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クワイエット・テラー
青い希望 Ⅱ
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「MIOがパメラ・ブライズ発射の声明を出した!いよいよだ!」
ヒクマが皆の士気を高めるようにそう言うと、作戦本部に戻って来たSOMMEの迎撃班の隊員たち二十数名が続々と、中央モニターの前に集まってくる。
皆、つい先ほどまで、あのモニターに映し出されている場所で戦ってきたのだ。いまだ興奮醒めやらない様子で、全員が期待に胸を膨らませ、今か今かとその時は待ち構えていた。
まもなく緊急指令フロアにも、パメラ・ブライズを開発したMIO直属の研究所から、発射準備を知らせるアナウンスが入る。
パメラ・ブライズは、要塞の実験場に配備された計25からなるパラボラ・アンテナのような掃射装置から、マトリウムというこの世界固有の物質を高濃縮した光線を対象に照射する兵器である。
開発は秘密裏に行われ、一般の住民には開発計画を公表されず、その詳細に関しても、MIOに携わる人間の中でも上層部のごく少数の者にしか聞かされていなかった。MIOは根絶者イサゴージュの出現をもって、突然その存在を全住民に明らかにしたのである。
「D‐24・イスカ、続いてD‐25・アグナ、エネルギー充填完了。これをもって、25すべての装置の発射準備が整いました。」アナウンスが発射準備完了を知らせた。
あとは発射までのカウントダウンを待つばかりだ。
その間に、ロイスの後ろでひそひそ話をしているSOMMEの隊員がいた。
「なぁ、なんで発射台が25もあるんだ?しかも、全部が違う場所に配置されているんだろ?」
「なんでも1つのアンテナにかかる負荷を分散させるためらしいわよ。25っていうのは歴代デウスの数に合わせたんだとか」
「へぇ。MIOもなかなかしゃれたことするじゃない」
「これにはMIOの並々ならない思いが込められているらしいよ。それにしても、数百年もどんな種類の兵器の製造も固く禁止してきたMIOが張り切ってこんなもんを作らせてたんだからなぁ」
1人の男性隊員がそう言うと、聞いていた他の隊員が慌てて肘で小突いた。
「おい!ロイス氏がいらっしゃるんだぞ!大それたこと言うんじゃないよ!」
小突かれた方も慌てて口を手で覆う仕草を見せた。ロイスの方を見てみるが、聞こえている様子はなく、胸をなでおろした。
そして、作戦本部に2人の若者が入って来る。ひとりはレイン・ファリナであり、もうひとりはミソノという黒ブチのメガネをかけたショートヘアの少女であった。
2人は、齢19にしてSOMMEに選抜された優秀なセドレットであり、今回の作戦でもイサゴージュの迎撃にコンビで参加した。イサゴージュの頭部ど真ん中に外皮を抉る強烈な一撃を浴びせることに成功し、意気揚々と作戦本部に帰還してきたところだ。
2人が緊急指令フロアに入ると、もうすでに大勢の隊員が、モニターの前に集まっていた。2人も最後列に並んで、事態の行方を見守ることにした。
「発射は間もなくよ。この一撃に、ソートエッジ全住民の運命がかかっているわ!」
ミソノが興奮気味にレインに言った。
「そうだな。」レインは虚ろな表情で答える。
「なによ。締まらない顔しちゃって!」
ミソノはムスッとした。レインという男は、優秀ではあるが、独自の感性を大事にする性格の持ち主であった。己の信念を曲げてまで、無理に周りと波長を合わせようとしない。そんなレインの性格を、ミソノは歯がゆく感じることがたびたびある。
「別にそんなことないよ。」レインが肩をすくめて言った。
「うそ!」ミソノは語気を強めて否定する。「アンタがそういう顔している時って、だいだい何か変なこと考えているときよ。気にかかることがあるなら言いなさいよ!」
「いやぁ」
そう言って、レインは、頭をボリボリ掻いて、はぐらかそうとした。
「いいから!」
ミソノがレインの顔をじっと見つめている。その鬼気迫る表情に圧倒されて、レインは仕方がなく答える。
「たいしたことじゃないよ。ただ、あのMIOの兵器、ヤバそうだなぁと思って。」
ミソノは思わず「はぁ?」と口をついて出た。
