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第十三話
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驚いたことにジェラール様が帰ってきたのは早朝であった。こんなに急いで帰ってくるとは思わず私は、のうのうと眠っていた。昨晩は、ジェラール様との夜伽について悶々と考えていたために、なかなか寝付けず、眠ったのは1時を過ぎた時だった。ぐっすりと眠っているところを、メアリーにゆすり起こされて目を覚ました。
「な、何事!?」
「旦那様が帰還なさいました」
起こしに来たメアリーもネグリジェ姿で、急いで私の洋服を取りにドレスルームへ向かい、緑色のドレスを持って戻ってきた。
「まだ、日が上りかけているところなのに」
大きく背伸びをして、ベッドの横に置かれていた洗面器で顔を洗いタオルで拭いた。でも窓から外を見ると、確かに日の光が上る方から騎士団が馬に乗って戻ってくるのが見える。いったいどうしてこんな急いで帰ってきたわけ? どうしてこんなに。
「奥様早く」
緑色のドレスを着がえるのは早かった。私はふかふかのパニエも履かないし、アクセサリーだってつけないのだから。ジェラール様の騎士団が帰ってくるまでに、玄関で待つことができた。日の入りにより、山々は深い陰影を落としている。まだ肌寒くストールを羽織った。
馬の蹄が地面をける音と共に門を潜り抜けやってきたジェラール様は、騎士団を引き連れている。その様子に圧倒され、2、3歩下がった。噴水近くまで来ると、馬から降り、私のところへ一目散にやってきた。眉間にしわを寄せ、唇をきつく結ぶ表情は険しく、玄関に一人きりで立っていた私はまた2,3歩下がった。
「おかえりなさいませ」
返事はなく、代わりに私の二の腕あたりを強く両手でつかまれた。まるで蛇に睨まれたカエル。体中をくまなく観察された。
「宝石商がこなかったか?」
「き、昨日、朝方いらっしゃいましたが、それがどうかなさいましたか?」
「何を買った?屋敷の中を案内したか?」
それはまるで尋問だった、きつく腕を掴まれていて、身動き一つ取れない。
「いえいえ、何も買わず、銀貨1枚渡して追い返しました。相手をしたのも客間だけです。素性も分からない人でしたし、ちょっと、怪しいと感じて」
その瞬間ジェラール様の表情はほころびて、雰囲気も柔らかくなった。そのまま抱きしめられ、キスをされた。結婚式の時の軽いものではない、唇がぴったりとくっつき、驚きで頭の中が真っ白になった。背中感じる大きな熱い手のひら。苦い煙草の味。体が密着して、腕を爪を立てるようにして掴んだ。ジェラール様の身体に隠れて、口笛ともてはやす声が聞こえ、唇をそらし、彼の胸に顔をうずめた。
「ご無事で何よりです」
「ああ、セラフィナのおかげで助かった。ありがとう」
解放されると、口笛を吹き、もてはやしている騎士団の方なんて見れるはずがなく、俯いてストールで顔を隠し、そそくさと屋敷の中へ戻った。
「黙れ、お前ら。さっさと駐屯地へ戻れ」
玄関の壁に背中を預けて、胸を触って、腕を触った。まだ抱きしめられていた時の背中の手の感覚が残ってる。唇を触ると、煙草の味が思い起こされた。そしてベッドで半裸で押し倒される映像が浮かび、どうしようかと思ってしまった。これをリアルで体験することになるのだ。
壁に背をくっつけていると、ジェラール様がやってきて、思わず目をそらしてしまった。
「この御屋敷の為にこんなに早く帰ってきたのですか?」
「ああ。あの宝石商は、ぼったくりと思われるほど高い金額で宝石などを売りつけ、その日の夜に強盗に入り、宝石を盗むとともに、金目のものも奪っていく盗賊だ」
やっぱり私の勘は正しかったのか。あそこまで大量に宝石がある事が不思議だった。どこで買ってきたものなのかも言わないし、とにかく妙に下がらなかったから、不思議だったのだ。
「お疲れでしょうし、お休みください」
早く起きすぎてしまったし、ジェラール様がお休みになられたら、私ももう少し寝よう。四時間ぐらいしか眠っていないし、睡眠不足は夜伽にの時悪いと聞いたから。
「セラフィナ」
「なんですか?」
「さっきのは嫌だったか?」
顔を見て、思い出してしまい、頭の中がパンクした。
「い、いえいえ、や、や、その、嫌ではなかったのですが。驚きはしましたが。人前でああいうことをするのは、恥ずかしいので、二人きりの方が良いかなとはおもいますが。嫌というわけではありませんので」
