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クワイエット・テラー
合流/発火 Ⅳ
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「君がイセリックか?」マイカに声をかけたのはヒクマだった。
マイカはレインが去ってからは、SOMMEの隊員には一瞥もくれなかった。ヒクマの問いかけに対しても、振り向きもせず、「分かりません」とだけ答えた。
「君は我々をあれから救うことを、デウスに託された」
ヒクマはマイカの横に並び、ともにイサゴージュを見つめて言った。
「それも分かりません」
マイカはただまっすぐ前を向いて答えた。レインに振り回されて興奮状態であったミソノにとって、マイカのその態度は気に喰わなかった。ミソノは、マイカの背後に歩み寄った。
「聞き捨てなりませんね!あなたが現実世界の人間だということは分かっているんです。根絶者を倒しに来たのでないなら、あなたは何をしにここを訪れたのですか?」
「分かりません」マイカはまたそう答えた。しかし、すぐに付け加えた。「私が、あなたたちを救うためにここを訪れたのかどうかは分かりません。でも、私は私自身のためにも、あれを倒さなければ……」
「ちょっと!それはどういうこ……!」
ミソノが食い下がろうとすると、ヒクマがそれを制止した。
「ミソノ!やめろ!」
ヒクマは、マイカが並々ならない雰囲気で、イサゴージュと相対しているのをひしひしと感じていた。これはもう我々が口を挟む余地はないのでは、と考えた。
マイカは集中すればするほど、全身が浮遊しそうなくらい軽くなっていく気がした。さっきまでは全くそんな感覚はなかったはずだが、何か自分の知らない力が芽生えてくる、そんなふうに思えてきた。
――イセリックの力なんて分からないけど、あれを倒す力がほしい。
マイカは目をそっと閉じた。それはイサゴージュから目を背けるためではない。内なる力を呼び起こさせるため――
ヒクマとミソノは、マイカと少し距離をとってじっと見守った。
「あっ!」ミソノが思わず声を漏らし、反射的に口をふさぐ。
「トランス状態にでも入ったか?」ヒクマはニィッと白い歯を見せた。
マイカの全身から白い光が溢れだし、蒸気のように宙を踊っていた。その後ろ姿は神々しく、SOMMEのメンバーたちは皆、目を見張った。そして確信した。デウスの使者という5年前の伝説はやはり真実だったのだと。
マイカは、血が沸騰しているのかと思うぐらい体が熱くなるのを感じた。ゆっくり目を開き、掌を上に向けながら両手を前に伸ばした。
その両手からは白い粉雪のような光がボロボロと噴出している。マイカは自分が魔法使いにでもなったかのように感じた。気持ちが高ぶれば高ぶるほど、ますますその白い光は噴き出し煌々と輝く。
「あ、あれ!」
突然ミソノが叫んだ。ミソノはイサゴージュを指差していた。
「止まっている…?」
ヒクマは目を疑った。マイカが光を放った瞬間、ゆっくりとしかし確実に前進していたイサゴージュが硬直するように動きを止めていた。SOMMEの隊員たちは、「おぉ~!」と歓声をあげ、互いに喜び合った。
マイカも、イサゴージュが動きを止めたのをその目で確認する。
だが、その瞬間、急に白い光が噴出する勢いはどんどんと弱まっていった。
「光が消えていく?」
マイカは焦り、うろたえた。その光を自在に操ることはできず、風船がしぼんでいくように、光が弱まっていくのをただ見つめるしかなかった。
様子がおかしいのは、ヒクマもミソノもすぐに気付いた。
「ちょっと……、大丈夫ですか!?」ミソノが慌てて声をかける。
「だめ!」マイカが苦しそうな顔でミソノの方に振り向いた。「力がどんどん抜けていく……」
「おいおい!どういうことだよ!」ヒクマが不可解そうな表情でそうこぼした。
歓喜の瞬間はほんの一瞬だけであった。すぐにその場は再び緊張した空気が流れた。SOMMEの隊員たちも興奮の熱をそのまま応援に注いだ。口ぐちに「がんばれ!」だの「諦めるな!」などとマイカに声をかける。
しかし、その応援もむなしく、マイカの体から溢れていた白い光は完全に消失し、マイカ自身も疲れがどっとでてきてへたり込んでしまった。マイカはうずくまりながら、振動とともにズウンという大きな音を再び聞くこととなった。
「やっぱりダメなの……かな?」
マイカは、全身の力がなくなり、立つこともままならなかった。このような状態で、あの力をもう一度出せる気がしない。
