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第12話
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ミアからの手紙は途絶えなかった。そしてさらには両親からもせっかくソフィアが仲直りしたいと言っているのだから、舞踏会ぐらい行きなさいという手紙をもらい受けた。そして手紙の内容はどんどんと荒れて行った。ミアからは暴言や罵倒。母親からは親不孝者と罵られる。
そして今日、ソフィアがポストまで行った。憂鬱な気分のまま、ポストを開けてみると、そこから大量に詰め込まれた手紙が地面に落ちた。落ちた手紙を一つ一つ確認してみると、ミアの友人達からであった。もうすでにミアは友達までに拡大し、ミアはソフィアを舞踏会という処刑場へ再び引きずり出そうとしている。
「なんで。こんなこと」
ウィルに見られてしまったら、また心配をかけてしまうと考えたソフィアは燃やしてしまおうか、どこかへ捨ててしまおうか悩んだけれども。これだけの量を誰にも見られずに一人で運び出して、処理することなど何か工夫をしなければ難しい。
「奥様、どうなさいました?」
玄関前の掃除をしようとしたメイドに見つかった。ソフィアは驚いて硬直した。メイドはホウキを持ったまま近づいてくるとその大量の手紙を見て絶句した。
「これは…」
これをこのまま燃やしてしまいたいという思い。でもそれ以上これを無視してしまったら、もっとそれ以上の何かが待っているのではないか。ウィルにも大きな迷惑をかけてしまうのではないかとソフィアは考えた。一通一通開けて、読みそれぞれに返信をして、大人の対応をしなければいけない。
「たぶん、全部私宛。全部私の部屋に持って行ってくれない?」
「ですが、これはあまりにひどいではありませんか。旦那様にご相談を」
「大丈夫。私がどうにかさせないといけないことだから。もうこれ以上迷惑はかけられない」
「迷惑なんてそんなこと」
メイドが必死に説得しようとするけれどもソフィアは譲らなかった。少し疲れが混じったような優しい笑みを浮かべてメイドに「お願い」と懇願した。
「わかりました」
その日ウィルは仕事に追われ、連日徹夜をして過ごしたことで、布団にくるまってぐっすりと眠っていた。その間っソフィアは手紙という手紙を開封しては、返信の手紙を書いてということを繰り返していた。食事もまともにとらず、珍しくコーヒーを飲みながら、その作業にふけっていた。とにかく早く終わらせてしまいたいという焦る気持ちがあった。
夕方ごろやっとベッドから這い出したウィルはサンドイッチを食べて、ソフィアの姿を探した。いつもラウンジで刺繍をしているか、庭の手入れをしているか、ウィルが頼んだ仕事を図書室で行っているかであるが、どこにもソフィアはいない。やっとソフィアの自室へ足を運んだ。
ソフィアはほとんど、自室にはいかない。おいてある自分の服や物を取りに行く程度。物置ぐらいで使っている。
夕日の差し込む廊下に立ちながら、部屋の扉をノックしてみた。返事は返ってこない、扉を開けようとしたとこで部屋の内側から扉が開き、顔色の悪いソフィアが立っていた。
「どうしたの。具合が悪いのかい」
「いえ、大丈夫です。少し集中していただけで」
見るからに疲弊しているソフィアの額にウィルは手を当ててみると、熱があった。
「熱がある。ベットで休もう」
「でも、まだやらなければいけない事が」
バランスを崩して、ソフィアはウィルの方へ倒れて、抱き留められた。扉を開けて中を見ると、テーブルの上にも床にも、大量の手紙。ゴミ箱にはあふれんばかりのぐしゃぐしゃに丸められた手紙が入っていた。
「これはどういうことだい」
もう隠せないと悟ったソフィアは子供の様にウィルの腕にしがみつき「ごめんなさい」とだけ言った。ウィルはソフィアをあの時のように抱きあげた。
