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クワイエット・テラー
作倉暦
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この日最終の5時限目、広美先生の数学の授業までマイカはなんとか耐えていた。
だが、マイカの体力は、5時限目にきていよいよ限界に来ていた。もともと体力には自信がないわけではなかったが、さすがに熱っぽさからくるだるさは、いかに気を張っていようとマイカに容赦なく襲いかかり、かなり体力を消耗させられていた。
マイカにとって数学の授業は、それほど退屈なものではなかったが、コンディションの悪さが授業内容の理解に大きく影響していた。
――ダメだ。全然頭に入ってこない。
マイカは、広美先生の説明を聞いているつもりであっても、それが頭に全く入ってなかった。ただ板書をノートに写すだけで精一杯だった。
――このPってなんだっけ?さっき広美先生が説明してくれたな。
新しく出てきた記号に、マイカは混乱した。そのPという記号を使って、授業は次の段階へ進んでいる。マイカはこのPが分からないために、今何をやっているのか全くちんぷんかんぷんであった。
――あ~、だめだ。
マイカは、いったん思考停止し、ふと夢に出てきた金髪の女性のことを思い出した。
――金髪のお姉さん……、また会いたいな。
マイカの席は、窓際であったため、窓から太平洋の海が一望できる。マイカは、日の光を反射してキラキラと光る海と水平線をぼーっと眺めた。
――あの夢に出てくるとこってこの世界のどこかにあるのかな?
マイカは黒板の方に向き直し、再び広美先生の板書をせっせと写す。
――もしあれば絶対会いに行くのに……。
相変わらず訳がわからないPが何度も出てくる。マイカにとって、それはただ手を動かす作業になっていた。マイカはため息をつく。
――せっかく広美先生の最後の授業なんだから、しっかりしなきゃ。
マイカは、なんとなく自分の姿を夢の中の人物であるはずの金髪の女性に見られている気がした。自分が納得できるような強い女でいなければ、会うのが恥ずかしいという気持ちがマイカには芽生えていた。
マイカはノートを見返して、ともかくPの意味を理解しようとした。一方で、授業は無慈悲にも進んでいくので、板書も写さなければいけない。一度、深呼吸してマイカは集中力を高めた。
――なるほど。Pは並べるときに使う記号だ。うん、とりあえず使い方だけは分かった。
マイカはその記号の使い方をうわべだけさらって、とりあえず一安心した。
――いやいや、安心してられない。黒板、写さないと。
板書を写す作業に戻るために、眼球を左右上下に動かしてから、視線を前方の黒板にやった。そのときだった。
――え?
なぜか教壇でしゃべっている広美先生の隣に、あの目がまんまるでひどい猫背の石の悪魔がいた。
マイカは一瞬自分のまわりだけ時がとまったかのように硬直した。そして額から一筋の汗が流れる。夢では遠くにポツンと見えただけであった石の悪魔が、今はこんなに近くにいる。夢では気づかなかったが台座まである。石の悪魔はその台座の上にちょこんと座っている。
――なんでここに?
マイカは目をパチクリとさせて、もう一度見てみたが、すでにそこには何もなかった。
――消えちゃった……。何いまの?……幻?
