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第三章 騎士学校、留学(?)編
第13話 魔法基礎学②
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かつて、このワーズ大陸で起きた戦争。人、神々、聖霊、魔族が、互いの生存をかけて争っていた。もともとは、同じ世界に皆が暮らしていたのだが、人類が他三つの陣営に対して、差別の目を向けるようになった。正確に言えば、人類は一番偉いと、錯覚をするようになってしまったのだ。なんてことを発端にして始まった戦争は、勇者カルメンが止めるまで続いた。
「四陣営大戦の話は帝国史の授業で聞けるから、そこで詳しく学んでね。本題に入ると、三陣営協定は、人、神々、聖霊が結託して、魔族を滅ぼすために結ばれたの。」
「どうして、魔族だけがはぶられたのですか?」
男子生徒が問う。
「彼らは、魔族をスパイとして、他世界に放り込んだのよ。探られるくらいなら、何も文句は言えないけれど、彼らはそれを使って我々を精神面から攻撃し始めたのよ。で、それに耐えきれなかった三陣営は、協力することになったっていうわけ。…この話も、詳しくは帝国史で学んでね。」
シーナが板書を全て消し、光属性魔法の説明を書く。
「さて、ともかくこの協力で、精霊たちの技を学ぶ機会を私たちは得た。光属性を得意とする精霊は、我々の先祖に詳しく教えた。そして、我々も精霊と同様の魔法を使役できるようになった。それが、今日の光属性魔法の源流よ。そして……」
シーナは、少しうつむく。
「闇属性魔法は、魔族から違法に入ってきたものなの。彼らは、私たちに闇の魔法を教える気などなかったと思うわ。だけど、この帝国騎士学校の創設者達は、スパイとして潜入してい魔族を捕らえて拷問し、その秘術を得たのよ。悲しい歴史だけど、それをしなければ私たちは今でも、魔法は四属性しかないと思い込んでいたかもしれないわね。」
今度は、おもむろに空中に何かを放り投げる。
「さてと、最後の身体強化呪文だけど……見せたほうが早いわよね。」
そして、詠唱文句を唱え始める。
「空に光を灯し、大地に命を蒔いた女神セデスよ。私を養いたまへ…」
シーナの周りに、青い光が漂う。この光を見てると、なんだか自分の疲れまで取れてくるような…
「これは、小回復ですね?」
「そう。身体強化魔法の一種で、魔素を使って自分の体力に変換するのよ。かつては、光魔法に区分されてたこともあったみたいだけどね。ちなみに、私がさっき放り投げたのは、魔法術式が刻み込まれている鉄球よ。これを使うと、効果が上がるってわけ。」
掌の上に青い光を出す。
「まあ、そんなことは良いのよ。ここは魔法学の授業。まだ魔法を知らない皆さんを、一流の魔法使役者に育てるのが私の任務というわけ。さて、と。今日は皆さんに、初級身体強化呪文を憶えてもらいます。掃除!」
黒板を一気に綺麗にし、複製転写で魔法術式を一気に書き上げる。流石は文部大臣。魔法使役スピードは、ピカイチだ。
「タガル君。あなたは多分、魔法が使役できないだろうから、やらなくても大丈夫よ。」
シーナは、僕が“成人の儀式”を受ける前にタールランドを出ていったから、僕の魔法事情に関しては、魔素を取り込むことができないなど、表向きののとしか知らない。……だから、驚かせてやろう。僕の持つスキルで。
「いえ、やってみますよ。」
「そう? 魔法が使役できない体質の人が呪文を唱えても、体力を消耗するだけよ?」
「本当に僕が使役できないと決めつけてもいいんですか? 指導した人の教え方が下手くそで、僕が使役できていない可能性だってあるはずですよ?なにせ僕は農民出身ですから。」
「むっ…(その指導係が誰だと思ってるのよ! あのホスロよ?ホスロ大臣よ!)」
シーナは、納得できないといった顔をしている。…仕方ない。ジョンネルには止められていたけど、力の一部を使うか。
「ならば、まずはタガルにやってもらいましょうか。」
クラスがざわつく。僕なんかに出来やしないと思っているのだろう。
「分かりました。やりましょう。」
「ただ、指導した人の悪口や偉そうなことを言ったのです。使役できなかったら、罰を受けてもらいましょうか。」
