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第一章・救国の王女
13.十二歳になりました。
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晴天の下、剣が風を斬る音が聞こえてくる。失敗に対して厳しい叱責が聞こえてくる。
よく晴れた、なんて事ない昼下がりだ。
体の中を魔力が巡るのを感じる。手のひらに魔力を集め、それを魔法という形で具現化する。私の手には水で出来た弓が握られ、限界まで矢が引かれている。
「穿て! 水圧砲!!」
前方の巨大な岩目掛けて矢が放たれる。それは異常なまでの水圧と加速をもって岩を穿つ。
この六年で学び応用をきかせた魔法、それが水圧砲だ。……ネーミングセンスの無さには突っ込まないで欲しい。これでも一番マシな案を選んだんだ。
汗をよく吸う白いシャツにズボン姿。邪魔になるからとまとめられた銀色のポニーテール。おおよそ一国の王女らしくはない装いで、私は更に「よしっ」とガッツポーズをする。
「この岩も貫けるとなると、普通の家屋や騎士の鎧ぐらいなら多分撃ち抜けるんじゃないかなぁ。流石はボクの教え子だ」
「ふふっ、シルフ先生の教え方が凄く上手だからだよ」
猫シルフがぺしぺしと私が壊した岩を触り、消滅させながら声を弾ませる。魔法の特訓が座学から実技に移った頃合から、シルフはいつもああやって簡単な的や敵を作って実践形式で教鞭を取ってくれている。
それが六年も続けば…私とて多少は成長する訳でして。昔は魔法に憧れるだけの子供だった私が、今や魔導師の末端に名を連ねても怒られないぐらいには成長出来たと思う。
──そう、アミレスになった時からはや六年が経過した。私も今や十二歳となり、剣に魔法に勉学に作法にと多方面でそこそこ優秀な成績を納めている。
六年間私はシルフから魔法を学び、シルフが連れて来てくれた赤髪の火の精霊のエンヴィーさんに剣と体術を習い、ハイラさんから礼儀作法に勉学を教わった。…ハイラさんはそれはもうはちゃめちゃに優秀な人で、本来侍女が持つはずのない技術や知識を沢山お持ちでいらした。
そうやって、とにかく努力ばかりの日々を重ねた私は……十二歳の少女にしては背が高く、手足もしっかりとしていて、怖いもの知らずと皇宮の侍女達に恐れられる事となった。
それもその筈。だって私、露骨にフリードルを避けているんだもの。
本当にどうしても関わらないといけない時は貼り付けた笑顔で何とかやり過ごしているけれど、それ以外であの男に関わるなんて面倒だ。だから逃げ回っている。
そしてなんと、この六年のうちに私には新たな友達も出来たのだ。
「…本当にお前の魔法は凄いな。オレはまだそこまで正確に操れないから、心より尊敬する」
アップバンクの金髪に翠色の瞳のイケメンが、剣を鞘に収めながら褒めて来る。
彼は私より二つ歳上のマクベスタ・オセロマイト。フォーロイト帝国の隣国でもあるオセロマイト王国の第二王子で、現在親善の為にこちらに滞在中の──二作目の攻略対象だ。
正直、最初は特に関わるつもりも無かったのだけれど……一年前に彼が誰もいない所で一人で素振りしているのを見て、つい、一緒にどう? と誘ってしまったのだ。
元々フリードルと剣の稽古をするつもりだったらしいのだが、フリードルが『しばらくの間稽古はしない予定だ』とか冷たい事を言って友好国の王子を放置していたらしい。
フリードルが自分から放ったらかしにしたんだから、じゃあ私が貰ってもいいよね! という事で誘い、現在に至ると。
勿論その頃には私はエンヴィーさんから剣を教わっていたので、エンヴィーさんとシルフに頼んで一緒にマクベスタの事も見て貰える運びになったのだ。
マクベスタはゲームにてフリードルにも引けを取らない剣術で活躍する。そこにもし、魔法という要素が加われば…きっとフリードルよりも強くなる事だろう。
もしもの時、昔一緒に特訓したよしみで逃亡の手助けをしてくれたらいいなっ、ぐらいの気持ちでエンヴィーさん達による指導を受ける事を彼にお勧めした。
…うーん、我ながら下心しかないな。
「大丈夫よ、貴方は剣も魔法も一流の剣士になれるわ。私が保証する」