マイカはいよいよ限界が来たのかと思った。背中からも額からも汗が噴き出るのを感じた。ノートには、ポタポタと滴が落ちている。マイカはブレザーのポケットからハンカチを取り出し、こっそりと汗をぬぐった。そのとき、マイカは自分のまぶたが重くなるのを感じる。
――ダメダメ。あとちょっとだから、がんばらなきゃ。
となりの席の女子生徒が、いつもとは違う様子のマイカを見て心配そうにしていた。その髪を二つ結びにした女子生徒は、双葉みどりという。一見、おっとりとした性格の優等生に見えるが、好きなものには強いこだわりを見せる部分もある。特に、マイカに対する執着は強い。
「マイカ、大丈夫?」
みどりが小声でマイカに声をかけた。
「大丈夫。……ありがとう」マイカは作り笑顔で応じた。
「本当に?今日絶対おかしいよ。すごく汗かいてるし。具合悪いんでしょ?」
みどりはとても心配そうだ。
「心配ないって」マイカは平静を装った。心配してくれるのは非常にありがたいが、自分の体調について、いちいち大事にされたくなかった。
「でも顔色すごく悪いよ・・・…」
みどりの声は少しずつ大きくなっていった。
それに気づいたのか、広美先生がひそひそ話の発生源を注視した。みどりがマイカの心配をしていることがすぐに見てとれた。確かに、マイカの顔色が悪いのは誰が見てもおかしいと思えるほどだった。広美先生は、マイカに声をかけた。
「都さん体調悪いの?」
――あ~、見つかっちゃった。
マイカは広美先生に余計な気を遣わせたくなかった。となりで、悲壮感に満ちた表情でみどりがマイカを見つめている。当然のことながら、クラス中の皆の視線もマイカに集まる。この状況で、「体調が悪い」と素直に認めるのは癪だった。そもそもここでドロップアウトしてしまったら、なぜこの最終時限まで頑張ってきたのかということになってしまう。
「大丈夫です!」マイカは少し不自然なぐらい大きな声で言った。クラスの皆にも、無理矢理ではあるがニコっと笑顔を振りまいた。みどりに対しては、不気味な作り笑顔のままサムズ・アップして元気をアピールした。この笑顔を作るだけでも、実際はそんなことはないだろうが、かなりの体力を消耗した気がした。
「じゃあせっかくだから」と広美先生が言った。マイカにとってそれは不吉な言葉だった。広美先生はマイカにとって部活の顧問でもあったので、他の生徒よりもマイカは特段授業でつつかれやすかった。
「都さんに例題をひとつ解いてもらおうかしら?」
マイカはギクッとした。広美先生はニコニコしてマイカを静かに見つめている。
マイカはいきなりのことで動揺を隠しきれなかった。マイカはおもむろに教室を見渡した。クラス中の誰もが気の毒そうにマイカを見つめている。中でも、となりのみどりは、泣きそうな顔をしている。
問題にチャレンジすることを恐れてはいなかったが、これで広美先生の期待を裏切って終わってしまうことがマイカにとって何より許せなかった。
――さっきノート見返して、Pの使い方はだいたい分かっている。あとは私の脳の戦闘力がどれだけ残っているかね。
マイカにとっては、もうやるしかなかった。こういうときこそポジティブにいかねばと考えた。むしろ、半年間お世話になった広美先生にいいところを見せて有終の美を飾るチャンスだ。マイカはそう覚悟し、顔を上げ「はい」と返事しようとしたが……。
――え?
また、広美先生のとなりにあれがいた。やはり、体を折りたたんでいるかのように小さく丸まっている。まるで自分の存在を隠しているかのような……。しかし、マイカにとって、まるでそれだけしかいないというぐらいの存在感であった。
――また……いる……。
マイカは再び固まってしまった。混乱するよりもまず、思考が完全に停止した。体調はすこぶる悪い。そしてピンチとチャンスが入り混じった状況。その中で現れた謎の悪魔。マイカがフリーズ状態になると同時に、教室内の時間が一瞬止まったような雰囲気に包まれた。マイカの額からしたたる一筋の汗だけが、時を進めていた。
すると、広美先生はいきなり「あはは」と笑い始めたことで静寂は破れた。マイカはその先生の笑い声で我に返った。石の悪魔もいなくなっていた。他の生徒たちもあっけにとられていた。
「冗談よ!冗談!」広美先生は、教科書をパタンと閉じて言った。「今日はこれでおしまい」
時計を見ると、あと授業が終わるまで15分ほど残されている。教室内がざわつき始める。緊張した空気が急に緩み、マイカは、体の力が一気に抜けていくのを感じた。石の悪魔については、一旦忘れよう。頭の整理をすることよりも、まず頭を休めることが先決だとマイカは思った。
