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ルビーのブローチを渡すまで逃しません
22.リアムの企み
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こうして、私はカーラと恋人になった。
カーラは本当に真面目で可愛らしくて、エリザベス様の事を惚気るイアンの気持ちが分かった。
カーラは普段はしっかりしているのに、私の前ではリラックスした表情を見せてくれる。時折見せる気の抜けた姿も、愛らしい。
二人きりになれば、真っ赤な顔で恥ずかしがるのがたまらない。
「はい。あーん」
「流石に恥ずかしいよぉ……」
「安心しろ。ここは個室だ」
「個室でも恥ずかしい……」
「……そうか。残念だ……」
そう言って俯くと、カーラが恐る恐る口を開ける。
「うぅぅ……分かった。ここなら誰も見てないもんね?」
「ああ、恥ずかしがり屋の可愛い彼女の為に個室を用意したからな。安心してくれ」
「……分かった……あーん……」
ちょろい。可愛いが、ちょろい。
付き合ってみると、カーラは益々可愛くて……私はどんどん彼女に惹かれていった。
王都の流行のカフェを予約して、可愛い恋人を愛でると幸せな気持ちになる。カフェを予約してくれたのはソフィアだ。代わりにポール様との仲を取り持てと言われたが、スッパリ断って他の方法で礼をしておいた。
ポール様は、ソフィアにもリリアンにも惹かれているようだ。ただ……ポール様は真面目だからな。これからどうなるか、ポール様とリリアン、ソフィア次第といったところか。
もうすぐエリザベス様とイアンの結婚式だ。私は、平民であるにもかかわらず招待状を貰っている。
私を呼ぶより、一人でも多くの貴族を呼べと言ったのだが、そこらの貴族より私の方が大事だとイアンとエリザベス様、ポール様にも言い切られてしまった。
こそばゆいが、嬉しくてありがたく招待を受ける事にした。友人の幸せに当てられたのか……カーラの魅力に陥落したのか分からないが、カーラと付き合っていると、独占欲が湧いてきて……すぐにでも彼女と結婚したい。そう思うようになった。
だが、私と結婚すればカーラに迷惑がかかるかもしれない。
懐にいつも忍ばせている絶縁届けは、既に黄ばんでいる。私は、リンゼイ子爵家の血を引いている。現当主は私の事など忘れているだろうが、あの家は非常に危うい立場に立たされている。順調なら私の事など放っておいてくれるだろう。だが、今はどんなものでも利用しようと必死だ。もし私の事を知って、利用価値があると思われたら……。
カーラには、迷惑をかけたくない。だから、プロポーズが出来ず悩んでいた。
ところが、思わぬ幸運が訪れた。
エリザベス様のおかげで忌々しいリンゼイ子爵家と縁を切る事に成功した。もう、プロポーズを躊躇う理由はない。
イアンの結婚式の前日。
私はイアンとリリアン、ソフィアと合流した。エリザベス様とポール様もご一緒だったそうだが、既にお二人は帰られた。
「エイダ様は、どんな様子だった?」
イアン達が会った女性の話をすると、リリアンとソフィアが嬉しそうに教えてくれた。
「元気そうだったわよぉ。夜会の時とは別人ね」
「そうね。今のエイダ様の方が美しかったわ」
「そりゃ、幸せだもの。ああなるわぁ」
「ちょっと、羨ましいわよね」
「本当にね。わたくし達はいつ幸せになれるのかしらぁ」
「あら、幸せになるのはわたくしだけかもしれないわよ。まぁ……ソフィアだけかもしれないけど……」
「言ってて虚しくなってきたわぁ。明日が来るのが嬉しいような怖いような……」
「分かるわ! けど……ポールの気持ちを受け止めるしかないわよね」
「そうよぉ……ああ……怖すぎるわぁ」
社交界の華と呼ばれる二人を虜にしているポール様は、多くの男達に恨まれている。だが、いつも涼しい顔をなさっているし、嫌味も直接的な攻撃も軽くかわしておられる。目に余れば報復なさっているようで、ポール様に怯える貴族も多い。