「それってどういうことよ?良い意味で?それとも悪い意味で?」
「それも分からないよ。とにかくヤバそうだって感じるんだよ。漠然と……」
レインは、胸の前で手のひらを広げて、嘘はついていないというジェスチャーを示して見せた。ミソノは小さくため息をつき、納得いかない様子でレインから目を背ける。しかし、腐れ縁とも言うべきレインの言うことには不思議な説得力があるのを経験的に知っていたミソノは、どこか腑に落ちない気持ちであった。
「そりゃあ、マトリウムを増幅させて根絶者にぶつけるなんて、大それた兵器だと思うわ。長らく廃止されていたマトリウム炉をすべて再稼働するぐらいだから、下手したらソートエッジ全体が消し飛びかねない相当なエネルギーにも達しかねないわ。だから起動は慎重に、それも一回のみ。確かにアンタの言うとおり危険な兵器ね」
ミソノは自分自身を納得させるように話した。
「そのぐらいは俺も分かっているさ。でも、ヤバいってのはそういうことじゃないんだ」
レインは、そう言ったことをすぐに後悔した。こんなことを言えば、ミソノがますます混乱して、納得いくまで説明を求められかねないからだ。レインは、おそるおそるミソノの表情をうかがった。すると、ミソノは眉間にしわを寄せてレインを睨んでいた。
「じゃあ、何?アンタはMIOの秘密兵器でもってしても、根絶者を倒せないとでも言うの?」
「そんなことは一言も言ってないじゃないか。」
レインは呆れたようにして答える。その態度がまた、ミソノには気に喰わなかった。
「もう、このフロアから出てって!アンタみたいなのと、この歴史的瞬間を共有したくないわ」
「なんでそうなるんだよ」
「結局!」そう言ってミソノはレインに喰いかかった。「アンタは、パメラ・ブライズは根絶者を破壊できると思うの?思わないの?どっちなの!」
レインは毎度のことながら、最終的にはミソノの圧力に押し切られてしまう。レインはミソノをなだめるように言う。
「はいはい、今大事なのはそこだよな。俺だって成功を祈ってるさ。みんなと気持ちは同じだよ。」
「それ本心?」
ミソノがレインの顔を下から覗き込んで聞いた。
「もちろん本心だよ。」
ミソノは、半分は納得したようで、再び前を向きなおして、メインモニターを眺めた。レインもひとまずほっとして、今度はイチャモンをつけられないように、目にぐっと力をいれて皆と同じようにメインモニターの方を向いた。
発射準備完了からまもなく発射のカウントダウンを知らせるアナウンスが入った。発射まであと1分だという。一気にSOMME緊急指令フロアに緊張感が走った。ロイスは固唾を飲んでモニターを見つめている。
イサゴージュは依然として、無数のワイヤーに繋がれたまま、微動だにしない。モニターの中は不気味なぐらい静かだ。石膏のような外皮は、レインやミソノも参加した迎撃チームの活躍により、ところどころ欠落ち、ひび割れて内部から赤い色の体液が噴出している。それは人間の血とは違って、やや濃い橙色の光を発していた。
研究所からのアナウンスが発射10秒前を告げる。
「さぁ俺たちの希望ものせてぶっ放せ!!」
ヒクマがそう言うと、それに続くようにSOMMEの隊員たちがそれに続けて「いけ!いけ!」「ふっとばせ!」などと思い思いの言葉を叫んだ。
それらとは対照的に、ルミナは目を細めて静かにモニターを眺めている。SOMMEの隊員たちは、静かに祈るような眼差しで見つめる者もいれば、ヒクマと共に場の熱気を高めている者もいる。しかし、全員が、数十秒後には根絶者が撃破される姿がモニターに映し出されることを望んでいた。
そして、いよいよ発射のときがきた。ヒクマらによるざわめきは一瞬で鎮静化し、全員が固唾をのんでその時を迎えようとしていた。5秒前、4、3、2、1…。
「発射!」
各所に配置された25の掃射装置全てから、凝縮されたマトリウムの青い光線が同時に放たれた。それぞれの光線は、根絶者の頭部の一点めがけて一直線に進んでいった。青い光の筋が根絶者の頭部へと、ほぼ同時にたどり着き、25本の光は一点に集中した。
発射の合図があった瞬間、モニターが鮮やかな青い光で満たされる。その眩い閃光で、フロアにいた全員の真剣な顔が「わっ」と驚きの表情に変わる。鮮烈な光による目潰しを受けて一旦はモニターから皆目を逸らした。
