気功術の強弱にもかかわるからの。怪我の治療も自己回復の強化じゃしの。魔法は精霊が満足する量の魔素を与えるか、与える魔素も精霊によって変わるが、相性が良ければ少ない量でも問題ない。魔素の操作も大気の魔素をいかに操作するかに依る。自身のエーテル強度に依存する気功術とは大違いじゃ」

 確かにそうかもしれない。気功と言えば肉体依存のイメージがある。その反面、魔法は色々できそうな印象だ。

「じゃが、気功術はエーテルの強度が強ければどんな魔法にも負けはせん」

「そうなのよね。エーテル強度の強い気功術師は魔法にもよるけど、いくらか魔法を無効化するわ。それに魔法が効かない相手にも気功術なら効くのよ」

「え、そうなんですか?」

 マジか。気功術最強じゃね?

「これはエーテルが魔素よりも上位じゃからじゃ。魔素が集まって濃度が上がるとエーテルと呼ばれる。自然に発生したエーテルが精霊となるんじゃよ。さて、エーテルから分けた魔素を使って様々な現象を起こして攻撃する。それをエーテル自体で防ぐと、どっちが勝つか。これはわかるな? 気功術師が魔法を無効化する原理はこれじゃ」

「もちろん魔法に使う魔素を増やして濃くすれば突破できるけど効率は悪い。とは言ってもそんなことが出来る気功術師は熟練した者だけ。そこまでの道のりは決して楽じゃないはずよ。でも魔法ならそこまで苦労はしないし組み合わせも多い。そこまで熟練してなくても高威力で無効化しにくい魔法もあるわ。これが気功術、エーテルが一般的ではない理由よ」

 なるほど。なんとなく納得。俺も気功術は仙人ってイメージだ。そこまでの道のりは長いって気がする。

「軍でも気功術師はロウとその弟子の一人だけだし、一般にはほとんどいないんじゃないかしら」

「じゃのぅ。儂が気功術を習得するころにはほぼ廃れた技術じゃった。そのころにはもうエーテルは魔力と言われてエーテルを魔素へ変換してそれを蓄えることを基本に、変換効率や速度を鍛えて魔法を使うことを教えておったよ。広めようと道場を作った時期もあったが結局みな魔法を選んだ。道場に来たのも今の弟子だけじゃ」

 そういうロウの顔は寂しそうだ。

「軍なんて即戦力が欲しいものよ。時間をかけて鍛えるよりお手軽な方法があるならそっちを選ぶわ。さあ、昔話はそれくらいにして次に行きましょう」

 ベリーが手を叩きながら空気を換えるように言う。ロウも頷いて促がした。



「さっきも言ったけど気功術とは違って魔法は様々なことが出来るわ。使用者のイメージと自身の能力次第でね」

「イメージ……ですか? 詠唱とかじゃなく?」

 よくゲームとか小説とかであるし、てっきり呪文の暗記とかなのかと思っていた。

「詠唱と呼ばれるものはイメージの補足よ。様々な現象を正確にイメージ出来るのなら問題ないわ。精霊を使う時もエーテルにイメージを乗せながら魔素に変換して彼等に伝えるの。詠唱はその手助けよ。エーテルを魔素に変換する手助けもしてくれる。」

「まぁなんにせよエーテルの使いこなしを覚えねばな」

 そうして魔法と気功を使用するためのエーテル訓練が始まった。
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