ゲームでの貴方はずっと一人で努力をして、その末に一流の剣士になっていたんだもの。師匠を得た今のマクベスタならきっとゲーム以上の剣士になる筈だ。
私はマクベスタと話す時大体この言葉を口にするのだが…マクベスタとて流石に聞き飽きたのか、
「ありがとう、その期待に応えられるよう努めよう」
これと似たような返事ばかりするのだ。…それも、何故か毎回困ったような顔で。
そうやって二人で話しているとエンヴィーさんがマクベスタの顔にタオルを投げつけて…。
「それならお前は魔法の特訓を増やすべきだぜ、マクベスタ。剣の腕前なら既にいい線行ってんだ、若い内に魔法に慣れといた方が後が楽だと思うぞ?」
汗を拭うマクベスタに向けて、エンヴィーさんがそうやって助言する。エンヴィーさんの言う通り、マクベスタは既に十四歳とは思えない程の剣の実力を持つ。
元々マクベスタには天賦の才があって、それをエンヴィーさんという、精霊界でも一二を争う剣の腕前をお持ちだという方が師匠としてその才を伸ばしたのだ。
そりゃあ、相当な実力となるに決まっている。
そして魔法に関してだが、魔法は魔力があれば誰でも使えるのだが……魔法を武器に戦うのなら幼い頃から魔法を使い、慣れておいた方がいいのだとか。
魔力が一気に無くなる感覚に慣れる必要があるし、魔力の精密な操作は感受性の高い子供の方が得意とまで言われている。その為この世界では、魔法を扱う職につきたい者は幼い頃から魔法に慣れておく必要があるとされているのだ。
私はそもそもが魔導師志望なので、勿論六歳の頃から魔法に触れて来たが…マクベスタの魔力が亜種属性の中でも規模が大きい魔法である事と、剣を振る事が好きだったという事が重なり、あまり魔法を扱って来なかったのだとか。
まぁ、確かに魔法に満ちた世界だとは言えども魔法をあまり使わない人は一定数いる。魔力量が少なかったり、普段使いの難しい魔法だったり、理由は様々だ。
マクベスタのその内の一人だったというだけの話だ。……しかし、私としては彼にも是非魔法を扱えるようになって欲しいと思っている。
だって、彼の魔力は……。
「そうよ、マクベスタ。雷属性なんて亜種属性の中でもかなり珍しい魔力じゃない! 剣を帯電させて戦ったりしたら、その剣に何かが触れた瞬間敵は一気に感電してしまいには………もう最強じゃないかしら? 私が雷属性だったら絶対やってたわ」
興奮気味にまくし立てる私にマクベスタは眉尻を下げて、
「お前は本当に魔法が好きだな。雷なんてもの、普通の淑女なら怯えて当然なのに…お前だけだ。嬉々として雷を落とせだの剣に纏わせろだの言い出すのは」
何処か楽しそうに微笑んだ。……ゲームの時よりも若いからかもしれないのだけれど、このマクベスタ、たまにだけど普通に笑うのよね。ゲームでは全然笑わなかったのに。
真面目で無愛想な純粋男子…それがマクベスタなのだけれど、無愛想では無いのよね。
「きゃーっ、怖いー! って言った方がいいなら言うけれど。淑女の悲鳴、欲しい?」
「要らん。それにお前がそんな風に叫んでいる様子は想像がつかない」
マクベスタは顔の前で手を左右に振り、私の悲鳴を受け取り拒否した。更に何ともまぁ失礼な事を言ってきたものだ。
まぁ、事実だけれど。何と言いますか…きゃあああっ! なんて悲鳴は出ないのよね。咄嗟に出てもうわっ、とかえっ、とかで。
女の子らしい悲鳴が出せないんですよ……ごめんよアミレス…どんどん淑女らしさからかけ離れていっているわ。
「まぁ確かに、私は女の子らしさとはかけ離れているものね。普通の女の子は手にマメを作る事もないでしょうし…」
自分の手のひらを見つめながら呟く。幾つかマメが出来ていて、少し固くなっている。いつも外で特訓していた影響で肌も少し焼けている。
毎日欠かさず筋トレと素振りをしているからか、私の腕は普通の令嬢に比べてゴツイ…………という訳でも無い。そりゃあ、少しはがっしりとしているのだけれど…元々アミレスが筋肉がつきにくいタイプだったようで、目に見えた筋肉はついてくれなかった。
筋肉王女を目指している訳ではないから、別にいいんだけどね。