「望むところですよ。」
「ではタガル、前に来て。」
席を立ち、堂々と向かってやる。
「あなたには初級身体強化呪文の中で私たちが一番最初に学ばなければならない、この小回復をやってもらうわ。みなさんも、しっかりと見ていてね。まずは頭に構造式と術式を思い浮かべて、そして詠唱文句を唱えるのよ。」
身体強化呪文は、長ったらしい詠唱文句など唱えなくても使役できるのを知らないのかな。まあ、みんなに見せて上げるのも大切だよね。最初のうちは、タールランドで学んだことの復習になるだろうから。
「それっ。」
体の周りに、青い光が漂う。さっきよりも、光は強い。うん、大成功だな。
体がだんだん軽くなっていくのも分かる。
「あの、タガル。詠唱文句は?」
「え? あんなの唱えなくったっていいんだよ?」
「「ええええええええええ!!??」」
教室中にみんなの驚く声がこだまする。そんなに驚くことかな。
「でも、帝国騎士学校の教授は、詠唱文句を唱えて神々や精霊に感謝をしなければ、身体強化呪文は使えないって論文を発表していたのよ?」
女子生徒が、僕に言う。そうだそうだと、みんなも口々にそう言う。
「そんなの迷信だよ。今シーナ先生が見せた術式から詠唱文句の部分を取り除いても、右辺と左辺の魔素バランスは保たれるし、使役に問題もないんだよ。ほら、こんな感じにね。」
黒板にある詠唱の部分を消し、係数を調整する。
「……これが本当なら、大発見よ、タガル。皇帝勲章受賞ものよ?」
「え、そんなに凄いことなの? だってこれはホスロが教えてくれたんだよ?」
「「ええっ、タガル君ってあのタールランドのホスロ大臣に魔法を習ってたの?」」
あ、やべ。口が滑った。もう、本当のことを言うしかないかな。
「……その通りだよ。ちょっと父が大臣とつながりがあってさ。それで…」
「でも、大臣から学べるのは王族だけって聞いた気が…」
男子生徒が、気づかなくても良いことに気がつく。
「そういえば、タールランドの第三王子って、私たちと同級生らしいわよね。」
女子生徒も、余計なことに気がつく。
「「まさかあなたって……」」
「はい、そこまで!」
シーナが、ギリギリのところで助け船を出す。危なかった…
「とにかく、みなさんはタガルのような真似は出来ないと思うので、詠唱文句をしっかり唱えて、術式使役をしてください! さあ、始めて!」
こりゃ迂闊に身の上話をしないほうが良いかもな。
「四陣営大戦の話は帝国史の授業で聞けるから、そこで詳しく学んでね。本題に入ると、三陣営協定は、人、神々、聖霊が結託して、魔族を滅ぼすために結ばれたの。」
「どうして、魔族だけがはぶられたのですか?」
男子生徒が問う。
「彼らは、魔族をスパイとして、他世界に放り込んだのよ。探られるくらいなら、何も文句は言えないけれど、彼らはそれを使って我々を精神面から攻撃し始めたのよ。で、それに耐えきれなかった三陣営は、協力することになったっていうわけ。…この話も、詳しくは帝国史で学んでね。」
シーナが板書を全て消し、光属性魔法の説明を書く。
「さて、ともかくこの協力で、精霊たちの技を学ぶ機会を私たちは得た。光属性を得意とする精霊は、我々の先祖に詳しく教えた。そして、我々も精霊と同様の魔法を使役できるようになった。それが、今日の光属性魔法の源流よ。そして……」
シーナは、少しうつむく。
「闇属性魔法は、魔族から違法に入ってきたものなの。彼らは、私たちに闇の魔法を教える気などなかったと思うわ。だけど、この帝国騎士学校の創設者達は、スパイとして潜入してい魔族を捕らえて拷問し、その秘術を得たのよ。悲しい歴史だけど、それをしなければ私たちは今でも、魔法は四属性しかないと思い込んでいたかもしれないわね。」
今度は、おもむろに空中に何かを放り投げる。
「さてと、最後の身体強化呪文だけど……見せたほうが早いわよね。」
そして、詠唱文句を唱え始める。
「空に光を灯し、大地に命を蒔いた女神セデスよ。私を養いたまへ…」
シーナの周りに、青い光が漂う。この光を見てると、なんだか自分の疲れまで取れてくるような…
「これは、小回復ですね?」
「そう。身体強化魔法の一種で、魔素を使って自分の体力に変換するのよ。かつては、光魔法に区分されてたこともあったみたいだけどね。ちなみに、私がさっき放り投げたのは、魔法術式が刻み込まれている鉄球よ。これを使うと、効果が上がるってわけ。」