マイカは下を見ることしかできなかった。前を向けば、絶望を目の当たりにし、後ろを向けば失望に満ちた眼差しが注がれる。
マイカは土壇場で、ワイズの言葉を思い出す。そしてそれを声に出した。
「負けてはいけない。その気持ちが私を前進させる。最後まで諦めない。」
ヒクマとミソノは、俯いたままブツブツとつぶやき始めたマイカに、触れてはいけない異様な迫力を感じ、ただただ見守るだけであった。
「何か言っているな」ヒクマがマイカの邪魔をしないよう小声でミソノに言う。
「諦めては……いないみたいですが……」
マイカはもう一度集中して光を呼び起こさせようとした。特別な力があることは分かった。あとはそれを引き出すだけ。集中すればするほど胸が苦しくなる。マイカは胸を押さえて、両手を床についた。
そして、マイカはヒューヒューと苦しそうな呼吸をしはじめた。苦しさがどんどんと増しているのが、ミソノとヒクマにも伝わってきて、さすがに二人はマイカへ駆け寄り、身体を起こして左右で支えた。
「辛いか!?」
ヒクマがマイカに尋ねる。
「辛い」マイカは苦悶に満ちた表情で答えた。「内臓という内臓が口から飛び出しそうなくらい」
「あなただけが頼りなんです!お願いします!頑張ってください!」
ミソノがマイカを必死で励ました。マイカはそんなミソノの顔をまじまじと見つめた。
「レインは……私を助けてくれた。……だから……彼を責めないで……」
マイカの声は絶え絶えだった。
「今そんなことはどうでもいいです!あなたは早くイセリックの力を取り戻してください!」
「ごめんなさい」そう言って、マイカは顔を上げた。視線の先にはイサゴージュの胸部があった。もう頭部は見上げなければ確認できない位置まで来ている。あの悪夢と同じ状況になった――
「もう……大丈夫です。ありがとうございます」
マイカは立ちあがると、ヒクマとミソノも支えていた手をゆっくりと離した。立ちあがったものの、依然として息が荒いマイカを見て、ヒクマはミソノに言う。
「ここは諦めたほうがいいな。」
「しかし、立て直している猶予などあるんでしょうか?」ミソノが落ち着かない様子でヒクマに意見した。ヒクマもそれは分かっているようで居た堪れない様子であった。
「ここで……」マイカは二人に向けて言った。
マイカはこの建物に何の愛着もないものの、レインの口から出まかせかもしれない一言が気にかかっていた。そのことが、マイカにもう一踏ん張りをさせた。思い切り歯を食いしばって、今一度、意識をイサゴージュに向けて集中させた。
――あっ……。
しかし、その瞬間急にマイカの視界は揺らぎ、イサゴージュが幾重にも重なって見えた。そして、立ちくらみしたかのように目の前が白一色になり、マイカはがっくりとうなだれた。
「もう……ダメ……なの?」マイカの目から一筋の涙が頬を伝った。
「私、ちゃんと立ち向かうことができたのに……」
ヒクマがフラフラとして倒れそうになるマイカを抱きかかえる。
「おい!しっかりしろ!」
ヒクマがマイカを揺さぶった。マイカは意識を失ったかのように抜け殻の状態になっていた。ミソノも必死に声をかける。
「どうしてしまわれたのですか!デウスの使者!起きてください!」
マイカはデウスの使者と呼ばれたせいなのか、ほんの一瞬だが、自分が誰なのか分からなくなった。
――私は、都マイカ……だよね?今、ちょっとだけ自信がなかった。自分であることに。記憶を失ったというか……他の誰かだったみたい。
とても奇妙な感覚であった。本当の意味で自分を見失いかけたマイカは、SOMMEの隊員らが迫りくるイサゴージュの恐怖にけたたましく悲鳴を上げる中、そのまま眠るように気を失ってしまった。
ヒクマはマイカを抱きかかえたまま、苦い表情で叫んだ。
「もうぶつかるぞ!一旦退避だ!」
「しかし、ここを突破されたらまずいですよ!?」
ミソノがヒクマを諌めるように言った。
「そんなこと言ったってしょうがないだろ!」
苛立ちながら、ヒクマはマイカを肩にひょいと担ぎ上げた。
「とりあえずこの急場をしのがないとな!」
イサゴージュの足音に戦慄しながらも、ヒクマと彼の部下たちは一斉に、躊躇することなくクルーズに向かって走り出した。もう後ろを振り向いて、状況を確認する猶予すら残されていなかった。
すると突然、ヒクマらの頭上で大きな爆発音が鳴り響く。
何が起きたか確認するまでもなく、グリーンテラス一面にイサゴージュの剥がれ落ちた皮膚と思われる肉片がボタボタと降り注いだ。
「うわっ!汚ねぇ!」
ヒクマやその部下たちの頭にもそのブヨブヨとしたゼリー状の断片が落ちてきた。