肌が焼けていると言っても、当社比だから世間一般的にはまだまだ全然色白の部類だ。これはハイラさんが毎日丁寧に肌のケアをしてくれているからだろう。
それでもやはり深窓の令嬢とかと比べると粗野な感じに見えてしまうらしく、社交界にて今や私は『野蛮王女』と呼ばれているらしい。…社交界に出た事なんて無いのにね。
何せ皇帝に社交界に出るな、恥を晒すなって命令されてますから。
じゃあ何でそんな噂を知ってるかって? 侍女達が話しているのを盗み聞いたからです。
「ボクはそんなアミィが好きだよ」
私を慰めようと、猫シルフが肩に飛び乗って来ては肉球で頬を撫でてくれる。
ありがとうと言いながら猫シルフの頭を撫でているとエンヴィーさんが、
「姫さんのそーゆー所、俺等みたいな戦う事しか考えてねぇ奴からすりゃ超魅力的なんすから、自分の魅力をもうちょっと自覚した方がいいっすよ?」
歯を見せて笑いながら、頭をぐしゃぐしゃと掻き乱してきた。既に特訓の影響で髪は散々乱れているし、頭をぐしゃぐしゃにされた事は構わな……笑顔が眩しいなぁおい。
エンヴィーさんは何だか、距離感が近所のお兄ちゃんって感じで…お陰様で私もかなり懐いてしまった自覚がある。
「ほら、マクベスタも何か言え」
「えっ………まぁ、何だ、お前が自分らしいと思える生き方を出来るのなら、それでいいとオレは思う。周りの声なんて気にしなくていいさ」
エンヴィーさんに突然話を振られたマクベスタは、ぎこちない笑みで伝えてくれた。マクベスタはそもそも人付き合いが苦手だと言っていた。それでも何とか、話の流れを乱さぬように言葉を捻り出してくれたんだろう。
「そうね。ありがとう、マクベスタ」
笑ってお礼を告げるとマクベスタは照れ臭そうにそっぽを向いてしまった。その耳は少し赤く染まっていて、彼が本当に照れているのだと分かった。
そんなマクベスタに、エンヴィーさんがニヤリと笑いながら、
「なぁに照れてんだァ青少年。若いねぇ、いいねぇこういうの。俺の知り合いが見たら飛び跳ねて喜びそうだ」
と肩に腕を回して絡み始めた。マクベスタはそれを鬱陶しそうに離れさせようとするが、相手は精霊さんなのでビクともせず…その後もしばらくエンヴィーさんに絡まれ続けたマクベスタは、心無しか少しぐったりしていた。
どうやら、彼にとっては特訓よりもエンヴィーさんのだる絡みの方がキツかったらしい。
よく晴れた、なんて事ない昼下がりだ。
体の中を魔力が巡るのを感じる。手のひらに魔力を集め、それを魔法という形で具現化する。私の手には水で出来た弓が握られ、限界まで矢が引かれている。
「穿て! 水圧砲!!」
前方の巨大な岩目掛けて矢が放たれる。それは異常なまでの水圧と加速をもって岩を穿つ。
この六年で学び応用をきかせた魔法、それが水圧砲だ。……ネーミングセンスの無さには突っ込まないで欲しい。これでも一番マシな案を選んだんだ。
汗をよく吸う白いシャツにズボン姿。邪魔になるからとまとめられた銀色のポニーテール。おおよそ一国の王女らしくはない装いで、私は更に「よしっ」とガッツポーズをする。
「この岩も貫けるとなると、普通の家屋や騎士の鎧ぐらいなら多分撃ち抜けるんじゃないかなぁ。流石はボクの教え子だ」
「ふふっ、シルフ先生の教え方が凄く上手だからだよ」
猫シルフがぺしぺしと私が壊した岩を触り、消滅させながら声を弾ませる。魔法の特訓が座学から実技に移った頃合から、シルフはいつもああやって簡単な的や敵を作って実践形式で教鞭を取ってくれている。
それが六年も続けば…私とて多少は成長する訳でして。昔は魔法に憧れるだけの子供だった私が、今や魔導師の末端に名を連ねても怒られないぐらいには成長出来たと思う。
──そう、アミレスになった時からはや六年が経過した。私も今や十二歳となり、剣に魔法に勉学に作法にと多方面でそこそこ優秀な成績を納めている。
六年間私はシルフから魔法を学び、シルフが連れて来てくれた赤髪の火の精霊のエンヴィーさんに剣と体術を習い、ハイラさんから礼儀作法に勉学を教わった。…ハイラさんはそれはもうはちゃめちゃに優秀な人で、本来侍女が持つはずのない技術や知識を沢山お持ちでいらした。
そうやって、とにかく努力ばかりの日々を重ねた私は……十二歳の少女にしては背が高く、手足もしっかりとしていて、怖いもの知らずと皇宮の侍女達に恐れられる事となった。
