74 / 95
74.追放テイマーと朝のテラス
しおりを挟む
「んー、ホントに美味しい~」
「まだ作ったからさ。良かったら食べてって」
「ありがとう、シャルルさん」
口の中でとろけるアイス。
冷たくて甘い味が広がっていく。
「さすがにサーティーニャンアイスみたいには作れないけどさ」
「ううん。見た目も味も本物そっくり!」
まるいカワイイ形に、耳の形をした三角形のチップ。
チョコで描かれたつぶらな瞳とおヒゲ。
はぁぁぁぁぁぁ。
幸せ過ぎる。
なんて素敵な時間なんだろう。
……この世界でサーティーニャンが食べれるなんて、まだ信じられない。
「どう、元気出た?」
「え?」
おもわずスプーンを口にしたまま、向かいに座っている魔王さんを見つめた。
テーブルに片方の肘をついて、優しい瞳を私に向けている。
さらさらと風がながれて、黒い髪がゆっくりと揺れた。
ここは、謁見の間の裏側にある小さな空中テラスなんだけど。
白を基調とした美しい風景にものすごく映える。
まるでアニメのワンシーンみたい。
「……ショ、ショコラ?」
「……え? あ、ううん。なんでもないよ」
あぶない。
思わず見とれちゃった。
わわ、慌ててスプーンをカップに戻す。
「えーと、元気なさそうにみえちゃいました?」
「うん。悩んでいるようにもみえたけどね」
……スルドイ。
シャルルさんって、人の考えが読めるスキルとか持ってるんじゃないかな。
魔王なんだし。
「オ、オレでよかったらさ聞くよ。なにがあったの?」
「えーと。もしもなんだけど」
「うん?」
「転生して、魔王をたおしたことになってて。その後、女神から『試練』を受けるって言ったらね」
「それって……ショコラの話?」
心配そうな黒い瞳に私が映りこんでいる。
ホントに。
シャルルさんって良い人オーラ全開なんだよね。
隠す必要も、別にないかぁ。
「あはは……そうなんだけどさぁ」
「そうか。女神って、エリエル様だよね。試練をショコラが受けるの?」
「なんかね、そういう流れになって……」
「そうなんだ。なるほど……」
あれ?
なんでそこで、シャルルさんが悩みだすの?
「……ショコラが悩んでるってことは、エリエル様は教えてくれないんだよね?」
「そうなの! なんだかニヤニヤ笑ってて全然教えてくれないの!」
唇に手を当てて、静かに目を閉じる。
ホントに、絵になる人だなぁ。
この世界の主人公が、実はシャルルさんでしたって言われても、納得しちゃいそう。
タイトルは、うーん。
例えば……。
『ある日転生したら魔王になったオレが、世界を征服してみた件について』
とか。
……ラノベにありそう。
そうすると。
ヒロインは……ダリアちゃんかなぁ。
ちょっと年下すぎる気もするけど、カワイイし、シャルルさんのこと大好きだし。
あーでも、もしかしたら、今後の展開で正統派ヒロインのミルフィナちゃんってことも……。
「……ショコラ?」
「え? あ、うん」
うわぁ、いけない。
変な妄想に入ってたよ!
「ショコラ……今さ、別のこと考えてたでしょ?」
「……シャルルさん、やっぱり心が読めるスキルとかもってません?」
「ホント。読めたらいいんだけどね」
少し困った表情で笑うシャルルさん。
なんだかカワイイ。
でもそっか。
心が読めるわけじゃないんだ。
……じゃあなんで、すぐに私の気持ちがわかるんだろう?
……顔に出過ぎとか?
うーん、気を付けよう。
「試練の話だけど。普通に考えると、より強い敵が出てくるかもしれないね」
「やっぱり……そうなるのかなぁー。なんだか少年漫画の王道みたい」
私は目の前のテーブルに倒れかかった。
はぁぁぁ。
もう、どうしよう。転生物でそんな展開あったかなぁ。
「たださ……って。うわぁ」
「うん?」
見上げると、シャルルさんの慌てた顔が近くにある。
私も慌てて、元の姿勢に座りなおした。
うわぁぁぁ、ビックリしたぁ。
そ、そうだよね。
そんなに大きなテーブルじゃないし。
私思い切り伸びしてたんだから、シャルルさんが近いのあたりまえだよ。
「ご、ごめん。急に大きな声をだして」
「ううん。私こそ、ごめんね」
シャルルさんは顔を真っ赤にして口元を押さえている。
つられて私の頬も熱くなるのを感じた。
「……あ、えーと。それでね」
「……あ、ああ」
なんだろう、なぜか意識しちゃって目を合わせられない。
えーと、なんだっけ。
そのまま少しだけ目を逸らして、会話を続ける。
「でね。強い敵がでてくるっていっても、もうこの世界って勇者と魔王がいるでしょ?」
私は、自分とシャルルさんを交互に指さした。
「か、考えてみたら不思議な感じだ。これはもう、う、運命じゃないかな……」
「うん。不思議なんですよね。シャルルさんは、前世でゲームとかアニメって好きでした?」
「ゲ、ゲームもアニメも大好きだったよ」
え。
なんで残念そうな顔をしてるの?