広美先生は、「はいはい!最後に連絡事項を伝えて終わりにしま~す。」と元気よく言って、皆の顔を見渡した。
「これまでもお知らせしたとおり、私の授業はこれで最後になります」
広美先生がそう言うと、教室内が再びざわつきはじめる。お調子者の男子の何人かが「え~!」と大きな声で言ってみたりしている。実際ほとんど皆が、広美先生の授業を受けられなくなるのを残念がっていた。
「先生いつもどってくるの!?」と1人の男子が皆の気持ちを代弁するように言う。
「うーん、皆が卒業するまでに戻ってこられたらいいなと思うけど。」
「えー、赤ちゃん産んだらすぐ戻ってきてよ!」また別の男子が言った。
「ちょっと無茶言わないでよ!」広美先生が大げさに否定すると、教室内が笑いに包まれた。マイカはその教室の明るい空気に馴染めないようで、広美先生の話には耳を傾けるも声をあげたり笑ったりなど到底できなかったし、しようとも思わなかった。
「みんなも気になっているよね?」広美先生が、ニヤニヤとしながら再び皆の顔を見渡した。
「明日から私の代わりにみんなに数学を教えてくれる先生を発表します!」
広美先生のその言葉で、教室内が一瞬シーンとなった。数学というほぼ毎日ある授業を担当するのが、優しい先生なのか恐い先生なのかは、皆にとって非常に重大な問題である。そんな生徒たちの心理をよく広美先生も分かっていたので、それを面白がって、もったいぶった言い方をしたのである。マイカにとっては、広美先生でなくなってしまうことは残念ではあるが、後任の先生など別に誰でもよかった。
広美先生はたっぷり間を作った。生徒たちの中には、目をつむり、両手を合わせて拝むようにしている者もいた。その間がこわくなって、耳を塞ぎだす者すらいた。
――たしかに恐い先生になったら、私もいやかな。
マイカも周りの雰囲気に流されて、少し気になってきたころで、広美先生はついにその名前を発表した。
「作倉先生です!」
だが、マイカの体力は、5時限目にきていよいよ限界に来ていた。もともと体力には自信がないわけではなかったが、さすがに熱っぽさからくるだるさは、いかに気を張っていようとマイカに容赦なく襲いかかり、かなり体力を消耗させられていた。
マイカにとって数学の授業は、それほど退屈なものではなかったが、コンディションの悪さが授業内容の理解に大きく影響していた。
――ダメだ。全然頭に入ってこない。
マイカは、広美先生の説明を聞いているつもりであっても、それが頭に全く入ってなかった。ただ板書をノートに写すだけで精一杯だった。
――このPってなんだっけ?さっき広美先生が説明してくれたな。
新しく出てきた記号に、マイカは混乱した。そのPという記号を使って、授業は次の段階へ進んでいる。マイカはこのPが分からないために、今何をやっているのか全くちんぷんかんぷんであった。
――あ~、だめだ。
マイカは、いったん思考停止し、ふと夢に出てきた金髪の女性のことを思い出した。
――金髪のお姉さん……、また会いたいな。
マイカの席は、窓際であったため、窓から太平洋の海が一望できる。マイカは、日の光を反射してキラキラと光る海と水平線をぼーっと眺めた。
――あの夢に出てくるとこってこの世界のどこかにあるのかな?
マイカは黒板の方に向き直し、再び広美先生の板書をせっせと写す。
――もしあれば絶対会いに行くのに……。
相変わらず訳がわからないPが何度も出てくる。マイカにとって、それはただ手を動かす作業になっていた。マイカはため息をつく。
――せっかく広美先生の最後の授業なんだから、しっかりしなきゃ。
マイカは、なんとなく自分の姿を夢の中の人物であるはずの金髪の女性に見られている気がした。自分が納得できるような強い女でいなければ、会うのが恥ずかしいという気持ちがマイカには芽生えていた。
マイカはノートを見返して、ともかくPの意味を理解しようとした。一方で、授業は無慈悲にも進んでいくので、板書も写さなければいけない。一度、深呼吸してマイカは集中力を高めた。
――なるほど。Pは並べるときに使う記号だ。うん、とりあえず使い方だけは分かった。
マイカはその記号の使い方をうわべだけさらって、とりあえず一安心した。
――いやいや、安心してられない。黒板、写さないと。
板書を写す作業に戻るために、眼球を左右上下に動かしてから、視線を前方の黒板にやった。そのときだった。
――え?