それもその筈。だって私、露骨にフリードルを避けているんだもの。
本当にどうしても関わらないといけない時は貼り付けた笑顔で何とかやり過ごしているけれど、それ以外であの男に関わるなんて面倒だ。だから逃げ回っている。
そしてなんと、この六年のうちに私には新たな友達も出来たのだ。
「…本当にお前の魔法は凄いな。オレはまだそこまで正確に操れないから、心より尊敬する」
アップバンクの金髪に翠色の瞳のイケメンが、剣を鞘に収めながら褒めて来る。
彼は私より二つ歳上のマクベスタ・オセロマイト。フォーロイト帝国の隣国でもあるオセロマイト王国の第二王子で、現在親善の為にこちらに滞在中の──二作目の攻略対象だ。
正直、最初は特に関わるつもりも無かったのだけれど……一年前に彼が誰もいない所で一人で素振りしているのを見て、つい、一緒にどう? と誘ってしまったのだ。
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フリードルが自分から放ったらかしにしたんだから、じゃあ私が貰ってもいいよね! という事で誘い、現在に至ると。
勿論その頃には私はエンヴィーさんから剣を教わっていたので、エンヴィーさんとシルフに頼んで一緒にマクベスタの事も見て貰える運びになったのだ。
マクベスタはゲームにてフリードルにも引けを取らない剣術で活躍する。そこにもし、魔法という要素が加われば…きっとフリードルよりも強くなる事だろう。
もしもの時、昔一緒に特訓したよしみで逃亡の手助けをしてくれたらいいなっ、ぐらいの気持ちでエンヴィーさん達による指導を受ける事を彼にお勧めした。
…うーん、我ながら下心しかないな。
「大丈夫よ、貴方は剣も魔法も一流の剣士になれるわ。私が保証する」
ゲームでの貴方はずっと一人で努力をして、その末に一流の剣士になっていたんだもの。師匠を得た今のマクベスタならきっとゲーム以上の剣士になる筈だ。
私はマクベスタと話す時大体この言葉を口にするのだが…マクベスタとて流石に聞き飽きたのか、
「ありがとう、その期待に応えられるよう努めよう」
これと似たような返事ばかりするのだ。…それも、何故か毎回困ったような顔で。
そうやって二人で話しているとエンヴィーさんがマクベスタの顔にタオルを投げつけて…。
「それならお前は魔法の特訓を増やすべきだぜ、マクベスタ。剣の腕前なら既にいい線行ってんだ、若い内に魔法に慣れといた方が後が楽だと思うぞ?」
汗を拭うマクベスタに向けて、エンヴィーさんがそうやって助言する。エンヴィーさんの言う通り、マクベスタは既に十四歳とは思えない程の剣の実力を持つ。
元々マクベスタには天賦の才があって、それをエンヴィーさんという、精霊界でも一二を争う剣の腕前をお持ちだという方が師匠としてその才を伸ばしたのだ。
そりゃあ、相当な実力となるに決まっている。
そして魔法に関してだが、魔法は魔力があれば誰でも使えるのだが……魔法を武器に戦うのなら幼い頃から魔法を使い、慣れておいた方がいいのだとか。
魔力が一気に無くなる感覚に慣れる必要があるし、魔力の精密な操作は感受性の高い子供の方が得意とまで言われている。その為この世界では、魔法を扱う職につきたい者は幼い頃から魔法に慣れておく必要があるとされているのだ。
私はそもそもが魔導師志望なので、勿論六歳の頃から魔法に触れて来たが…マクベスタの魔力が亜種属性の中でも規模が大きい魔法である事と、剣を振る事が好きだったという事が重なり、あまり魔法を扱って来なかったのだとか。
まぁ、確かに魔法に満ちた世界だとは言えども魔法をあまり使わない人は一定数いる。魔力量が少なかったり、普段使いの難しい魔法だったり、理由は様々だ。
マクベスタのその内の一人だったというだけの話だ。……しかし、私としては彼にも是非魔法を扱えるようになって欲しいと思っている。
だって、彼の魔力は……。
「そうよ、マクベスタ。雷属性なんて亜種属性の中でもかなり珍しい魔力じゃない! 剣を帯電させて戦ったりしたら、その剣に何かが触れた瞬間敵は一気に感電してしまいには………もう最強じゃないかしら? 私が雷属性だったら絶対やってたわ」
