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44.大胆に、鮮やかに
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「姫様、本日はリュカ様はお仕事の為伺えないそうですわ。寂しいでしょうけど、耐えて下さいませ」
「リリア、わたくしそんなに子どもではないわ。大丈夫よ」
そんな風にリリアに揶揄われながら過ごしていると、夕方には侍女達がみんな戻って来た。
みんな、ルカを絶賛していたから嬉しくなったわ。
だけど、リュカだと言う訳にいかないしリュカのお家が男兄弟なのは有名だから姉や妹と嘘をつく訳にもいかない。
曖昧に微笑むしかなかったわ。リリアは何かを察しているようだけど、出来るなら早くリュカに会いたいわ。お仕事だから、仕方ないけど……。
多分、リュカは連れて行かれた事にしてルカとして動いているのでしょうね。万が一にでもリュカの姿をクリストフ様に見られるのは困るから。
わたくしは誰とも会わない事になっているけど、隠し通路から次々と家族が様子を見に来てくれた。
クリストフ様にバレないように、滞在なさっている王族の方々に結婚式の日程を相談しているそうよ。
お父様、仕事が早過ぎるわ。
わたくしのウエディングドレスも、早速素材を集め始めたらしい。早い、色々と早過ぎるわ!
次の日の朝にはお兄様が帰って来た。
すぐにルイーズとおば様の魔法は封じられたそうだ。それぞれ地下牢に拘束されているらしい。
封印して下さった方は、正体がバレる訳にはいかないからと既に城を出られたそうだ。しばらくは王都に滞在して下さるそうだから、何かあればお兄様がお迎えに行く事になった。
そして、わたくしはようやくリュカと会えた。隠し通路からこっそり会いに来てくれたんだけど、なんとリュカは騎士の正装をしていたのだ。
式典でしか見た事のない衣装は、とても素敵でかっこいいです。わたくしもリュカに負けないようにバッチリドレスアップしましたわ。
これから、お父様から大事な話があるからリュカと2人で謁見の間に来るようにと言われています。
「カティ、もう大丈夫だ。クリストフ様に魅了魔法はない。10人がかりで調べたから間違いない。あの人、ずーっとカティが部屋を出てくるのを見張ってやがる。そろそろ種明かしといこうぜ」
「見張ってるの?! 気持ち悪いわね……!」
「ちょっ! それはいくらなんでも酷いからな?!」
「ご、ごめんなさい。でも、本当なんだもの。大丈夫。社交ではそんな素振り見せないわ」
「……お、おう。じゃあそれで」
リュカが呆れている気がするのは気のせいですわよね?! リリアも、なんだかため息を吐いておりませんか?!
「相変わらずコロコロ表情が変わるなぁ。それなのに、社交の場になったら王女様なんだからカティはすげぇよな」
「リュカ様、姫様が豊かな表情をなさるのは本当に信頼した方だけです」
「そうなのか? カティ」
「自覚がないから分からないわ。わたくし、そんなに表情が変わっている?」
「ええ、リュカ様がいらした途端、とてもお幸せそうに笑っておられました」
「……自覚がないわ。謁見の間には沢山の人が居るのよね? 気を引き締めないと!」
「その張り切る姿すら可愛いと思うのは、俺がカティに惚れてるせいかなぁ」
「いえいえ、わたくしも可愛いと思いますわよ。リュカ様へのお気持ちを自覚してからの姫様は、とても可愛らしゅうございますわね」
「もう! 揶揄わないでよね!」
「ささ、リュカ様はそろそろ退出してお迎えに来て下さいませ。姫様、最後の仕上げを致しますわよ」
「そうですね。隠し通路の事が知られる訳にはいきませんから。けど、王族なら予想してると思いますけどね」
「確信させる訳にはいきません。それに、クリストフ様の手のものが見張っておりますが、見張りに気付いたと思わせてもいけません」
「そうですね。団長は、めちゃくちゃ怒ってましたけど」
「ええ、この件が済んだら正式に抗議致しますわ。証拠も揃っておりますから、クリストフ様にお預けするお手紙でご報告する予定だそうですわ」
「うっわ……マジですか。自分が運んだ手紙で叱られるとか……怖っ」
「もっと叱られたらよろしいのですわ」