なぜか教壇でしゃべっている広美先生の隣に、あの目がまんまるでひどい猫背の石の悪魔がいた。
マイカは一瞬自分のまわりだけ時がとまったかのように硬直した。そして額から一筋の汗が流れる。夢では遠くにポツンと見えただけであった石の悪魔が、今はこんなに近くにいる。夢では気づかなかったが台座まである。石の悪魔はその台座の上にちょこんと座っている。
――なんでここに?
マイカは目をパチクリとさせて、もう一度見てみたが、すでにそこには何もなかった。
――消えちゃった……。何いまの?……幻?
マイカはいよいよ限界が来たのかと思った。背中からも額からも汗が噴き出るのを感じた。ノートには、ポタポタと滴が落ちている。マイカはブレザーのポケットからハンカチを取り出し、こっそりと汗をぬぐった。そのとき、マイカは自分のまぶたが重くなるのを感じる。
――ダメダメ。あとちょっとだから、がんばらなきゃ。
となりの席の女子生徒が、いつもとは違う様子のマイカを見て心配そうにしていた。その髪を二つ結びにした女子生徒は、双葉みどりという。一見、おっとりとした性格の優等生に見えるが、好きなものには強いこだわりを見せる部分もある。特に、マイカに対する執着は強い。
「マイカ、大丈夫?」
みどりが小声でマイカに声をかけた。
「大丈夫。……ありがとう」マイカは作り笑顔で応じた。
「本当に?今日絶対おかしいよ。すごく汗かいてるし。具合悪いんでしょ?」
みどりはとても心配そうだ。
「心配ないって」マイカは平静を装った。心配してくれるのは非常にありがたいが、自分の体調について、いちいち大事にされたくなかった。
「でも顔色すごく悪いよ・・・…」
みどりの声は少しずつ大きくなっていった。
それに気づいたのか、広美先生がひそひそ話の発生源を注視した。みどりがマイカの心配をしていることがすぐに見てとれた。確かに、マイカの顔色が悪いのは誰が見てもおかしいと思えるほどだった。広美先生は、マイカに声をかけた。
「都さん体調悪いの?」
――あ~、見つかっちゃった。
マイカは広美先生に余計な気を遣わせたくなかった。となりで、悲壮感に満ちた表情でみどりがマイカを見つめている。当然のことながら、クラス中の皆の視線もマイカに集まる。この状況で、「体調が悪い」と素直に認めるのは癪だった。そもそもここでドロップアウトしてしまったら、なぜこの最終時限まで頑張ってきたのかということになってしまう。
「大丈夫です!」マイカは少し不自然なぐらい大きな声で言った。クラスの皆にも、無理矢理ではあるがニコっと笑顔を振りまいた。みどりに対しては、不気味な作り笑顔のままサムズ・アップして元気をアピールした。この笑顔を作るだけでも、実際はそんなことはないだろうが、かなりの体力を消耗した気がした。
「じゃあせっかくだから」と広美先生が言った。マイカにとってそれは不吉な言葉だった。広美先生はマイカにとって部活の顧問でもあったので、他の生徒よりもマイカは特段授業でつつかれやすかった。
「都さんに例題をひとつ解いてもらおうかしら?」
マイカはギクッとした。広美先生はニコニコしてマイカを静かに見つめている。
マイカはいきなりのことで動揺を隠しきれなかった。マイカはおもむろに教室を見渡した。クラス中の誰もが気の毒そうにマイカを見つめている。中でも、となりのみどりは、泣きそうな顔をしている。
問題にチャレンジすることを恐れてはいなかったが、これで広美先生の期待を裏切って終わってしまうことがマイカにとって何より許せなかった。
――さっきノート見返して、Pの使い方はだいたい分かっている。あとは私の脳の戦闘力がどれだけ残っているかね。
マイカにとっては、もうやるしかなかった。こういうときこそポジティブにいかねばと考えた。むしろ、半年間お世話になった広美先生にいいところを見せて有終の美を飾るチャンスだ。マイカはそう覚悟し、顔を上げ「はい」と返事しようとしたが……。
――え?