興奮気味にまくし立てる私にマクベスタは眉尻を下げて、
「お前は本当に魔法が好きだな。雷なんてもの、普通の淑女なら怯えて当然なのに…お前だけだ。嬉々として雷を落とせだの剣に纏わせろだの言い出すのは」
何処か楽しそうに微笑んだ。……ゲームの時よりも若いからかもしれないのだけれど、このマクベスタ、たまにだけど普通に笑うのよね。ゲームでは全然笑わなかったのに。
真面目で無愛想な純粋男子…それがマクベスタなのだけれど、無愛想では無いのよね。
「きゃーっ、怖いー! って言った方がいいなら言うけれど。淑女の悲鳴、欲しい?」
「要らん。それにお前がそんな風に叫んでいる様子は想像がつかない」
マクベスタは顔の前で手を左右に振り、私の悲鳴を受け取り拒否した。更に何ともまぁ失礼な事を言ってきたものだ。
まぁ、事実だけれど。何と言いますか…きゃあああっ! なんて悲鳴は出ないのよね。咄嗟に出てもうわっ、とかえっ、とかで。
女の子らしい悲鳴が出せないんですよ……ごめんよアミレス…どんどん淑女らしさからかけ離れていっているわ。
「まぁ確かに、私は女の子らしさとはかけ離れているものね。普通の女の子は手にマメを作る事もないでしょうし…」
自分の手のひらを見つめながら呟く。幾つかマメが出来ていて、少し固くなっている。いつも外で特訓していた影響で肌も少し焼けている。
毎日欠かさず筋トレと素振りをしているからか、私の腕は普通の令嬢に比べてゴツイ…………という訳でも無い。そりゃあ、少しはがっしりとしているのだけれど…元々アミレスが筋肉がつきにくいタイプだったようで、目に見えた筋肉はついてくれなかった。
筋肉王女を目指している訳ではないから、別にいいんだけどね。
肌が焼けていると言っても、当社比だから世間一般的にはまだまだ全然色白の部類だ。これはハイラさんが毎日丁寧に肌のケアをしてくれているからだろう。
それでもやはり深窓の令嬢とかと比べると粗野な感じに見えてしまうらしく、社交界にて今や私は『野蛮王女』と呼ばれているらしい。…社交界に出た事なんて無いのにね。
何せ皇帝に社交界に出るな、恥を晒すなって命令されてますから。
じゃあ何でそんな噂を知ってるかって? 侍女達が話しているのを盗み聞いたからです。
「ボクはそんなアミィが好きだよ」
私を慰めようと、猫シルフが肩に飛び乗って来ては肉球で頬を撫でてくれる。
ありがとうと言いながら猫シルフの頭を撫でているとエンヴィーさんが、
「姫さんのそーゆー所、俺等みたいな戦う事しか考えてねぇ奴からすりゃ超魅力的なんすから、自分の魅力をもうちょっと自覚した方がいいっすよ?」
歯を見せて笑いながら、頭をぐしゃぐしゃと掻き乱してきた。既に特訓の影響で髪は散々乱れているし、頭をぐしゃぐしゃにされた事は構わな……笑顔が眩しいなぁおい。
エンヴィーさんは何だか、距離感が近所のお兄ちゃんって感じで…お陰様で私もかなり懐いてしまった自覚がある。
「ほら、マクベスタも何か言え」
「えっ………まぁ、何だ、お前が自分らしいと思える生き方を出来るのなら、それでいいとオレは思う。周りの声なんて気にしなくていいさ」
エンヴィーさんに突然話を振られたマクベスタは、ぎこちない笑みで伝えてくれた。マクベスタはそもそも人付き合いが苦手だと言っていた。それでも何とか、話の流れを乱さぬように言葉を捻り出してくれたんだろう。
「そうね。ありがとう、マクベスタ」
笑ってお礼を告げるとマクベスタは照れ臭そうにそっぽを向いてしまった。その耳は少し赤く染まっていて、彼が本当に照れているのだと分かった。
そんなマクベスタに、エンヴィーさんがニヤリと笑いながら、
「なぁに照れてんだァ青少年。若いねぇ、いいねぇこういうの。俺の知り合いが見たら飛び跳ねて喜びそうだ」
と肩に腕を回して絡み始めた。マクベスタはそれを鬱陶しそうに離れさせようとするが、相手は精霊さんなのでビクともせず…その後もしばらくエンヴィーさんに絡まれ続けたマクベスタは、心無しか少しぐったりしていた。
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