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しおりを挟む文献でしか知らないが、海というものはこれよりも大きなものなのだろうかと、芹は部屋に面した庭の向こうに広がる、池というにはあまりに大きな水辺を眺めていた。
突然現れて話があると言ってきた黒縒を追いかけてやってきたのは、立ち入りを禁じられていた八の館だった。他の館となにか違うところがあるのではと思っていたが、いたって普通の館だった。
通されたのは庭に面した一室で、広さも二十畳程度の、この屋敷の中に多くある座敷の中ではそれほど広い場所でもなかった。
芹を部屋に案内すると、黒縒はここから動かずしばし待てと言って出て行ってしまった。張りつめていた呼吸を大きく吐き出すと、強張っていた肩などはぱきりと情けない音を立てた。
(話ってなんだろう)
道すがら、黒縒は特に何も話さなかった。ついて来いとだけ言い、芹はそれに従っただけで、なんの話をされるのか、何のために呼ばれたのかは一切わからない。
また欲しいものや望みを言えと言われるのだろうかと昨夜のことを思いだしていると、どこかへ行っていた黒縒が戻ってきた。
「待たせたな」
「いいえ、池がとても広いので、それを見ていました」
不安を覚えて鬱々とはしていたが、庭を見ていたのは本当だ。これは池なのか、それとも湖というものなのか、むしろ池と湖の違いはなんだろうかと意識をそちらに向けてもいた。 芹の言葉に黒縒はそうかと頷くと、風にさざ波を立てている水面を見やった。
「あれは池ではなく湖。お前なぞ入ったら、足がつかずにどこまでも沈んでしまう」
「そんなに深いんですか」
「深くなければ、俺が満足できぬからな。現に、あそこで溺れた人間もおるよ」
「た、助かりましたか」
「助かったとも。助かったが……今は眠ったままよ」
「え……」
途端に不穏な空気が訪れて、芹が言葉を途切れさせると、黒縒は柱に背を預けて湖に視線を投げたまま、ひとつ息を吐いた。
「眠っているのは、俺の妻。湖で溺れたことが原因ではないが、……また、眠ってしまった」
「細君をお持ちだったんですか」
黒縒の屋敷で過ごし初めてやがて三ヶ月が経とうとしているが、噂でももちろん、蘇芳からもそんな話は聞いたことがなかった。
「ああ、百年…いや、もっと前だな。その頃に娶った。贄として俺に供えられたものだったが、存外気に入ってな。妻にした」
遠い目をしている黒縒の横顔は端正で、寸分の歪みもなく整っている。けれどどこか拭い去れない悲愴感が、僅かに伏せられた双眸や、口角の下がった口元に漂っていた。
「二十年は、楽しかった。あれはそれほどいい器量をしているわけではないが、俺の至宝だった。しかしだ。なにが原因だったかはわからない。ある日から、妻は長く眠るようになってしまった」
訥々と語る黒縒の話は、芹には途方もつかないほどの遠い過去と、その間の悄然を振り返るものだった。
百年以上も前、黒縒は妻と暮らしていたという。贄として供えられたものだったが、性根が気に入った黒縒は贄を娶り、安らかな日々を送っていた。
けれどそんな日々は唐突に幕引きを迎えた。
ある日を境に、黒縒の細君は目を覚まさなくなった。
元々神気が非常に少なく、体も弱かったためにしばらくは様子を見ようと、黒縒は来る日も来る日も、妻が目覚めるのを待った。
けれど妻が目覚めたのは、それから十年も経ってからだった。
その間、黒縒は医者を集めた。様々な薬も煎じてみた。黒縒自身が神の類いではあるものの、他の神を呼び寄せて祈願もしてみた。けれどなにひとつ効かず、わからず、黒縒はただただ無為に過ぎていく日々を、穏やかな顔で眠る妻を見つめながら過ごした。
十年経ったある日、眠った日と同じように、唐突に妻は起きた。さすがに体は鈍っていたが、以前と変わらぬ笑顔で、おはようと言った。
それから二週間ほど、黒縒の妻は起きていた。十年間も寝通しだったものの、四日もすれば一人で歩けるようになり、十年の孤独を埋めるように黒縒は常に傍にいた。
久しぶりに見る笑顔や声はとてつもなく愛おしく、ひとつも零すことなく大切にしようと黒縒は思った。
その矢先、また妻は眠りに落ちてしまった。
おやすみなさい、また明日、と黒縒の腕のなかで眠った妻は、今度は五年間眠り続けた。それからまた十日ほど起きて、今度は十三年眠った。
何年も年を跨いで眠り、数日間だけ目覚めて、また眠りに落ちる。それを繰り返しているうちに、あっという間に八十年が過ぎた。
八十年の間、様々な事を調べ、実行し続けた黒縒は、ようやくひとつだけ知った。