また、広美先生のとなりにあれがいた。やはり、体を折りたたんでいるかのように小さく丸まっている。まるで自分の存在を隠しているかのような……。しかし、マイカにとって、まるでそれだけしかいないというぐらいの存在感であった。
――また……いる……。
マイカは再び固まってしまった。混乱するよりもまず、思考が完全に停止した。体調はすこぶる悪い。そしてピンチとチャンスが入り混じった状況。その中で現れた謎の悪魔。マイカがフリーズ状態になると同時に、教室内の時間が一瞬止まったような雰囲気に包まれた。マイカの額からしたたる一筋の汗だけが、時を進めていた。
すると、広美先生はいきなり「あはは」と笑い始めたことで静寂は破れた。マイカはその先生の笑い声で我に返った。石の悪魔もいなくなっていた。他の生徒たちもあっけにとられていた。
「冗談よ!冗談!」広美先生は、教科書をパタンと閉じて言った。「今日はこれでおしまい」
時計を見ると、あと授業が終わるまで15分ほど残されている。教室内がざわつき始める。緊張した空気が急に緩み、マイカは、体の力が一気に抜けていくのを感じた。石の悪魔については、一旦忘れよう。頭の整理をすることよりも、まず頭を休めることが先決だとマイカは思った。
広美先生は、「はいはい!最後に連絡事項を伝えて終わりにしま~す。」と元気よく言って、皆の顔を見渡した。
「これまでもお知らせしたとおり、私の授業はこれで最後になります」
広美先生がそう言うと、教室内が再びざわつきはじめる。お調子者の男子の何人かが「え~!」と大きな声で言ってみたりしている。実際ほとんど皆が、広美先生の授業を受けられなくなるのを残念がっていた。
「先生いつもどってくるの!?」と1人の男子が皆の気持ちを代弁するように言う。
「うーん、皆が卒業するまでに戻ってこられたらいいなと思うけど。」
「えー、赤ちゃん産んだらすぐ戻ってきてよ!」また別の男子が言った。
「ちょっと無茶言わないでよ!」広美先生が大げさに否定すると、教室内が笑いに包まれた。マイカはその教室の明るい空気に馴染めないようで、広美先生の話には耳を傾けるも声をあげたり笑ったりなど到底できなかったし、しようとも思わなかった。
「みんなも気になっているよね?」広美先生が、ニヤニヤとしながら再び皆の顔を見渡した。
「明日から私の代わりにみんなに数学を教えてくれる先生を発表します!」
広美先生のその言葉で、教室内が一瞬シーンとなった。数学というほぼ毎日ある授業を担当するのが、優しい先生なのか恐い先生なのかは、皆にとって非常に重大な問題である。そんな生徒たちの心理をよく広美先生も分かっていたので、それを面白がって、もったいぶった言い方をしたのである。マイカにとっては、広美先生でなくなってしまうことは残念ではあるが、後任の先生など別に誰でもよかった。
広美先生はたっぷり間を作った。生徒たちの中には、目をつむり、両手を合わせて拝むようにしている者もいた。その間がこわくなって、耳を塞ぎだす者すらいた。
――たしかに恐い先生になったら、私もいやかな。
マイカも周りの雰囲気に流されて、少し気になってきたころで、広美先生はついにその名前を発表した。
「作倉先生です!」
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