「なら、拘束されたと思ってた俺が正装でカティの部屋に行こうとしたら、突っかかってくれたりしませんかね」
「アナベル様が、王族の皆様をご案内しているところだそうですから、騒ぎがあれば目に留まるでしょうねぇ」
「さすがっすね」
「まぁ、昨日お話しした限りは、そこまで愚かな方ではなさそうですけれどね。きちんと謝罪されれば特に報告するつもりはないそうですわ。カドゥール国の国王は厳しい方ですから」
「そうなんですか。そういえば……確かに最初は……」
「何か思い当たる事でもありましたか?」
「いや、なんでもありません。クリストフ様は賢い方のようですから、もしかしたら何もされないかもしれませんね。謝罪はしなさそうですけど。昨日は思い込みで突っ走っただけでしょう。若気の至りってヤツですよ」
「あらあら、リュカ様もお若いのに達観していらっしゃいますわね。まるで、姫様のようですわ」
リリア……これ絶対何かに気が付いているわよね。リュカも、ギョッとして固まっている。
リリアはコロコロと笑いながら注意する。
「まだまだ甘いですわね。図星でも素知らぬ顔をしないと社交界を渡っていけませんわよ」
「う……申し訳ありません。精進します」
「ええ、期待しておりますわ」
「では、姫様は5分後に部屋から出ますのでキッチリ連れて行って下さいませ」
「はい。よろしくお願いします」
リュカが隠し通路から出て行ってから、リリアがわたくしの髪に撫子の花を飾ってくれた。
「おふたりは幼い頃によく撫子の花畑で遊んでおられましたものね。撫子の花言葉は、純愛だそうですよ。姫様とリュカ様にピッタリですわね。それに……大胆という花言葉もあるそうですわ。大胆に、鮮やかに振る舞いなさいませ」
「リリア、ありがとう」
「撫子が姫様の黒髪に映えてとてもお美しいですわ。さ、お時間です。参りましょう」
「リリア、わたくしそんなに子どもではないわ。大丈夫よ」
そんな風にリリアに揶揄われながら過ごしていると、夕方には侍女達がみんな戻って来た。
みんな、ルカを絶賛していたから嬉しくなったわ。
だけど、リュカだと言う訳にいかないしリュカのお家が男兄弟なのは有名だから姉や妹と嘘をつく訳にもいかない。
曖昧に微笑むしかなかったわ。リリアは何かを察しているようだけど、出来るなら早くリュカに会いたいわ。お仕事だから、仕方ないけど……。
多分、リュカは連れて行かれた事にしてルカとして動いているのでしょうね。万が一にでもリュカの姿をクリストフ様に見られるのは困るから。
わたくしは誰とも会わない事になっているけど、隠し通路から次々と家族が様子を見に来てくれた。
クリストフ様にバレないように、滞在なさっている王族の方々に結婚式の日程を相談しているそうよ。
お父様、仕事が早過ぎるわ。
わたくしのウエディングドレスも、早速素材を集め始めたらしい。早い、色々と早過ぎるわ!
次の日の朝にはお兄様が帰って来た。
すぐにルイーズとおば様の魔法は封じられたそうだ。それぞれ地下牢に拘束されているらしい。
封印して下さった方は、正体がバレる訳にはいかないからと既に城を出られたそうだ。しばらくは王都に滞在して下さるそうだから、何かあればお兄様がお迎えに行く事になった。
そして、わたくしはようやくリュカと会えた。隠し通路からこっそり会いに来てくれたんだけど、なんとリュカは騎士の正装をしていたのだ。
式典でしか見た事のない衣装は、とても素敵でかっこいいです。わたくしもリュカに負けないようにバッチリドレスアップしましたわ。
これから、お父様から大事な話があるからリュカと2人で謁見の間に来るようにと言われています。
「カティ、もう大丈夫だ。クリストフ様に魅了魔法はない。10人がかりで調べたから間違いない。あの人、ずーっとカティが部屋を出てくるのを見張ってやがる。そろそろ種明かしといこうぜ」
「見張ってるの?! 気持ち悪いわね……!」
「ちょっ! それはいくらなんでも酷いからな?!」
「ご、ごめんなさい。でも、本当なんだもの。大丈夫。社交ではそんな素振り見せないわ」
「……お、おう。じゃあそれで」
リュカが呆れている気がするのは気のせいですわよね?! リリアも、なんだかため息を吐いておりませんか?!
