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第百二十六話

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 あれから3か月以上過ぎた。魔物はどんどんと強くなり。冒険者は手が出せない様になっていた。

 町には防壁が造られ魔物の侵入を防いでいる。それでも襲って来る魔物はリュートが退治している。

 邪神の子は相変わらず不定期で現れるが、今のとこ対処出来ている。ただ、徐々に強い魔物をベースにした邪神の子が生まれるので何時までこの対処方法が通じるかは分からない。

 エリシアたちは外に出られないのが不満そうだが、町に入って来た魔物には積極的に攻撃を仕掛けている。冒険者たちが防壁を守っているので、この町は何とか存続の危機から逃れている状態だ。

 まだ、町の中で邪神の子が現れていないのが救いだろう。

 町が封鎖されていると言う事は交易が出来ないと言う事だ、更に言えば町の外にある小麦畑は捨てている状態である。塩の確保は冒険者ギルドが行ったので何とか邪神が生まれるまでは持ちそうだ。だが、来年の小麦は全滅だろう。

 リュートが居る町でこの状態だ。他の街ではどうなっているのだろう?全滅した街も多いだろう。

「ギンガ、邪神の子の反応はどうだ?」

「今の所、反応は無いな。多分次の邪神の子が最後では無いかと思う。」

「最後と言う事は最強の邪神の子が生まれると?」

「邪神の子は徐々に強い魔物をベースにしている、最後はきっとドラゴンだろうな、ドラゴンは魔物の頂点にして最強だ。」

「今までの経験上、邪神の子の戦力はベースの魔物の100倍程度だ。ドラゴンが100倍強くなったら、どの位強くなるのか見当もつかないな。」

「済まんが我は力になれそうにない。」

「出現する場所と時間が特定できるだけでもありがたい。ギンガは役に立ってるさ。」

 それから四日後の事だった。ギンガが最後の邪神の子の出現を察知した。

「やはりこの大陸か?」

「そうだ。大陸のほぼ中央やや北よりだな。」

「まだ、出現はしてないんだな?」

「どうやら、邪神の子は強い物ほど出現に時間が掛かる様だ。」

「じゃあ、行くか?」

「皆に挨拶はしなくて良いのか?」

「無事に帰ってくるつもりだから、問題無い。」

「そうか、ではイメージを送る。」

 ギンガから届いたイメージは広大な荒野だった。

 イメージ通りの場所に転移する。

 そして、そこには巨大な青いドラゴンが居た。

「こいつを倒しても意味が無いんだよな?」

「うむ、邪神の子を倒さねば終わらない。」

「あと、どの位で邪神の子になる?」

「この様子だと、1時間位はかかりそうだ。」

 ドラゴンの体に魔素が吸い込まれて行くのが感じられる。だが、その巨体ゆえ、魔素が満ちるまで時間がかかるのだろう。

「しかし、まずいな、こいつが邪神の子になったらパワーとスピードでは勝ち目が無いぞ。」

「うむ、更に竜種は装甲が固い。弱点らしい弱点が無いな。」

「ちなみにこいつが最後の邪神の子と言う事は、邪神は何時誕生するんだ?」

「おそらくだが、1週間後あたりだろう。」

 神との邂逅から1年弱、俺は結局答えを出せなかったな。こいつを倒せば正解を教えて貰えるのだろうか?

「む?様子がおかしいぞ。」

「どうした?」

「この地に魔物が押し寄せている。」

「どう言う事だ?」

「解らんが、巻き込まれるぞ。」

 ギンガの言葉に慌てて空中に逃げる。プロテクトで足場を作りそこから観察する事にする。

 上空から見ると様子が解り易い。おそらく数万匹の魔物がドラゴン目掛けて押し寄せてきている。

「魔物がドラゴンと戦うのか?」

「それはありえないだろう。」

 最初の魔物がドラゴンに突進すると、ドラゴンは魔物を食った。

「え?まさか、あの魔物たちはドラゴンの餌か?」

「空気中の魔素だけでは足りずに魔物から魔素を得ている様だ。」

「数万は居るぞ。それを食ったらどれだけの魔素が集まるんだ?」

「解らんが、亜神並みのバケモノが生まれるだろうな。」

 亜神って、今の俺の力で亜神に対抗できるのか?