そんな話をしていたら、イアンの行きつけの宝石店に着いた。
カーラは本当に真面目で可愛らしくて、エリザベス様の事を惚気るイアンの気持ちが分かった。
カーラは普段はしっかりしているのに、私の前ではリラックスした表情を見せてくれる。時折見せる気の抜けた姿も、愛らしい。
二人きりになれば、真っ赤な顔で恥ずかしがるのがたまらない。
「はい。あーん」
「流石に恥ずかしいよぉ……」
「安心しろ。ここは個室だ」
「個室でも恥ずかしい……」
「……そうか。残念だ……」
そう言って俯くと、カーラが恐る恐る口を開ける。
「うぅぅ……分かった。ここなら誰も見てないもんね?」
「ああ、恥ずかしがり屋の可愛い彼女の為に個室を用意したからな。安心してくれ」
「……分かった……あーん……」
ちょろい。可愛いが、ちょろい。
付き合ってみると、カーラは益々可愛くて……私はどんどん彼女に惹かれていった。
王都の流行のカフェを予約して、可愛い恋人を愛でると幸せな気持ちになる。カフェを予約してくれたのはソフィアだ。代わりにポール様との仲を取り持てと言われたが、スッパリ断って他の方法で礼をしておいた。
ポール様は、ソフィアにもリリアンにも惹かれているようだ。ただ……ポール様は真面目だからな。これからどうなるか、ポール様とリリアン、ソフィア次第といったところか。
もうすぐエリザベス様とイアンの結婚式だ。私は、平民であるにもかかわらず招待状を貰っている。
私を呼ぶより、一人でも多くの貴族を呼べと言ったのだが、そこらの貴族より私の方が大事だとイアンとエリザベス様、ポール様にも言い切られてしまった。
こそばゆいが、嬉しくてありがたく招待を受ける事にした。友人の幸せに当てられたのか……カーラの魅力に陥落したのか分からないが、カーラと付き合っていると、独占欲が湧いてきて……すぐにでも彼女と結婚したい。そう思うようになった。
だが、私と結婚すればカーラに迷惑がかかるかもしれない。
懐にいつも忍ばせている絶縁届けは、既に黄ばんでいる。私は、リンゼイ子爵家の血を引いている。現当主は私の事など忘れているだろうが、あの家は非常に危うい立場に立たされている。順調なら私の事など放っておいてくれるだろう。だが、今はどんなものでも利用しようと必死だ。もし私の事を知って、利用価値があると思われたら……。
カーラには、迷惑をかけたくない。だから、プロポーズが出来ず悩んでいた。
ところが、思わぬ幸運が訪れた。
エリザベス様のおかげで忌々しいリンゼイ子爵家と縁を切る事に成功した。もう、プロポーズを躊躇う理由はない。
イアンの結婚式の前日。
私はイアンとリリアン、ソフィアと合流した。エリザベス様とポール様もご一緒だったそうだが、既にお二人は帰られた。
「エイダ様は、どんな様子だった?」
イアン達が会った女性の話をすると、リリアンとソフィアが嬉しそうに教えてくれた。
「元気そうだったわよぉ。夜会の時とは別人ね」
「そうね。今のエイダ様の方が美しかったわ」
「そりゃ、幸せだもの。ああなるわぁ」
「ちょっと、羨ましいわよね」
「本当にね。わたくし達はいつ幸せになれるのかしらぁ」
「あら、幸せになるのはわたくしだけかもしれないわよ。まぁ……ソフィアだけかもしれないけど……」
「言ってて虚しくなってきたわぁ。明日が来るのが嬉しいような怖いような……」
「分かるわ! けど……ポールの気持ちを受け止めるしかないわよね」
「そうよぉ……ああ……怖すぎるわぁ」
社交界の華と呼ばれる二人を虜にしているポール様は、多くの男達に恨まれている。だが、いつも涼しい顔をなさっているし、嫌味も直接的な攻撃も軽くかわしておられる。目に余れば報復なさっているようで、ポール様に怯える貴族も多い。
そんな話をしていたら、イアンの行きつけの宝石店に着いた。
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