SOMMEの隊員らはすぐに、上空に一機、指揮官専用のエアリアルクルーズ「スーペル」の姿をとらえた。
「アラヤとエデレン指揮官だ!」
マイカはレインが去ってからは、SOMMEの隊員には一瞥もくれなかった。ヒクマの問いかけに対しても、振り向きもせず、「分かりません」とだけ答えた。
「君は我々をあれから救うことを、デウスに託された」
ヒクマはマイカの横に並び、ともにイサゴージュを見つめて言った。
「それも分かりません」
マイカはただまっすぐ前を向いて答えた。レインに振り回されて興奮状態であったミソノにとって、マイカのその態度は気に喰わなかった。ミソノは、マイカの背後に歩み寄った。
「聞き捨てなりませんね!あなたが現実世界の人間だということは分かっているんです。根絶者を倒しに来たのでないなら、あなたは何をしにここを訪れたのですか?」
「分かりません」マイカはまたそう答えた。しかし、すぐに付け加えた。「私が、あなたたちを救うためにここを訪れたのかどうかは分かりません。でも、私は私自身のためにも、あれを倒さなければ……」
「ちょっと!それはどういうこ……!」
ミソノが食い下がろうとすると、ヒクマがそれを制止した。
「ミソノ!やめろ!」
ヒクマは、マイカが並々ならない雰囲気で、イサゴージュと相対しているのをひしひしと感じていた。これはもう我々が口を挟む余地はないのでは、と考えた。
マイカは集中すればするほど、全身が浮遊しそうなくらい軽くなっていく気がした。さっきまでは全くそんな感覚はなかったはずだが、何か自分の知らない力が芽生えてくる、そんなふうに思えてきた。
――イセリックの力なんて分からないけど、あれを倒す力がほしい。
マイカは目をそっと閉じた。それはイサゴージュから目を背けるためではない。内なる力を呼び起こさせるため――
ヒクマとミソノは、マイカと少し距離をとってじっと見守った。
「あっ!」ミソノが思わず声を漏らし、反射的に口をふさぐ。
「トランス状態にでも入ったか?」ヒクマはニィッと白い歯を見せた。
マイカの全身から白い光が溢れだし、蒸気のように宙を踊っていた。その後ろ姿は神々しく、SOMMEのメンバーたちは皆、目を見張った。そして確信した。デウスの使者という5年前の伝説はやはり真実だったのだと。
マイカは、血が沸騰しているのかと思うぐらい体が熱くなるのを感じた。ゆっくり目を開き、掌を上に向けながら両手を前に伸ばした。
その両手からは白い粉雪のような光がボロボロと噴出している。マイカは自分が魔法使いにでもなったかのように感じた。気持ちが高ぶれば高ぶるほど、ますますその白い光は噴き出し煌々と輝く。
「あ、あれ!」
突然ミソノが叫んだ。ミソノはイサゴージュを指差していた。
「止まっている…?」
ヒクマは目を疑った。マイカが光を放った瞬間、ゆっくりとしかし確実に前進していたイサゴージュが硬直するように動きを止めていた。SOMMEの隊員たちは、「おぉ~!」と歓声をあげ、互いに喜び合った。
マイカも、イサゴージュが動きを止めたのをその目で確認する。
だが、その瞬間、急に白い光が噴出する勢いはどんどんと弱まっていった。
「光が消えていく?」
マイカは焦り、うろたえた。その光を自在に操ることはできず、風船がしぼんでいくように、光が弱まっていくのをただ見つめるしかなかった。
様子がおかしいのは、ヒクマもミソノもすぐに気付いた。
「ちょっと……、大丈夫ですか!?」ミソノが慌てて声をかける。
「だめ!」マイカが苦しそうな顔でミソノの方に振り向いた。「力がどんどん抜けていく……」
「おいおい!どういうことだよ!」ヒクマが不可解そうな表情でそうこぼした。
歓喜の瞬間はほんの一瞬だけであった。すぐにその場は再び緊張した空気が流れた。SOMMEの隊員たちも興奮の熱をそのまま応援に注いだ。口ぐちに「がんばれ!」だの「諦めるな!」などとマイカに声をかける。
しかし、その応援もむなしく、マイカの体から溢れていた白い光は完全に消失し、マイカ自身も疲れがどっとでてきてへたり込んでしまった。マイカはうずくまりながら、振動とともにズウンという大きな音を再び聞くこととなった。
「やっぱりダメなの……かな?」
マイカは、全身の力がなくなり、立つこともままならなかった。このような状態で、あの力をもう一度出せる気がしない。
マイカは下を見ることしかできなかった。前を向けば、絶望を目の当たりにし、後ろを向けば失望に満ちた眼差しが注がれる。
マイカは土壇場で、ワイズの言葉を思い出す。そしてそれを声に出した。
「負けてはいけない。その気持ちが私を前進させる。最後まで諦めない。」
