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51.追放テイマーとこたつとミカン
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その日の夜。
私は部屋をこっそり抜け出して、温泉宿の宴会場に来ていた。
広い畳の部屋には、四角くて低い高さの木製テーブルが二台置かれている。
足元にはふかふかのお布団。
中に魔道具が入っていて、足元を温めてくれるんだって。
そう、これはどう見ても……。
どう見ても……。
前世でいうところの『こたつ』だよね。
私は思わずテーブルの上にべたっと顔をくっつける。
まさか、この世界で最愛のぬくぬく家具に会えるなんて!!
もしかして、この世界に転生した人が考えたのかな?
それとも、人類はどんな世界であっても、結局このぬくもりを求めてしまうとか?
ポカポカ気持ちいいし……なんだか、このまま寝ちゃいそう。
「ねぇ、……ショコラ。そろそろ始めようか?」
ベリル王子の優しい声でハッと目を開ける。
――いけない。
――こたつの魔力に負けるところだった。
「はい! それじゃあ、魔王軍会議 in 温泉地をはじめますね」
「我が主よ。その前に、なぜ敵国の王族まで参加しておるのだ?」
隣のこたつに座っている魔王シャルル様が、不機嫌そうな声をあげた。
視線の先にいるのは、私と同じこたつに入っているベリル王子。
……もう!
……子供みたいに頬を膨らませてるし!
この二人ってあんまり仲良くないんだよね。
なんでかなぁ?
「キミがショコラと同じ部屋にいるだけで、僕としては不服なんだけどね」
「そうですわ、ショコラちゃん! 聖剣でいますぐ魔王を倒すべきですわ」
ベリル王子とミルフィナちゃんも、不満そうな顔で魔王様を指さした。
「ちょっとストップ! 魔王軍は魔族も人間も仲良く、でしょ!」
「その通りですわ。魔王様、嫉妬は見苦しいですよ?」
「なっ!」
水の魔性メルクルさんの言葉に、魔王様は口元を押さえて耳まで真っ赤になった。
魔王様って、せっかくイケメンなのに、どこか……残念なんだよね。
ダリアちゃんは、目をハートにして見つめてるけど。
「えーと。話を進めますね。フォルト村の人を全員避難させる計画は、無事に終わりました!」
「うん、みんな喜んでたし、よかったよね」
首を少し傾けて王子様がほほえむと、金色の髪がさらりと揺れた。
青い瞳とのコントラストがすごく素敵で……。
心臓が周りに聞こえそうなくらい大きな音をたてはじめる。
もう、なにこれ。
温泉でのぼせたのかな、私。
「頬を赤く染めたショコラちゃん、可愛いですわぁ!」
ミルフィナちゃんが、こたつから身を乗り出して抱きついてきた。
「ちょっと、ミルフィナちゃん!」
「ズルいぞ、妹よ!」
「……我が主……ショコラさん、カワイイです……」
これから何話すんだっけ。
ダメだ、頭がボーっとしてきたんだけど。
全部、温泉とこの魅惑的な暖房器具がいけないと思うの!
**********
私たちは、宴会場のこたつで会議を続けていた。
考えてみたらすごくシュールな光景だよね、これって。
魔王がいて、勇者(私)がいて。
王子様や王女様がいて。
みんなで、こたつの上のミカンを食べてるんだもん。
「主様、フォルト村の家畜たちは、無事に隣の村に避難させましたわ」
「メルクルさん、ありがとう」
「もぐもぐ。この後の作戦も順調だよ、安心して、ショコラさん」
「魔王様、口調が戻ってますよ?」
「フォルト村防衛の準備も完了しておるぞ、主よ!もぐもぐ」
魔王軍関係者って、メルクルさんと私くらいだから、直さなくてもいいのに。
ミカンを手にびしっと姿勢を正した魔王様がおかしくて、思わず口元を押さえて笑ってしまう。
「素の口調で平気ですよ、シャルル様。相手の国王軍はどれくらい集まりそうですか?」
「それは僕から。内通してくれた兵士たちの情報だと、冒険者も含めて五万くらいらしいよ」
ベリル王子は手を上げて立ち上がると、真剣な表情で周りのメンバーを見渡した。
五万って……予想よりずっと多い。
「近隣の王国も、勇者の呼びかけに応えて、軍を派遣したみたいなんだ」
「ふん、それくらい、私の魔法で吹き飛ばしてやるわ!」
「ちょっと、ダリアちゃん!」
ダリアちゃんが立ち上がると、嬉しそうに杖を振り上げた。
可愛いけど。
王子様の前で王国兵を吹き飛ばすとか、笑顔で言わないでぇ!
「魔王軍側は、どれくらい集まりそうですか?」
「百万人くらいです、主様」
……。
…………。
え?
「すでにフォルト村を中心に集まってますけど、少なかったかしら?」
今、百万人って言ったよね?
聞き間違えたのかな、私?
「……ホントに、百万人が集まってるんですか?」
「うふふ、主様の呼びかけでしたから」
「百万対五万って……もう作戦の必要ないような……よく集まりましたね」
「終わったら主様の生歌が聞けるって特典付きで募集したら、希望者が殺到したんですよ」
「……え? 聞いてないんだけど、私!?」
「ドルドルトが天使みたいな歌声を聞いたって、よく周りに自慢してるんです。私たちにも是非聞かせてくださいませ」
メルクルさんが、妖艶な表情でウィンクしてきた。
ちょっとドルドルトさん!
吟遊歌姫じゃないんだけど!!
調教師なんですけど、私!!!
「大丈夫です、ショコラちゃん! わたくしも一緒に歌いますわ!」
ミルフィナちゃんはキラキラと瞳を輝かせて、顔を近づけてくる。
――これってホントに。
――終わったら、百万人の前で歌うの?
ノー!
ノーだよ!
目立ちたくないのに!!
私は思わず、こたつの上に腕を伸ばして倒れ込んだ。
私は部屋をこっそり抜け出して、温泉宿の宴会場に来ていた。
広い畳の部屋には、四角くて低い高さの木製テーブルが二台置かれている。
足元にはふかふかのお布団。
中に魔道具が入っていて、足元を温めてくれるんだって。
そう、これはどう見ても……。
どう見ても……。
前世でいうところの『こたつ』だよね。
私は思わずテーブルの上にべたっと顔をくっつける。
まさか、この世界で最愛のぬくぬく家具に会えるなんて!!
もしかして、この世界に転生した人が考えたのかな?
それとも、人類はどんな世界であっても、結局このぬくもりを求めてしまうとか?
ポカポカ気持ちいいし……なんだか、このまま寝ちゃいそう。
「ねぇ、……ショコラ。そろそろ始めようか?」
ベリル王子の優しい声でハッと目を開ける。
――いけない。
――こたつの魔力に負けるところだった。
「はい! それじゃあ、魔王軍会議 in 温泉地をはじめますね」
「我が主よ。その前に、なぜ敵国の王族まで参加しておるのだ?」
隣のこたつに座っている魔王シャルル様が、不機嫌そうな声をあげた。
視線の先にいるのは、私と同じこたつに入っているベリル王子。
……もう!
……子供みたいに頬を膨らませてるし!
この二人ってあんまり仲良くないんだよね。
なんでかなぁ?