掌の上に青い光を出す。
「まあ、そんなことは良いのよ。ここは魔法学の授業。まだ魔法を知らない皆さんを、一流の魔法使役者に育てるのが私の任務というわけ。さて、と。今日は皆さんに、初級身体強化呪文を憶えてもらいます。掃除!」
黒板を一気に綺麗にし、複製転写で魔法術式を一気に書き上げる。流石は文部大臣。魔法使役スピードは、ピカイチだ。
「タガル君。あなたは多分、魔法が使役できないだろうから、やらなくても大丈夫よ。」
シーナは、僕が“成人の儀式”を受ける前にタールランドを出ていったから、僕の魔法事情に関しては、魔素を取り込むことができないなど、表向きののとしか知らない。……だから、驚かせてやろう。僕の持つスキルで。
「いえ、やってみますよ。」
「そう? 魔法が使役できない体質の人が呪文を唱えても、体力を消耗するだけよ?」
「本当に僕が使役できないと決めつけてもいいんですか? 指導した人の教え方が下手くそで、僕が使役できていない可能性だってあるはずですよ?なにせ僕は農民出身ですから。」
「むっ…(その指導係が誰だと思ってるのよ! あのホスロよ?ホスロ大臣よ!)」
シーナは、納得できないといった顔をしている。…仕方ない。ジョンネルには止められていたけど、力の一部を使うか。
「ならば、まずはタガルにやってもらいましょうか。」
クラスがざわつく。僕なんかに出来やしないと思っているのだろう。
「分かりました。やりましょう。」
「ただ、指導した人の悪口や偉そうなことを言ったのです。使役できなかったら、罰を受けてもらいましょうか。」
「望むところですよ。」
「ではタガル、前に来て。」
席を立ち、堂々と向かってやる。
「あなたには初級身体強化呪文の中で私たちが一番最初に学ばなければならない、この小回復をやってもらうわ。みなさんも、しっかりと見ていてね。まずは頭に構造式と術式を思い浮かべて、そして詠唱文句を唱えるのよ。」
身体強化呪文は、長ったらしい詠唱文句など唱えなくても使役できるのを知らないのかな。まあ、みんなに見せて上げるのも大切だよね。最初のうちは、タールランドで学んだことの復習になるだろうから。
「それっ。」
体の周りに、青い光が漂う。さっきよりも、光は強い。うん、大成功だな。
体がだんだん軽くなっていくのも分かる。
「あの、タガル。詠唱文句は?」
「え? あんなの唱えなくったっていいんだよ?」
「「ええええええええええ!!??」」
教室中にみんなの驚く声がこだまする。そんなに驚くことかな。
「でも、帝国騎士学校の教授は、詠唱文句を唱えて神々や精霊に感謝をしなければ、身体強化呪文は使えないって論文を発表していたのよ?」
女子生徒が、僕に言う。そうだそうだと、みんなも口々にそう言う。
「そんなの迷信だよ。今シーナ先生が見せた術式から詠唱文句の部分を取り除いても、右辺と左辺の魔素バランスは保たれるし、使役に問題もないんだよ。ほら、こんな感じにね。」
黒板にある詠唱の部分を消し、係数を調整する。
「……これが本当なら、大発見よ、タガル。皇帝勲章受賞ものよ?」
「え、そんなに凄いことなの? だってこれはホスロが教えてくれたんだよ?」
「「ええっ、タガル君ってあのタールランドのホスロ大臣に魔法を習ってたの?」」
あ、やべ。口が滑った。もう、本当のことを言うしかないかな。
「……その通りだよ。ちょっと父が大臣とつながりがあってさ。それで…」
「でも、大臣から学べるのは王族だけって聞いた気が…」
男子生徒が、気づかなくても良いことに気がつく。
「そういえば、タールランドの第三王子って、私たちと同級生らしいわよね。」
女子生徒も、余計なことに気がつく。
「「まさかあなたって……」」
「はい、そこまで!」
シーナが、ギリギリのところで助け船を出す。危なかった…
「とにかく、みなさんはタガルのような真似は出来ないと思うので、詠唱文句をしっかり唱えて、術式使役をしてください! さあ、始めて!」
こりゃ迂闊に身の上話をしないほうが良いかもな。
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