でも、それなら話が早そう。
私はおもいきって、自分の疑問を聞いてみた。
「魔王と勇者より強い敵って、なんだと思います?」
「まだ作ったからさ。良かったら食べてって」
「ありがとう、シャルルさん」
口の中でとろけるアイス。
冷たくて甘い味が広がっていく。
「さすがにサーティーニャンアイスみたいには作れないけどさ」
「ううん。見た目も味も本物そっくり!」
まるいカワイイ形に、耳の形をした三角形のチップ。
チョコで描かれたつぶらな瞳とおヒゲ。
はぁぁぁぁぁぁ。
幸せ過ぎる。
なんて素敵な時間なんだろう。
……この世界でサーティーニャンが食べれるなんて、まだ信じられない。
「どう、元気出た?」
「え?」
おもわずスプーンを口にしたまま、向かいに座っている魔王さんを見つめた。
テーブルに片方の肘をついて、優しい瞳を私に向けている。
さらさらと風がながれて、黒い髪がゆっくりと揺れた。
ここは、謁見の間の裏側にある小さな空中テラスなんだけど。
白を基調とした美しい風景にものすごく映える。
まるでアニメのワンシーンみたい。
「……ショ、ショコラ?」
「……え? あ、ううん。なんでもないよ」
あぶない。
思わず見とれちゃった。
わわ、慌ててスプーンをカップに戻す。
「えーと、元気なさそうにみえちゃいました?」
「うん。悩んでいるようにもみえたけどね」
……スルドイ。
シャルルさんって、人の考えが読めるスキルとか持ってるんじゃないかな。
魔王なんだし。
「オ、オレでよかったらさ聞くよ。なにがあったの?」
「えーと。もしもなんだけど」
「うん?」
「転生して、魔王をたおしたことになってて。その後、女神から『試練』を受けるって言ったらね」
「それって……ショコラの話?」
心配そうな黒い瞳に私が映りこんでいる。
ホントに。
シャルルさんって良い人オーラ全開なんだよね。
隠す必要も、別にないかぁ。
「あはは……そうなんだけどさぁ」
「そうか。女神って、エリエル様だよね。試練をショコラが受けるの?」
「なんかね、そういう流れになって……」
「そうなんだ。なるほど……」
あれ?
なんでそこで、シャルルさんが悩みだすの?
「……ショコラが悩んでるってことは、エリエル様は教えてくれないんだよね?」
「そうなの! なんだかニヤニヤ笑ってて全然教えてくれないの!」
唇に手を当てて、静かに目を閉じる。
ホントに、絵になる人だなぁ。
この世界の主人公が、実はシャルルさんでしたって言われても、納得しちゃいそう。
タイトルは、うーん。
例えば……。
『ある日転生したら魔王になったオレが、世界を征服してみた件について』
とか。
……ラノベにありそう。
そうすると。
ヒロインは……ダリアちゃんかなぁ。
ちょっと年下すぎる気もするけど、カワイイし、シャルルさんのこと大好きだし。
あーでも、もしかしたら、今後の展開で正統派ヒロインのミルフィナちゃんってことも……。
「……ショコラ?」
「え? あ、うん」
うわぁ、いけない。
変な妄想に入ってたよ!
「ショコラ……今さ、別のこと考えてたでしょ?」
「……シャルルさん、やっぱり心が読めるスキルとかもってません?」
「ホント。読めたらいいんだけどね」
少し困った表情で笑うシャルルさん。
なんだかカワイイ。
でもそっか。
心が読めるわけじゃないんだ。
……じゃあなんで、すぐに私の気持ちがわかるんだろう?
……顔に出過ぎとか?
うーん、気を付けよう。
「試練の話だけど。普通に考えると、より強い敵が出てくるかもしれないね」
「やっぱり……そうなるのかなぁー。なんだか少年漫画の王道みたい」
私は目の前のテーブルに倒れかかった。
はぁぁぁ。
もう、どうしよう。転生物でそんな展開あったかなぁ。
「たださ……って。うわぁ」
「うん?」
見上げると、シャルルさんの慌てた顔が近くにある。
私も慌てて、元の姿勢に座りなおした。
うわぁぁぁ、ビックリしたぁ。
そ、そうだよね。
そんなに大きなテーブルじゃないし。
私思い切り伸びしてたんだから、シャルルさんが近いのあたりまえだよ。
「ご、ごめん。急に大きな声をだして」
「ううん。私こそ、ごめんね」
シャルルさんは顔を真っ赤にして口元を押さえている。
つられて私の頬も熱くなるのを感じた。
「……あ、えーと。それでね」
「……あ、ああ」
なんだろう、なぜか意識しちゃって目を合わせられない。
えーと、なんだっけ。
そのまま少しだけ目を逸らして、会話を続ける。
「でね。強い敵がでてくるっていっても、もうこの世界って勇者と魔王がいるでしょ?」
私は、自分とシャルルさんを交互に指さした。
「か、考えてみたら不思議な感じだ。これはもう、う、運命じゃないかな……」
「うん。不思議なんですよね。シャルルさんは、前世でゲームとかアニメって好きでした?」
「ゲ、ゲームもアニメも大好きだったよ」
え。
なんで残念そうな顔をしてるの?
でも、それなら話が早そう。
私はおもいきって、自分の疑問を聞いてみた。
「魔王と勇者より強い敵って、なんだと思います?」
0
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
1歳児天使の異世界生活!
春爛漫
ファンタジー
夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。
※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる