勇者パーティーを追放された転生テイマーの私が、なぜかこの国の王子様をテイムしてるんですけど!

柚子猫

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74.追放テイマーと朝のテラス

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「んー、ホントに美味しい~」
「まだ作ったからさ。良かったら食べてって」
「ありがとう、シャルルさん」

 口の中でとろけるアイス。
 冷たくて甘い味が広がっていく。

「さすがにサーティーニャンアイスみたいには作れないけどさ」
「ううん。見た目も味も本物そっくり!」

 まるいカワイイ形に、耳の形をした三角形のチップ。
 チョコで描かれたつぶらな瞳とおヒゲ。

 はぁぁぁぁぁぁ。
 幸せ過ぎる。
 なんて素敵な時間なんだろう。

 ……この世界でサーティーニャンが食べれるなんて、まだ信じられない。
  
「どう、元気出た?」
「え?」

 おもわずスプーンを口にしたまま、向かいに座っている魔王さんを見つめた。
 テーブルに片方の肘をついて、優しい瞳を私に向けている。

 さらさらと風がながれて、黒い髪がゆっくりと揺れた。

 ここは、謁見の間の裏側にある小さな空中テラスなんだけど。
 白を基調とした美しい風景にものすごく映える。

 まるでアニメのワンシーンみたい。

「……ショ、ショコラ?」
「……え? あ、ううん。なんでもないよ」

 あぶない。
 思わず見とれちゃった。
 わわ、慌ててスプーンをカップに戻す。

「えーと、元気なさそうにみえちゃいました?」
「うん。悩んでいるようにもみえたけどね」

 ……スルドイ。
 シャルルさんって、人の考えが読めるスキルとか持ってるんじゃないかな。
 魔王なんだし。

「オ、オレでよかったらさ聞くよ。なにがあったの?」
「えーと。もしもなんだけど」
「うん?」

「転生して、魔王をたおしたことになってて。その後、女神から『試練』を受けるって言ったらね」
「それって……ショコラの話?」

 心配そうな黒い瞳に私が映りこんでいる。
 ホントに。
 シャルルさんって良い人オーラ全開なんだよね。

 隠す必要も、別にないかぁ。

「あはは……そうなんだけどさぁ」
「そうか。女神って、エリエル様だよね。試練をショコラが受けるの?」
「なんかね、そういう流れになって……」
「そうなんだ。なるほど……」

 あれ?
 なんでそこで、シャルルさんが悩みだすの?

「……ショコラが悩んでるってことは、エリエル様は教えてくれないんだよね?」
「そうなの! なんだかニヤニヤ笑ってて全然教えてくれないの!」

 唇に手を当てて、静かに目を閉じる。   
 ホントに、絵になる人だなぁ。

 この世界の主人公が、実はシャルルさんでしたって言われても、納得しちゃいそう。
 タイトルは、うーん。
 例えば……。

 『ある日転生したら魔王になったオレが、世界を征服してみた件について』

 とか。
 ……ラノベにありそう。

 そうすると。
 ヒロインは……ダリアちゃんかなぁ。
 ちょっと年下すぎる気もするけど、カワイイし、シャルルさんのこと大好きだし。
 あーでも、もしかしたら、今後の展開で正統派ヒロインのミルフィナちゃんってことも……。

「……ショコラ?」
「え? あ、うん」

 うわぁ、いけない。
 変な妄想に入ってたよ!

「ショコラ……今さ、別のこと考えてたでしょ?」
「……シャルルさん、やっぱり心が読めるスキルとかもってません?」
「ホント。読めたらいいんだけどね」

 少し困った表情で笑うシャルルさん。
 なんだかカワイイ。

 でもそっか。
 心が読めるわけじゃないんだ。

 ……じゃあなんで、すぐに私の気持ちがわかるんだろう?
 ……顔に出過ぎとか? 

 うーん、気を付けよう。
 
「試練の話だけど。普通に考えると、より強い敵が出てくるかもしれないね」
「やっぱり……そうなるのかなぁー。なんだか少年漫画の王道みたい」

 私は目の前のテーブルに倒れかかった。
 はぁぁぁ。
 もう、どうしよう。転生物でそんな展開あったかなぁ。

「たださ……って。うわぁ」
「うん?」

 見上げると、シャルルさんの慌てた顔が近くにある。
 私も慌てて、元の姿勢に座りなおした。

 うわぁぁぁ、ビックリしたぁ。
 
 そ、そうだよね。
 そんなに大きなテーブルじゃないし。
 私思い切り伸びしてたんだから、シャルルさんが近いのあたりまえだよ。

「ご、ごめん。急に大きな声をだして」 
「ううん。私こそ、ごめんね」

 シャルルさんは顔を真っ赤にして口元を押さえている。
 つられて私の頬も熱くなるのを感じた。
 
「……あ、えーと。それでね」
「……あ、ああ」

 なんだろう、なぜか意識しちゃって目を合わせられない。
 えーと、なんだっけ。

 そのまま少しだけ目を逸らして、会話を続ける。

「でね。強い敵がでてくるっていっても、もうこの世界って勇者と魔王がいるでしょ?」

 私は、自分とシャルルさんを交互に指さした。
  
「か、考えてみたら不思議な感じだ。これはもう、う、運命じゃないかな……」
「うん。不思議なんですよね。シャルルさんは、前世でゲームとかアニメって好きでした?」
「ゲ、ゲームもアニメも大好きだったよ」

 え。
 なんで残念そうな顔をしてるの?
 でも、それなら話が早そう。

 私はおもいきって、自分の疑問を聞いてみた。


「魔王と勇者より強い敵って、なんだと思います?」
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