ちらりとジェラール様の方を見ると、小さく笑っていた。その時初めてジェラール様の笑っているところを見た。少し口角を上げて、穏やかな表情で私の方を見ていた。
「お前は愛おしいな」
そう言うと私の頭を撫でて、歩いて行ってしまった。
「もう少し寝ていろ。くまがある」
「はい」
「な、何事!?」
「旦那様が帰還なさいました」
起こしに来たメアリーもネグリジェ姿で、急いで私の洋服を取りにドレスルームへ向かい、緑色のドレスを持って戻ってきた。
「まだ、日が上りかけているところなのに」
大きく背伸びをして、ベッドの横に置かれていた洗面器で顔を洗いタオルで拭いた。でも窓から外を見ると、確かに日の光が上る方から騎士団が馬に乗って戻ってくるのが見える。いったいどうしてこんな急いで帰ってきたわけ? どうしてこんなに。
「奥様早く」
緑色のドレスを着がえるのは早かった。私はふかふかのパニエも履かないし、アクセサリーだってつけないのだから。ジェラール様の騎士団が帰ってくるまでに、玄関で待つことができた。日の入りにより、山々は深い陰影を落としている。まだ肌寒くストールを羽織った。
馬の蹄が地面をける音と共に門を潜り抜けやってきたジェラール様は、騎士団を引き連れている。その様子に圧倒され、2、3歩下がった。噴水近くまで来ると、馬から降り、私のところへ一目散にやってきた。眉間にしわを寄せ、唇をきつく結ぶ表情は険しく、玄関に一人きりで立っていた私はまた2,3歩下がった。
「おかえりなさいませ」
返事はなく、代わりに私の二の腕あたりを強く両手でつかまれた。まるで蛇に睨まれたカエル。体中をくまなく観察された。
「宝石商がこなかったか?」
「き、昨日、朝方いらっしゃいましたが、それがどうかなさいましたか?」
「何を買った?屋敷の中を案内したか?」
それはまるで尋問だった、きつく腕を掴まれていて、身動き一つ取れない。
「いえいえ、何も買わず、銀貨1枚渡して追い返しました。相手をしたのも客間だけです。素性も分からない人でしたし、ちょっと、怪しいと感じて」
その瞬間ジェラール様の表情はほころびて、雰囲気も柔らかくなった。そのまま抱きしめられ、キスをされた。結婚式の時の軽いものではない、唇がぴったりとくっつき、驚きで頭の中が真っ白になった。背中感じる大きな熱い手のひら。苦い煙草の味。体が密着して、腕を爪を立てるようにして掴んだ。ジェラール様の身体に隠れて、口笛ともてはやす声が聞こえ、唇をそらし、彼の胸に顔をうずめた。
「ご無事で何よりです」
「ああ、セラフィナのおかげで助かった。ありがとう」
解放されると、口笛を吹き、もてはやしている騎士団の方なんて見れるはずがなく、俯いてストールで顔を隠し、そそくさと屋敷の中へ戻った。
「黙れ、お前ら。さっさと駐屯地へ戻れ」
玄関の壁に背中を預けて、胸を触って、腕を触った。まだ抱きしめられていた時の背中の手の感覚が残ってる。唇を触ると、煙草の味が思い起こされた。そしてベッドで半裸で押し倒される映像が浮かび、どうしようかと思ってしまった。これをリアルで体験することになるのだ。
壁に背をくっつけていると、ジェラール様がやってきて、思わず目をそらしてしまった。
「この御屋敷の為にこんなに早く帰ってきたのですか?」
「ああ。あの宝石商は、ぼったくりと思われるほど高い金額で宝石などを売りつけ、その日の夜に強盗に入り、宝石を盗むとともに、金目のものも奪っていく盗賊だ」
やっぱり私の勘は正しかったのか。あそこまで大量に宝石がある事が不思議だった。どこで買ってきたものなのかも言わないし、とにかく妙に下がらなかったから、不思議だったのだ。
「お疲れでしょうし、お休みください」
早く起きすぎてしまったし、ジェラール様がお休みになられたら、私ももう少し寝よう。四時間ぐらいしか眠っていないし、睡眠不足は夜伽にの時悪いと聞いたから。
「セラフィナ」
「なんですか?」
「さっきのは嫌だったか?」
顔を見て、思い出してしまい、頭の中がパンクした。
「い、いえいえ、や、や、その、嫌ではなかったのですが。驚きはしましたが。人前でああいうことをするのは、恥ずかしいので、二人きりの方が良いかなとはおもいますが。嫌というわけではありませんので」
ちらりとジェラール様の方を見ると、小さく笑っていた。その時初めてジェラール様の笑っているところを見た。少し口角を上げて、穏やかな表情で私の方を見ていた。
「お前は愛おしいな」
そう言うと私の頭を撫でて、歩いて行ってしまった。
「もう少し寝ていろ。くまがある」
「はい」
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