勇者パーティーを追放された転生テイマーの私が、なぜかこの国の王子様をテイムしてるんですけど!

柚子猫

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50.追放テイマーと恋愛の湯

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 ハファルル王国は、別名『温泉王国』って呼ばれていて、国内にたくさんの温泉街が存在している。

 温泉がたくさんあるから、いろんな効能のお湯が出てるんだけど。
 とにかく種類が多いし、前世では聞いたことの無いような不思議なお湯もいっぱいあるみたい。
 
 えーと、例えばなんだけど。
 『金運上昇』とか『魔力向上』、果ては『勇者になれるお湯』とか。

 ……。

 …………。

 ……どんなお湯なんだろう?
 ……色々能力が上がるとか?

「なに温泉紹介みて難しい顔してるのよ、ショコラ」
「さっさと温泉行くよ!」
「だって、ほら。こんなに種類があるんだよ? どこに入るか迷うじゃん!」

 リサとコーディーにパンフレットを開いて見せた。
 二人は、顔を見合わせてニヤリと笑う。 
 ちょっとなんなのよ、その笑顔。 

「えー。そんなのきまってるじゃない」
「うんうん」
「決まってるって、どこに行くつもりなの?」

「「恋愛の湯よ!!」」
 
 なにそれ。
 お湯と恋愛がどうつながるのよ。
 温泉王国……おそるべし。

「ショコラお姉さま、私もご一緒していいですか!」

 ダリアちゃんが目を輝かせて手をにぎってきた。
 
「うん。じゃあ、行こうか。その恋愛の湯に!」
「やったぁ! 楽しみ!」
 
 ダリアちゃんは、嬉しそうにぴょんぴょん跳ね回っている。

 恋愛かぁ。
 転生してから全然縁がないんだよね。
 ううん、ちがう。転生前からだよ、私!!

 女神エステル様。
 勇者のスキルとかまったく興味なし、お返しするので。
 恋愛運を、ちょこっとでいいから上げてくれないかなぁ。

 ……なんて。

 私は遠い目で、嬉しそうにはしゃぐ三人を見つめていた。

  
**********

「ほら、ショコラ。来て正解じゃない? これは恋愛に効きそうだわ~」
「ホントホント。うん、私さらにアイドルになれる気がする!」
「さらにって。どうなりたいのよ、コーディーは」
「もちろん、村一番のアイドルに決まってるじゃない! ショコラには負けないんだから!!」
「……アンタさ、体形的には完全に負けてるわよ」
「うるさいわね、これから成長するのよ!」

 ホント仲良しだよね、リサとコーディーって。

 恋愛の湯は、大きな岩がたくさんある露天風呂で、薄いピンク色をしている。
 浮かんでいるのはバラの花かな?
 すごくいい匂い。
 
 ふぅ、なんだか……癒される。

「お姉さま、お姉さま。これで……シャルル様と仲良くなれるかな?」 
「うーん、ダリアちゃん可愛いから大丈夫よ」
「……そうかな?」
「うんうん、私も応援するね!」

 私はダリアちゃんを思い切り抱きしめる。
  
 頬が真っ赤なのはきっと温泉のせいだけじゃないよね。
 ホントに可愛いなぁ。

 お相手が魔王っていうのは、悩ましいとこだけど。
 でも、悪い人じゃないんだよね。
 がっちりとした筋肉質の体格と黒髪さわやか風イケメンの容姿なのに、ちょょっと残念な感じが、逆にカワイイというか。

「さて、ショコラ。そろそろアンタの本命を聞きましょうか?」

 リサが固まった笑顔のまま、両手を広げてゆっくりと近づいてきた。

「え? 本命って?」

 なにこれ。
 ちょっとその表情、怖いんだけど。
 思わず後ずさりしたところを、今度はコーディーに後ろから抱きつかれる。

「ホントよ。村の男の子によく聞かれるんだから! ショコラの本命は誰なのよ?」
「ちょっとくすぐったいってば!!」
「コーディー、そのまま押さえてて。ふふふ、ほら大人しく白状しなさい!!」
「ショコラちゃん、諦めて白状しちゃおうよぉ」
「本命とかそういうのないから! 私二人みたいにモテないし!」

 二人の動きが一瞬止まった。
 なに、この沈黙。

「……アンタ、本気で言ってるのよね?」 
「うーん。変わってないわね、ショコラ」
「お姉さまって、昔からこうなんですか?」
「ちょっと、どういう意味よ!」

 なんでそんな気の毒そうな顔で見られないといけないの、私!? 
 

「ショコラちゃん、見つけましたわ! やっぱり、私たちは赤い糸で結ばれてるのね!」

 三人に言い返そうとした瞬間、大きな声が露天風呂に響きわたった。

「ミルフィナちゃん!」
「ああ、二人で恋愛の湯に入れる日がくるなんて。これはもう愛の力ですわ」

 彼女は、湯舟に入ると私に抱きついてきた。
 紫色のキレイな髪がふわっと顔にかかって、甘いお菓子のような香りに包まれる。

「まさか……アンタの本命って」
「そうなの? ショコラおめでとう!」

 ちょっとまって、大親友。
 どういう結論でそうなったよ!


**********

「いい湯だったねぇ、ところで気になってたんだけどさ」
「ん。なに?」

 私たちは、自分たちの部屋に戻っていた。
 夕飯なんだろ。
 楽しみだなぁ。

「その剣、そんなに大切なの? 温泉にも持って行ってたけど」
「あー、それ私も思ってた」

 私は、リサの質問に、おもわず持っていたパンフレットを落としそうになる。
 
「あー。ほら、護身用っていうか。一応さ魔王軍の主ってことになってるし」
「ふーん、やっぱり大変だねぇ」
「私はアイドルだから、武器なんて持たないけど~」

 ――ウソだけど。
 ――思いっきりウソだけど。

 だって、この聖剣……。
 一定以上離れると、勝手に近くに出現するんだもん!!

 なにこれ。
 もう完全に呪いのアイテムだよ!

「まぁ、魔界の主も大変よね。私らは楽しい避難生活でラッキーくらいだけどさ」
「だねー。みんなおもいきり楽しんでるよね」

 え。
 
「……もしかして、気づいてないと思ってたの?」
「……うん」

 大親友は、一瞬きょとんとした表情をした後、大きな声で笑い出した。  

「普通の旅行で、巨大な馬車を何台も使ったりしないでしょ。しかも村人全員参加だったしさぁ」
「この時期に魔王軍が護衛までしてくれて、一週間以上も滞在するなんて。誰でも気づくと思わない?」

 コーディーはおなかを抱えながら、最新の勇者新聞を差し出してくる。
 そこには大きな見出しでこう書かれていた。

 『フォルト村に向けて、正義の勇者軍が集結完了! まもなく王妃奪還作戦開始か!?』

 ……。

 …………。 

 魔王城のみんなで考えた完璧なプランだったのに!!
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