 みるみると魔物の数が減って行く。それに比例する様にドラゴンの体が大きくなっていく。

 俺が昔倒したエンシェントドラゴンは70メートル位だったが、青いドラゴンは100メートルを超えている。

「ヤバいな。フェンリルって不死なんだろう?過去の邪神の子ってどうやって倒したんだ?」

「フェンリルは不死では無いぞ。死んでも魂が地上に残るだけだ。新しい依り代を見つけてそこに宿る。つまり、記憶は引き継いで居ないのだ。」

「じゃあ、何故邪神の子の事が判るんだ?」

「記憶ではなく魂に刻まれているのだ。」

「要するに手づまりなわけだな。」

「どうするのだ、主?」

「やれるだけやってみるさ。」

「そろそろ生まれるぞ。」

「解ってる。これだけ離れてても威圧感が半端じゃないからな。」

 ドラゴンの体は120メートル程に膨れ上がっている。邪神の子になる前触れだ。

 数秒後魔力の爆発と共に邪神の子が誕生する。

 それは今までの歪な形とは違った。美しい程に均整の取れた綺麗な金色のドラゴンがそこに居たのだ。

「まさに完成形だな。知らなければ神の使いだと思うぞ。」

「邪神も神だから、あながち間違えではない。」

 しかし、どう対処したもんか。ステータス上は全て向こうが上回っているだろう。唯一俺が持っていて奴が持っていない物があるとしたら、創造魔法だけだろう。

 まずは凍らせてみる。が、永久凍土の魔法は弾かれた。

「やはり効かないか。」

 次に異次元マジックバッグを試してみる。転移して。ドラゴンに触れて、マジックバッグに入れてみる。

 一瞬入った感触があったのだが、すぐに出てきてしまった。傷一つない。異次元でも生きられるのか?

 攻撃魔法は通じないだろう。試しに時空斬を撃ってみるが、腕の一振りで消し飛ばされた。万事休すだ打つ手がない。

「何か弱点は無いのか?」

「弱点らしい弱点は無いな。」

「奴の力は亜神並みと言ったな?亜神ならあいつに勝てるのか?」

「確実とは言わないが、勝ち目はあるだろうな。」

「そうか、ならやってみる価値はあるかもな。」

「何をするつもりだ?主?」

「亜神になれば勝てるなら、亜神になってやる。」

「それは危険だ。亜神になったら人間は意識を保っていられないぞ。」

「奴さえ倒せば後は神様がなんとかしてくれるだろう。」

 俺は、創造魔法を使い、魔力量を極限まで上げて行く。前回はこれで亜神になったはずだ。
 
 魔力量が1000万を超えたあたりから、体に力が漲って来る。そうだ、ついでだから、他のステータスも軒並み100倍に上げてしまおう。

 色々とステータスをいじって行くが亜神になる気配は無い。思い切って魔力量を2000万まで上げてみた。

 あれ?これって、邪神の子のステータスを上回れるんじゃ?

 鑑定で邪神の子のステータスを見る。

 魔力量 2500万
 体力   800万
 知力   250万
 攻撃力 1200万
 防御力  900万
 敏捷性  450万
 精神   780万

 ざっと、こんな感じだ。

 そこで、俺のステータスをこんな感じでいじってみる。

 魔力量 4000万
 体力  1000万
 知力   500万
 攻撃力 2000万
 防御力 2000万
 敏捷性  600万
 精神  1000万

 ここまで上げたが亜神になる様子は無い。これなら行けるかも。

 剣は役に立たないだろう。転移で近づいて拳で殴ってみる。ドラゴンが派手にぶっ飛んだ。

 行ける。ファイアーボールをぶち込んで怯んだ所を後ろから蹴り上げる。首をエアカッターで落とそうとしたが半分しか切れなかった。しかも再生が早い。

 ん?再生?

 他人のステータスをいじれるなら邪神の子のステータスもいじれないかな?って言うか再生ってステータスに表示されないのか?

「ギンガ!再生ってステータスじゃないのか?」

「再生はスキルだ。」

 スキルか、創造魔法でスキルを見る魔法を造る。

 ドラゴンのスキルを見る。

 再生
 剛腕 
 ブレス
 飛翔

 なるほど、ブレスもスキルなんだな。とりあえず4つのスキルを消すイメージを送ってみる。って、消えた。

 エアカッターを首に集中して8発ぶち込む。首が千切れかけるが完全ではない。再生はしない様だ。ここで転移して思いっきり顔を殴ってやった。首が数キロ先まで飛んで行く。

 が、まだ邪神の子は倒れない。この状態で生きているのか?何もない空間に異次元の扉を開き、ドラゴンを蹴り込んでやった。ドラゴンは消えて。空間が閉じた。

「終わったな。」

「それは良いが。お主半神になっておるぞ。」

「半神?」

「ああ、人が人の領域を超えて神の領域に踏み込むのを亜神と言う。逆に人が人のまま神の力を手に入れた状態を半神と言うのだ。」

「何か、不味いのか?」

「いや、暫くは問題無いだろう。」

「暫く?」

「半神になると不老不死になると聞く。」

 ああ、確かにそれは将来的に問題があるな。

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