「相変わらずコロコロ表情が変わるなぁ。それなのに、社交の場になったら王女様なんだからカティはすげぇよな」
「リュカ様、姫様が豊かな表情をなさるのは本当に信頼した方だけです」
「そうなのか? カティ」
「自覚がないから分からないわ。わたくし、そんなに表情が変わっている?」
「ええ、リュカ様がいらした途端、とてもお幸せそうに笑っておられました」
「……自覚がないわ。謁見の間には沢山の人が居るのよね? 気を引き締めないと!」
「その張り切る姿すら可愛いと思うのは、俺がカティに惚れてるせいかなぁ」
「いえいえ、わたくしも可愛いと思いますわよ。リュカ様へのお気持ちを自覚してからの姫様は、とても可愛らしゅうございますわね」
「もう! 揶揄わないでよね!」
「ささ、リュカ様はそろそろ退出してお迎えに来て下さいませ。姫様、最後の仕上げを致しますわよ」
「そうですね。隠し通路の事が知られる訳にはいきませんから。けど、王族なら予想してると思いますけどね」
「確信させる訳にはいきません。それに、クリストフ様の手のものが見張っておりますが、見張りに気付いたと思わせてもいけません」
「そうですね。団長は、めちゃくちゃ怒ってましたけど」
「ええ、この件が済んだら正式に抗議致しますわ。証拠も揃っておりますから、クリストフ様にお預けするお手紙でご報告する予定だそうですわ」
「うっわ……マジですか。自分が運んだ手紙で叱られるとか……怖っ」
「もっと叱られたらよろしいのですわ」
「なら、拘束されたと思ってた俺が正装でカティの部屋に行こうとしたら、突っかかってくれたりしませんかね」
「アナベル様が、王族の皆様をご案内しているところだそうですから、騒ぎがあれば目に留まるでしょうねぇ」
「さすがっすね」
「まぁ、昨日お話しした限りは、そこまで愚かな方ではなさそうですけれどね。きちんと謝罪されれば特に報告するつもりはないそうですわ。カドゥール国の国王は厳しい方ですから」
「そうなんですか。そういえば……確かに最初は……」
「何か思い当たる事でもありましたか?」
「いや、なんでもありません。クリストフ様は賢い方のようですから、もしかしたら何もされないかもしれませんね。謝罪はしなさそうですけど。昨日は思い込みで突っ走っただけでしょう。若気の至りってヤツですよ」
「あらあら、リュカ様もお若いのに達観していらっしゃいますわね。まるで、姫様のようですわ」
リリア……これ絶対何かに気が付いているわよね。リュカも、ギョッとして固まっている。
リリアはコロコロと笑いながら注意する。
「まだまだ甘いですわね。図星でも素知らぬ顔をしないと社交界を渡っていけませんわよ」
「う……申し訳ありません。精進します」
「ええ、期待しておりますわ」
「では、姫様は5分後に部屋から出ますのでキッチリ連れて行って下さいませ」
「はい。よろしくお願いします」
リュカが隠し通路から出て行ってから、リリアがわたくしの髪に撫子の花を飾ってくれた。
「おふたりは幼い頃によく撫子の花畑で遊んでおられましたものね。撫子の花言葉は、純愛だそうですよ。姫様とリュカ様にピッタリですわね。それに……大胆という花言葉もあるそうですわ。大胆に、鮮やかに振る舞いなさいませ」
「リリア、ありがとう」
「撫子が姫様の黒髪に映えてとてもお美しいですわ。さ、お時間です。参りましょう」
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