ヒクマとミソノは、俯いたままブツブツとつぶやき始めたマイカに、触れてはいけない異様な迫力を感じ、ただただ見守るだけであった。
「何か言っているな」ヒクマがマイカの邪魔をしないよう小声でミソノに言う。
「諦めては……いないみたいですが……」
マイカはもう一度集中して光を呼び起こさせようとした。特別な力があることは分かった。あとはそれを引き出すだけ。集中すればするほど胸が苦しくなる。マイカは胸を押さえて、両手を床についた。
そして、マイカはヒューヒューと苦しそうな呼吸をしはじめた。苦しさがどんどんと増しているのが、ミソノとヒクマにも伝わってきて、さすがに二人はマイカへ駆け寄り、身体を起こして左右で支えた。
「辛いか!?」
ヒクマがマイカに尋ねる。
「辛い」マイカは苦悶に満ちた表情で答えた。「内臓という内臓が口から飛び出しそうなくらい」
「あなただけが頼りなんです!お願いします!頑張ってください!」
ミソノがマイカを必死で励ました。マイカはそんなミソノの顔をまじまじと見つめた。
「レインは……私を助けてくれた。……だから……彼を責めないで……」
マイカの声は絶え絶えだった。
「今そんなことはどうでもいいです!あなたは早くイセリックの力を取り戻してください!」
「ごめんなさい」そう言って、マイカは顔を上げた。視線の先にはイサゴージュの胸部があった。もう頭部は見上げなければ確認できない位置まで来ている。あの悪夢と同じ状況になった――
「もう……大丈夫です。ありがとうございます」
マイカは立ちあがると、ヒクマとミソノも支えていた手をゆっくりと離した。立ちあがったものの、依然として息が荒いマイカを見て、ヒクマはミソノに言う。
「ここは諦めたほうがいいな。」
「しかし、立て直している猶予などあるんでしょうか?」ミソノが落ち着かない様子でヒクマに意見した。ヒクマもそれは分かっているようで居た堪れない様子であった。
「ここで……」マイカは二人に向けて言った。
マイカはこの建物に何の愛着もないものの、レインの口から出まかせかもしれない一言が気にかかっていた。そのことが、マイカにもう一踏ん張りをさせた。思い切り歯を食いしばって、今一度、意識をイサゴージュに向けて集中させた。
――あっ……。
しかし、その瞬間急にマイカの視界は揺らぎ、イサゴージュが幾重にも重なって見えた。そして、立ちくらみしたかのように目の前が白一色になり、マイカはがっくりとうなだれた。
「もう……ダメ……なの?」マイカの目から一筋の涙が頬を伝った。
「私、ちゃんと立ち向かうことができたのに……」
ヒクマがフラフラとして倒れそうになるマイカを抱きかかえる。
「おい!しっかりしろ!」
ヒクマがマイカを揺さぶった。マイカは意識を失ったかのように抜け殻の状態になっていた。ミソノも必死に声をかける。
「どうしてしまわれたのですか!デウスの使者!起きてください!」
マイカはデウスの使者と呼ばれたせいなのか、ほんの一瞬だが、自分が誰なのか分からなくなった。
――私は、都マイカ……だよね?今、ちょっとだけ自信がなかった。自分であることに。記憶を失ったというか……他の誰かだったみたい。
とても奇妙な感覚であった。本当の意味で自分を見失いかけたマイカは、SOMMEの隊員らが迫りくるイサゴージュの恐怖にけたたましく悲鳴を上げる中、そのまま眠るように気を失ってしまった。
ヒクマはマイカを抱きかかえたまま、苦い表情で叫んだ。
「もうぶつかるぞ!一旦退避だ!」
「しかし、ここを突破されたらまずいですよ!?」
ミソノがヒクマを諌めるように言った。
「そんなこと言ったってしょうがないだろ!」
苛立ちながら、ヒクマはマイカを肩にひょいと担ぎ上げた。
「とりあえずこの急場をしのがないとな!」
イサゴージュの足音に戦慄しながらも、ヒクマと彼の部下たちは一斉に、躊躇することなくクルーズに向かって走り出した。もう後ろを振り向いて、状況を確認する猶予すら残されていなかった。
すると突然、ヒクマらの頭上で大きな爆発音が鳴り響く。
何が起きたか確認するまでもなく、グリーンテラス一面にイサゴージュの剥がれ落ちた皮膚と思われる肉片がボタボタと降り注いだ。
「うわっ!汚ねぇ!」
ヒクマやその部下たちの頭にもそのブヨブヨとしたゼリー状の断片が落ちてきた。
SOMMEの隊員らはすぐに、上空に一機、指揮官専用のエアリアルクルーズ「スーペル」の姿をとらえた。
「アラヤとエデレン指揮官だ!」
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