「それじゃ何も分からないだろう。何があったんだい」
「ミアから、手紙が途切れなくて、父と母からも手紙が来るようになって。今日、ミアの友人達からも、舞踏会へ行くように書かれていて」
「君、一週間前手紙はもう届かなくなったって言っただろう。ミアはあきらめたんだって」
「貴方に心配をかけたくなくって。迷惑をかけられないと思って。こんなことになってごめんなさい」
いつもの敬語も話せなくなるほどに疲弊して、目をまっかにはれあげらせながら、ソフィアは涙をボロボロと流した。そんなソフィアの額にキスをして、寝室のベッドに寝かせた。
「君は熱があるから、今はここでじっとしていなさい。お粥をつるように言ってくるから」
寝室を出ようとしたウィルの服をソフィアは掴んだ。そして必死に乞うように「手紙は見ないで」とつぶやいた。ウィルは笑って「見ないよ」と返事をする。
寝室を出るとウィルは一目散にソフィアの自室に向かった。そしてソフィアの願いをまるで聞かなかったように、開封された手紙を手に取った。宛名を見ても知らない人間の名前。手紙を読んでみるとそこには、ソフィアの存在自体を拒絶するようなことが書かれていた。
怒りで手が震えるウィルは、他の手紙も読み漁った。どの人間も誰もかれも、ソフィアのことを侮辱し、差別し、貶している。
そして大量の手紙の中に埋もれていたミアの手紙を取り出した。
『お姉様ったら、ウィル・ケイルトン様に助けられて。王子に助けられたお姫様の気分なんじゃないの?でも残念。その人もお姉様の顔と体目当てよ。男なんて所詮、胸とかお尻とかそういうところしか見てないんだから。意地張ってないで、私が設営した舞踏会への返事を下さらない?お姉様みたいな不細工が結婚できるはずないんだから。それに今は頬が腫れてしまってますものね。傷でも残ったら、その人にも捨てられるわよ。私が独身男の一人や二人紹介してあげるから、さっさと戻ってきなさいよ』
その手紙を読み終えた瞬間、手紙の端を握りしめた。紙にはしわが走り、文字もぐしゃぐしゃになる。稚拙な文に、乱雑な字。
「どうしたもんか」
そして今日、ソフィアがポストまで行った。憂鬱な気分のまま、ポストを開けてみると、そこから大量に詰め込まれた手紙が地面に落ちた。落ちた手紙を一つ一つ確認してみると、ミアの友人達からであった。もうすでにミアは友達までに拡大し、ミアはソフィアを舞踏会という処刑場へ再び引きずり出そうとしている。
「なんで。こんなこと」
ウィルに見られてしまったら、また心配をかけてしまうと考えたソフィアは燃やしてしまおうか、どこかへ捨ててしまおうか悩んだけれども。これだけの量を誰にも見られずに一人で運び出して、処理することなど何か工夫をしなければ難しい。
「奥様、どうなさいました?」
玄関前の掃除をしようとしたメイドに見つかった。ソフィアは驚いて硬直した。メイドはホウキを持ったまま近づいてくるとその大量の手紙を見て絶句した。
「これは…」
これをこのまま燃やしてしまいたいという思い。でもそれ以上これを無視してしまったら、もっとそれ以上の何かが待っているのではないか。ウィルにも大きな迷惑をかけてしまうのではないかとソフィアは考えた。一通一通開けて、読みそれぞれに返信をして、大人の対応をしなければいけない。
「たぶん、全部私宛。全部私の部屋に持って行ってくれない?」
「ですが、これはあまりにひどいではありませんか。旦那様にご相談を」
「大丈夫。私がどうにかさせないといけないことだから。もうこれ以上迷惑はかけられない」
「迷惑なんてそんなこと」
メイドが必死に説得しようとするけれどもソフィアは譲らなかった。少し疲れが混じったような優しい笑みを浮かべてメイドに「お願い」と懇願した。
「わかりました」