眠っている妻は、驚くほど神気がなかった。
生まれが人間のうえ、元より神気がなかった妻だったが、神である黒縒と体を重ねてようやく、並みの人間程度の神気を宿すようになっていた。
それが、気付けば殆どなくなっていた。
交わってしまえば一時的には神気は高まるだろうが、眠っている妻に無体は出来ず、そんな事をしてもし死んでしまったらと思うと、恐ろしくてたまらなかった。
そこで黒縒は、妻に合う神気の持ち主を探し始めた。
東西南北、どこへでも向かった。山を越え、海を渡り、国を跨いで、百年探した。
けれど、奪えばすぐに枯渇してしまいそうな人間しか見つからない。その上、妻が眠りにつく期間が長くなっており、最後に目覚めてから四十年が過ぎて途方に暮れた時に見つけたのが、山を挟んだ向こうにある村の妊婦だった。
「女は神気の強い人間だったが、それ以上に腹にあった赤子の神気が、生まれるより先に眩く瞬いていた」
「それって…」
「それがお前よ。芹」
まだ生まれてもいない芹に目を付けた黒縒は、しばらくそれを見守っていた。
尽きる様子もなく、毎日これでもかと瞬きながら大瀑布のように神気を垂れ流している命は、黒縒が見たこともないほどの力に満ちていた。半年ほどもそれを見続けた黒縒は、清三と契約をした。
そこから先は、芹も父に聞いたことがあった。
元より鬼に襲われやすかった土地を護り、水の加護を与える代わりに、芹を差し出さなければならなくなったと。
「妻を…千茅というが…千茅を娶って二百年以上が経った。けれど、あれが起きて俺の傍にいたのは最初の二十年と、あとは少しの日々だ。二百年あまりも、俺は置き去りにされている。その長い年月よりも、お前が生まれてから迎える日まで、長かった」
実際、芹はもっと早くに召し上げられる予定だったという。
けれど祠参りに芹が向かうたび、妻の千茅は目を覚ました。それは、芹が生まれてから初めて祠参りをした日だった。
四十年以上も眠り続けた千茅は、たった二日だけ目覚めた。あまりにも短い期間で、目覚めた二日間もどこか朦朧としていた千茅だったが、もう少しで目が覚めるからと囁いて、また眠った。
それからは短くて数か月、長くても一年ほどの間をおいて、千茅は目を覚ますようになった。起きている時間は短く、三日が限度のようだったが、それでも黒縒は嬉しかった。
それもこれも、芹が生まれたからなのだと思った。
だからこそ芹の父が統治する藤村の血の水脈を細かに操って水害をなくし、適度に雨を降らせ、飢饉や洪水で芹の命が脅かされないように心配りをした。
一方で、芹が生まれた日に交わした契約では七歳を過ぎればいつ迎えに来るかわからないと告げたが、それはなかなか叶わなかった。
芹がもうじき七歳になるという年、お前の神気を補うための子を用意したと伝えると、目覚めた千茅が怒ったのだ。
「怒髪天とはまさにあれの事よ。人の子をなんだと思っている、そんな馬鹿な事は許さないと怒って怒って、そのまままた眠ってしまった」
もう十年近くも前の話をどこか楽しげに話す黒縒は、視線を湖から芹に移すと、ふっと自嘲するように口元をたわめた。
「俺とてわかっている。神に奉げる贄など、本来はあってはならない」
清三と契約を交わしたものの、千茅の激昂と自身の想いから黒縒は芹を連れて来れずにいた。
不定期に起きてはまた長く眠る千茅は目覚めるたびに馬鹿なことはしていないかと言い、黒縒は、していないがお前の眠り病も解決の糸が見えないと返す日々だった。
このまま、また数十年が過ぎていくのかと思っていたが、長くても一年に一度は目覚めていた千茅が、目覚めなくなった。
「……たまらぬよ。四十年の眠りにも俺は耐えた。朝な夕なとあれの頬を撫で、髪に触れて過ごした四十年に、俺は耐えたのだ。それなのに、お前が生まれてからはよく目覚めるようになった。だからこそ、俺は一年が過ぎただけでも、おかしくなりそうだった」
一日一日が驚くほど長く感じられ、朝に目覚めては千茅が起きていないかを確かめ、夜はその呼吸が途絶えていないかを確認してから眠る。そんな日々は穏やかな地獄だった。
そうしているうちに芹の村が襲撃され、張りつめていた糸がふつりと切れた。
芹がいることで千茅は目覚めていたのに、万が一鬼などに取って食われてしまったら最後、千茅がこの先目覚めることはなくなってしまうと思い、とうとう芹をこちらへ呼んだ。
期待していた通り、その日千茅は目覚めた。
「お前が来てすぐだ。目を覚ました」
「でも俺、なにもしていません」
祈ったわけでもなければ、会って手を触れたわけでもない。そんな大仰な力が本当に自分にあるのかと、むしろ芹は不安になった。