そして、再び正面を向いたときには、モニター内に収まっているはずの根絶者は、衝撃によって生じた煙によって隠れて見えなくなっていた。どのカメラの角度から映してみても、結果がどうなったか分からなかった。
しかし、結果がどうなったかより、初めて見る兵器の迫力に、多くの者が口をポカンと開けて唖然としおり、フロア内は静まりかえっていた。
「……やったか!?」ヒクマが静寂を破った。「手ごたえはあったように見えたが!」
ヒクマは周りに同意を促すように言った。すると、「うんうん!」と皆が頷き合った。ヒクマの第一声でフロア内は熱気を取り戻し、SOMMEの隊員たちは次々と、一瞬の出来事を振り返るように話し始めた。
「すげえ。まばたきしてたら、あっという間に目の前、真っ青でびっくりしたよ」
「ほんの一瞬だが、やつの頭に青い点が見えた気がするんだが!?」
「俺も見えた!命中したんだ!間違いない!」
「そりゃあ命中だろうよ!さすがMIOだ!」
フロア内は、ポジティブなムードが漂い始めていた。ロイスとルミナも、声は発しないが、期待の眼差しでじっとモニターを見つめている。
「すごい……」ミソノがボソっとつぶやいた。「マトリウム特有の濃い青の光は、学校の実験で見たことがあったけど……大量のマトリウムを一点に集めるとあんなことになるのね」
ミソノが目を見開いた状態で、レインの方に視線を向けた。
「こりゃあ根絶者といえども、ひとたまりもないだろうな」
レインは感心したような口ぶりで言った。
「あの煙が邪魔ね。どうなったか分からないじゃない……!」
「頭部は吹き飛んでなくなっているんじゃないか?」
「だとしたら、気持ち悪いわね。首なしの怪物なんて見たくないわ」
「よく言うよ。さっきまであいつの頭部めがけて何発もかましていたくせに。俺は根絶者より、ミソノの方が怖いよ」
そう言ってレインがクスクス笑うと、ミソノはレインの耳を思い切り引っ張った。
根絶者の周辺を覆っていた煙は、やがて晴れていき、状況は明らかになる――
だが、固唾を飲んで見守っていたSOMMEの隊員たちにとって、そこに映し出された悪鬼の状態は見るにおぞましいものだった。
ヒクマが皆の士気を高めるようにそう言うと、作戦本部に戻って来たSOMMEの迎撃班の隊員たち二十数名が続々と、中央モニターの前に集まってくる。
皆、つい先ほどまで、あのモニターに映し出されている場所で戦ってきたのだ。いまだ興奮醒めやらない様子で、全員が期待に胸を膨らませ、今か今かとその時は待ち構えていた。
まもなく緊急指令フロアにも、パメラ・ブライズを開発したMIO直属の研究所から、発射準備を知らせるアナウンスが入る。
パメラ・ブライズは、要塞の実験場に配備された計25からなるパラボラ・アンテナのような掃射装置から、マトリウムというこの世界固有の物質を高濃縮した光線を対象に照射する兵器である。
開発は秘密裏に行われ、一般の住民には開発計画を公表されず、その詳細に関しても、MIOに携わる人間の中でも上層部のごく少数の者にしか聞かされていなかった。MIOは根絶者イサゴージュの出現をもって、突然その存在を全住民に明らかにしたのである。
「D‐24・イスカ、続いてD‐25・アグナ、エネルギー充填完了。これをもって、25すべての装置の発射準備が整いました。」アナウンスが発射準備完了を知らせた。
あとは発射までのカウントダウンを待つばかりだ。
その間に、ロイスの後ろでひそひそ話をしているSOMMEの隊員がいた。
「なぁ、なんで発射台が25もあるんだ?しかも、全部が違う場所に配置されているんだろ?」
「なんでも1つのアンテナにかかる負荷を分散させるためらしいわよ。25っていうのは歴代デウスの数に合わせたんだとか」
「へぇ。MIOもなかなかしゃれたことするじゃない」
「これにはMIOの並々ならない思いが込められているらしいよ。それにしても、数百年もどんな種類の兵器の製造も固く禁止してきたMIOが張り切ってこんなもんを作らせてたんだからなぁ」
1人の男性隊員がそう言うと、聞いていた他の隊員が慌てて肘で小突いた。
「おい!ロイス氏がいらっしゃるんだぞ!大それたこと言うんじゃないよ!」