その日ウィルは仕事に追われ、連日徹夜をして過ごしたことで、布団にくるまってぐっすりと眠っていた。その間っソフィアは手紙という手紙を開封しては、返信の手紙を書いてということを繰り返していた。食事もまともにとらず、珍しくコーヒーを飲みながら、その作業にふけっていた。とにかく早く終わらせてしまいたいという焦る気持ちがあった。
夕方ごろやっとベッドから這い出したウィルはサンドイッチを食べて、ソフィアの姿を探した。いつもラウンジで刺繍をしているか、庭の手入れをしているか、ウィルが頼んだ仕事を図書室で行っているかであるが、どこにもソフィアはいない。やっとソフィアの自室へ足を運んだ。
ソフィアはほとんど、自室にはいかない。おいてある自分の服や物を取りに行く程度。物置ぐらいで使っている。
夕日の差し込む廊下に立ちながら、部屋の扉をノックしてみた。返事は返ってこない、扉を開けようとしたとこで部屋の内側から扉が開き、顔色の悪いソフィアが立っていた。
「どうしたの。具合が悪いのかい」
「いえ、大丈夫です。少し集中していただけで」
見るからに疲弊しているソフィアの額にウィルは手を当ててみると、熱があった。
「熱がある。ベットで休もう」
「でも、まだやらなければいけない事が」
バランスを崩して、ソフィアはウィルの方へ倒れて、抱き留められた。扉を開けて中を見ると、テーブルの上にも床にも、大量の手紙。ゴミ箱にはあふれんばかりのぐしゃぐしゃに丸められた手紙が入っていた。
「これはどういうことだい」
もう隠せないと悟ったソフィアは子供の様にウィルの腕にしがみつき「ごめんなさい」とだけ言った。ウィルはソフィアをあの時のように抱きあげた。
「それじゃ何も分からないだろう。何があったんだい」
「ミアから、手紙が途切れなくて、父と母からも手紙が来るようになって。今日、ミアの友人達からも、舞踏会へ行くように書かれていて」
「君、一週間前手紙はもう届かなくなったって言っただろう。ミアはあきらめたんだって」
「貴方に心配をかけたくなくって。迷惑をかけられないと思って。こんなことになってごめんなさい」
いつもの敬語も話せなくなるほどに疲弊して、目をまっかにはれあげらせながら、ソフィアは涙をボロボロと流した。そんなソフィアの額にキスをして、寝室のベッドに寝かせた。
「君は熱があるから、今はここでじっとしていなさい。お粥をつるように言ってくるから」
寝室を出ようとしたウィルの服をソフィアは掴んだ。そして必死に乞うように「手紙は見ないで」とつぶやいた。ウィルは笑って「見ないよ」と返事をする。
寝室を出るとウィルは一目散にソフィアの自室に向かった。そしてソフィアの願いをまるで聞かなかったように、開封された手紙を手に取った。宛名を見ても知らない人間の名前。手紙を読んでみるとそこには、ソフィアの存在自体を拒絶するようなことが書かれていた。
怒りで手が震えるウィルは、他の手紙も読み漁った。どの人間も誰もかれも、ソフィアのことを侮辱し、差別し、貶している。
そして大量の手紙の中に埋もれていたミアの手紙を取り出した。
『お姉様ったら、ウィル・ケイルトン様に助けられて。王子に助けられたお姫様の気分なんじゃないの?でも残念。その人もお姉様の顔と体目当てよ。男なんて所詮、胸とかお尻とかそういうところしか見てないんだから。意地張ってないで、私が設営した舞踏会への返事を下さらない?お姉様みたいな不細工が結婚できるはずないんだから。それに今は頬が腫れてしまってますものね。傷でも残ったら、その人にも捨てられるわよ。私が独身男の一人や二人紹介してあげるから、さっさと戻ってきなさいよ』
その手紙を読み終えた瞬間、手紙の端を握りしめた。紙にはしわが走り、文字もぐしゃぐしゃになる。稚拙な文に、乱雑な字。
「どうしたもんか」
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