「なにもせずとも、お前の神気は溢れている。それにおそらくは、僅かでも血筋が近いからだろう。体質もある。馴染むのかもしれんな」
「あの…血筋が近いというのは、どういうことですか?」
神気が強いと言われ続けていたが、それが血筋に関わっていたとは知らなかった。けれども、芹は自分の両親と、すでに鬼籍に入っている父方の祖父母しか心当たりがない。それ以外はあるのかと視線をあげると、黒縒はゆったりと頷いた。
「血筋とは言っても、もう何代も前の話よ。お前の母の母は、俺が祀られている瑞治山大社の娘だった。更にその三代前、お前に連なる女がいた。それの兄が千茅だ」
「俺のお祖母様の、更にお祖母様の、母様の、兄……兄?」
「そうだな。正確には、兄であり姉であり……お前と同じ、両性だ」
「俺と、同じ…」
脳裏によぎるのは、ここで出来た最初の友人だ。穂摘も、両性は珍しいがいないわけではないと言っていた。よもや三人目が、まさか黒縒の妻だとは思いもしなかったが。
「遠くではあるものの、血の縁はある。更にはお前が生まれた時に両性だという事はわかっていたから、俺はお前がここに来てくれて、本当に嬉しかった。お前がいるだけで千茅が長きの眠りに落ちずに済むのなら、なんでもしようと思った」
「だから毎日、俺を訪ってくださったんですね」
「そうだ。お前が健やかで心穏やかに居てくれれば神気は濁りなく、芳醇に溢れる。それを損なわないように俺は必死だった」
だからこそ毎日訪れては気分はどうだ体調は悪くないかと構ったのだとようやく合点がいったが、それならばなぜという疑問も同時に浮上した。
「それならどうして、昨夜は……」
問いを言葉にするなり、芹は部屋の空気が一瞬下がったのを感じた。ふるりと肌が震えるほどの寒気はどこかしっとりと水っぽく、空気中に増えた水分が、肌にまとわりつくようだった。
「……また千茅が眠り始めた。ここ三ヶ月、一度として、朝に目が覚めないことはなかったというのにだ。それゆえ俺は、お前に何かがあったと思った。悩みがあるのか、体調が優れぬのか、欲しているものがあるのか。それを解消すれば、また千茅は目を覚ますと思った」
だからこそ、些細なものでもかなえようと尽力し、芹の元に通い詰めた。けれど芹に願いは特になく、不調もない。それどころか、神気には淀みすらなく、本人だけが気付かないまま、いつも通り無尽蔵に流れ出ていた。
「蓮の……蓮の葉を、お前は求めただろう」
「は、…はい」
「あれほどの願いをかなえる程度であっても、俺はなにかが千茅につながればいいと思った。あれが目覚めてくれるなら、俺はなんでもしよう。……だが、お前の神気に変わりはなく、ただ、千茅がそれを受け取らなくなっただけなのだとわかった」
「俺の神気じゃ駄目だったんですか?」
「いや、お前の神気はなんら変わりない。おそらくは千茅に一番馴染むものだ。だがそれを、千茅自身の意図をもってしてか、それとも無意識のうちにか、受け取らなくなってしまった。ただでさえ少なかった千茅の神気は、もう底をつこうとしている。それも、今まで僅かにあったものさえもだ」
僅かな神気さえあればいいが、完全になくなれば、どうなってしまうかわからない。もしかしたら、そのまま朽ちてしまうかもしれない。
恐ろしいのだと、黒縒は呻くように言った。
「あれを喪うことは出来ない。よって、芹、お前の神気を千茅に移すことにした」
ぽつりと零された声は、冷えた空気の中でよく響いた。
「お前の肉体は、永久の眠りにつくことになる」
「それは……俺は死ぬということですか」
言葉の衝撃はあまりに強く、目の焦点をうまく結ぶことが出来ずにくらくらする。頭が痛い、と触れたこめかみは、いつの間にかじっとりとかいていた冷や汗に濡れていた。
「死ぬわけではない。お前はいわば、湧き水よ。そこから流れる水が神気。水をすべて千茅に流れるようにし、お前は水を湧き上がらせ続ける。俺の加護でもって守り、朽ちず、死なず、千茅が命を終えるその日まで、眠ったままだ」
「それは、いつまでですか」
「さてな。俺が朽ちるまで、あれを死なせるつもりもない。百年か、二百年か、はたまた千年か。神の命は、人には計り兼ねる長さだからな」
「………っ」
咄嗟に立ち上がったのは、恐怖と悲しみと怒りが目の淵から雫になってあふれてしまいそうになったからだった。
無礼だとわかっていたが、そのまま走って部屋を後にした芹を、黒縒は追いかけてはこなかった。
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