小突かれた方も慌てて口を手で覆う仕草を見せた。ロイスの方を見てみるが、聞こえている様子はなく、胸をなでおろした。
そして、作戦本部に2人の若者が入って来る。ひとりはレイン・ファリナであり、もうひとりはミソノという黒ブチのメガネをかけたショートヘアの少女であった。
2人は、齢19にしてSOMMEに選抜された優秀なセドレットであり、今回の作戦でもイサゴージュの迎撃にコンビで参加した。イサゴージュの頭部ど真ん中に外皮を抉る強烈な一撃を浴びせることに成功し、意気揚々と作戦本部に帰還してきたところだ。
2人が緊急指令フロアに入ると、もうすでに大勢の隊員が、モニターの前に集まっていた。2人も最後列に並んで、事態の行方を見守ることにした。
「発射は間もなくよ。この一撃に、ソートエッジ全住民の運命がかかっているわ!」
ミソノが興奮気味にレインに言った。
「そうだな。」レインは虚ろな表情で答える。
「なによ。締まらない顔しちゃって!」
ミソノはムスッとした。レインという男は、優秀ではあるが、独自の感性を大事にする性格の持ち主であった。己の信念を曲げてまで、無理に周りと波長を合わせようとしない。そんなレインの性格を、ミソノは歯がゆく感じることがたびたびある。
「別にそんなことないよ。」レインが肩をすくめて言った。
「うそ!」ミソノは語気を強めて否定する。「アンタがそういう顔している時って、だいだい何か変なこと考えているときよ。気にかかることがあるなら言いなさいよ!」
「いやぁ」
そう言って、レインは、頭をボリボリ掻いて、はぐらかそうとした。
「いいから!」
ミソノがレインの顔をじっと見つめている。その鬼気迫る表情に圧倒されて、レインは仕方がなく答える。
「たいしたことじゃないよ。ただ、あのMIOの兵器、ヤバそうだなぁと思って。」
ミソノは思わず「はぁ?」と口をついて出た。
「それってどういうことよ?良い意味で?それとも悪い意味で?」
「それも分からないよ。とにかくヤバそうだって感じるんだよ。漠然と……」
レインは、胸の前で手のひらを広げて、嘘はついていないというジェスチャーを示して見せた。ミソノは小さくため息をつき、納得いかない様子でレインから目を背ける。しかし、腐れ縁とも言うべきレインの言うことには不思議な説得力があるのを経験的に知っていたミソノは、どこか腑に落ちない気持ちであった。
「そりゃあ、マトリウムを増幅させて根絶者にぶつけるなんて、大それた兵器だと思うわ。長らく廃止されていたマトリウム炉をすべて再稼働するぐらいだから、下手したらソートエッジ全体が消し飛びかねない相当なエネルギーにも達しかねないわ。だから起動は慎重に、それも一回のみ。確かにアンタの言うとおり危険な兵器ね」
ミソノは自分自身を納得させるように話した。
「そのぐらいは俺も分かっているさ。でも、ヤバいってのはそういうことじゃないんだ」
レインは、そう言ったことをすぐに後悔した。こんなことを言えば、ミソノがますます混乱して、納得いくまで説明を求められかねないからだ。レインは、おそるおそるミソノの表情をうかがった。すると、ミソノは眉間にしわを寄せてレインを睨んでいた。
「じゃあ、何?アンタはMIOの秘密兵器でもってしても、根絶者を倒せないとでも言うの?」
「そんなことは一言も言ってないじゃないか。」
レインは呆れたようにして答える。その態度がまた、ミソノには気に喰わなかった。
「もう、このフロアから出てって!アンタみたいなのと、この歴史的瞬間を共有したくないわ」
「なんでそうなるんだよ」
「結局!」そう言ってミソノはレインに喰いかかった。「アンタは、パメラ・ブライズは根絶者を破壊できると思うの?思わないの?どっちなの!」
レインは毎度のことながら、最終的にはミソノの圧力に押し切られてしまう。レインはミソノをなだめるように言う。
「はいはい、今大事なのはそこだよな。俺だって成功を祈ってるさ。みんなと気持ちは同じだよ。」
「それ本心?」
ミソノがレインの顔を下から覗き込んで聞いた。
「もちろん本心だよ。」
ミソノは、半分は納得したようで、再び前を向きなおして、メインモニターを眺めた。レインもひとまずほっとして、今度はイチャモンをつけられないように、目にぐっと力をいれて皆と同じようにメインモニターの方を向いた。