「キミがショコラと同じ部屋にいるだけで、僕としては不服なんだけどね」
「そうですわ、ショコラちゃん! 聖剣でいますぐ魔王を倒すべきですわ」
ベリル王子とミルフィナちゃんも、不満そうな顔で魔王様を指さした。
「ちょっとストップ! 魔王軍は魔族も人間も仲良く、でしょ!」
「その通りですわ。魔王様、嫉妬は見苦しいですよ?」
「なっ!」
水の魔性メルクルさんの言葉に、魔王様は口元を押さえて耳まで真っ赤になった。
魔王様って、せっかくイケメンなのに、どこか……残念なんだよね。
ダリアちゃんは、目をハートにして見つめてるけど。
「えーと。話を進めますね。フォルト村の人を全員避難させる計画は、無事に終わりました!」
「うん、みんな喜んでたし、よかったよね」
首を少し傾けて王子様がほほえむと、金色の髪がさらりと揺れた。
青い瞳とのコントラストがすごく素敵で……。
心臓が周りに聞こえそうなくらい大きな音をたてはじめる。
もう、なにこれ。
温泉でのぼせたのかな、私。
「頬を赤く染めたショコラちゃん、可愛いですわぁ!」
ミルフィナちゃんが、こたつから身を乗り出して抱きついてきた。
「ちょっと、ミルフィナちゃん!」
「ズルいぞ、妹よ!」
「……我が主……ショコラさん、カワイイです……」
これから何話すんだっけ。
ダメだ、頭がボーっとしてきたんだけど。
全部、温泉とこの魅惑的な暖房器具がいけないと思うの!
**********
私たちは、宴会場のこたつで会議を続けていた。
考えてみたらすごくシュールな光景だよね、これって。
魔王がいて、勇者(私)がいて。
王子様や王女様がいて。
みんなで、こたつの上のミカンを食べてるんだもん。
「主様、フォルト村の家畜たちは、無事に隣の村に避難させましたわ」
「メルクルさん、ありがとう」
「もぐもぐ。この後の作戦も順調だよ、安心して、ショコラさん」
「魔王様、口調が戻ってますよ?」
「フォルト村防衛の準備も完了しておるぞ、主よ!もぐもぐ」
魔王軍関係者って、メルクルさんと私くらいだから、直さなくてもいいのに。
ミカンを手にびしっと姿勢を正した魔王様がおかしくて、思わず口元を押さえて笑ってしまう。
「素の口調で平気ですよ、シャルル様。相手の国王軍はどれくらい集まりそうですか?」
「それは僕から。内通してくれた兵士たちの情報だと、冒険者も含めて五万くらいらしいよ」
ベリル王子は手を上げて立ち上がると、真剣な表情で周りのメンバーを見渡した。
五万って……予想よりずっと多い。
「近隣の王国も、勇者の呼びかけに応えて、軍を派遣したみたいなんだ」
「ふん、それくらい、私の魔法で吹き飛ばしてやるわ!」
「ちょっと、ダリアちゃん!」
ダリアちゃんが立ち上がると、嬉しそうに杖を振り上げた。
可愛いけど。
王子様の前で王国兵を吹き飛ばすとか、笑顔で言わないでぇ!
「魔王軍側は、どれくらい集まりそうですか?」
「百万人くらいです、主様」
……。
…………。
え?
「すでにフォルト村を中心に集まってますけど、少なかったかしら?」
今、百万人って言ったよね?
聞き間違えたのかな、私?
「……ホントに、百万人が集まってるんですか?」
「うふふ、主様の呼びかけでしたから」
「百万対五万って……もう作戦の必要ないような……よく集まりましたね」
「終わったら主様の生歌が聞けるって特典付きで募集したら、希望者が殺到したんですよ」
「……え? 聞いてないんだけど、私!?」
「ドルドルトが天使みたいな歌声を聞いたって、よく周りに自慢してるんです。私たちにも是非聞かせてくださいませ」
メルクルさんが、妖艶な表情でウィンクしてきた。
ちょっとドルドルトさん!
吟遊歌姫じゃないんだけど!!
調教師なんですけど、私!!!
「大丈夫です、ショコラちゃん! わたくしも一緒に歌いますわ!」
ミルフィナちゃんはキラキラと瞳を輝かせて、顔を近づけてくる。
――これってホントに。
――終わったら、百万人の前で歌うの?
ノー!
ノーだよ!
目立ちたくないのに!!
私は思わず、こたつの上に腕を伸ばして倒れ込んだ。
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