発射準備完了からまもなく発射のカウントダウンを知らせるアナウンスが入った。発射まであと1分だという。一気にSOMME緊急指令フロアに緊張感が走った。ロイスは固唾を飲んでモニターを見つめている。
イサゴージュは依然として、無数のワイヤーに繋がれたまま、微動だにしない。モニターの中は不気味なぐらい静かだ。石膏のような外皮は、レインやミソノも参加した迎撃チームの活躍により、ところどころ欠落ち、ひび割れて内部から赤い色の体液が噴出している。それは人間の血とは違って、やや濃い橙色の光を発していた。
研究所からのアナウンスが発射10秒前を告げる。
「さぁ俺たちの希望ものせてぶっ放せ!!」
ヒクマがそう言うと、それに続くようにSOMMEの隊員たちがそれに続けて「いけ!いけ!」「ふっとばせ!」などと思い思いの言葉を叫んだ。
それらとは対照的に、ルミナは目を細めて静かにモニターを眺めている。SOMMEの隊員たちは、静かに祈るような眼差しで見つめる者もいれば、ヒクマと共に場の熱気を高めている者もいる。しかし、全員が、数十秒後には根絶者が撃破される姿がモニターに映し出されることを望んでいた。
そして、いよいよ発射のときがきた。ヒクマらによるざわめきは一瞬で鎮静化し、全員が固唾をのんでその時を迎えようとしていた。5秒前、4、3、2、1…。
「発射!」
各所に配置された25の掃射装置全てから、凝縮されたマトリウムの青い光線が同時に放たれた。それぞれの光線は、根絶者の頭部の一点めがけて一直線に進んでいった。青い光の筋が根絶者の頭部へと、ほぼ同時にたどり着き、25本の光は一点に集中した。
発射の合図があった瞬間、モニターが鮮やかな青い光で満たされる。その眩い閃光で、フロアにいた全員の真剣な顔が「わっ」と驚きの表情に変わる。鮮烈な光による目潰しを受けて一旦はモニターから皆目を逸らした。
そして、再び正面を向いたときには、モニター内に収まっているはずの根絶者は、衝撃によって生じた煙によって隠れて見えなくなっていた。どのカメラの角度から映してみても、結果がどうなったか分からなかった。
しかし、結果がどうなったかより、初めて見る兵器の迫力に、多くの者が口をポカンと開けて唖然としおり、フロア内は静まりかえっていた。
「……やったか!?」ヒクマが静寂を破った。「手ごたえはあったように見えたが!」
ヒクマは周りに同意を促すように言った。すると、「うんうん!」と皆が頷き合った。ヒクマの第一声でフロア内は熱気を取り戻し、SOMMEの隊員たちは次々と、一瞬の出来事を振り返るように話し始めた。
「すげえ。まばたきしてたら、あっという間に目の前、真っ青でびっくりしたよ」
「ほんの一瞬だが、やつの頭に青い点が見えた気がするんだが!?」
「俺も見えた!命中したんだ!間違いない!」
「そりゃあ命中だろうよ!さすがMIOだ!」
フロア内は、ポジティブなムードが漂い始めていた。ロイスとルミナも、声は発しないが、期待の眼差しでじっとモニターを見つめている。
「すごい……」ミソノがボソっとつぶやいた。「マトリウム特有の濃い青の光は、学校の実験で見たことがあったけど……大量のマトリウムを一点に集めるとあんなことになるのね」
ミソノが目を見開いた状態で、レインの方に視線を向けた。
「こりゃあ根絶者といえども、ひとたまりもないだろうな」
レインは感心したような口ぶりで言った。
「あの煙が邪魔ね。どうなったか分からないじゃない……!」
「頭部は吹き飛んでなくなっているんじゃないか?」
「だとしたら、気持ち悪いわね。首なしの怪物なんて見たくないわ」
「よく言うよ。さっきまであいつの頭部めがけて何発もかましていたくせに。俺は根絶者より、ミソノの方が怖いよ」
そう言ってレインがクスクス笑うと、ミソノはレインの耳を思い切り引っ張った。
根絶者の周辺を覆っていた煙は、やがて晴れていき、状況は明らかになる――
だが、固唾を飲んで見守っていたSOMMEの隊員たちにとって、そこに映し出された悪鬼の状態は見るにおぞましいものだった。
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