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9. うん。まあそれなりに……?

うん。まあそれなりに……? ① 【ソフト目なR18】

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お待たせいたしました。
微妙な感じの【R】発進で、再開にございます ( ̄▽ ̄;)

ゆるゆる~なイチャコラ? ですかね。如何にもな描写、少なめです。



*************************************
 

 尚人に拉致された翌日。梓は密かに焦っていた。
 一晩お泊まりした病院から戻り、自宅の洗面所の鏡の前で溜息を吐く。

(……ヤバイ。まだ残ってる)

 顔、特に目の周辺辺りに赤や紫の斑模様と、首に残った帯状の痕。
 すぐに冷やし、ヘパリン類似物質が入ったクリームを処方され、大分薄れたもののまだ完全ではなかった。
 同じ鬱血痕でも、キスマークなら恥ずかしさはあっても、見る者の生温かい微笑みで済む。しかし、如何にも犯罪臭が匂うような痕は、不味かろう。
 終始、怜が泣きそうな目で見る理由が解った。

 ストレスで変なテンションになっていたとは言え、尚人に妙な抵抗を見せなければ、もしかしたらこんな事になっていなかったのかも知れない。
 脳内梓は、やめろと必死で止めていたのに、正常な判断を下せなかった自分の愚かしさが悔やまれる。
 死んでいたかも知れない。
 死ななくても、レイプされ子供を失うことになったかも知れない。
 そう考えて、今更身体が震え上がった。

 お腹にそっと手を当てて、ごめんねと呟く。
 赤ん坊に異常がなかったのが、せめてもの心の救いだ。
 流産でもしていたら、梓も怜ももっと自分を責める事になっていただろうから。

「アズちゃん」

 洗面所の扉がノックされ、怜が顔を覗かせる。鏡越しに目を合わせ、「何?」と怪訝な顔をする梓の背後から、彼が抱きついてきた。
 俄に嫌な予感がする。

「一緒に入る」
「え~ぇ」
「何でそんな嫌そうなの」

 言いながら、手早く梓の服を脱がしに掛かっている。
 昨夜は病院だったため、お風呂に入ってから休んだ方が良いと、お湯を張ってくれたのは怜だった。
 しかし、昼日中のみんなが働いている時間帯に、怜とお風呂とは如何なものかと思う。

「ちょっ待って」
「はい。バンザイ」

 つい言われるままバンザイして、するりとキャミソールが脱がされた。習慣とは恐ろしいものだ。あっという間に下着姿にされ、上目遣いで怜を見ると真面目な顔を返され、「マッサージしてあげるね」と下着を取り払った。

「怜くんのマッサージ、油断ならないんだけど」
「失礼だな。湯船に浸かって血行良くしながら、鬱血痕、流してあげようと思ったのに。アズちゃんは僕の愛情と思いやりを疑うんだ?」
「前科者じゃない」

 膠もなく言い返す。
 既に何犯だか覚えてないくらい、別なマッサージに切り替わった挙げ句、ベッドに雪崩込まれたか分からない。

「それはアズちゃんが悪い。僕は真面目にっ、マッサージしてあげてるのに、煽る目で僕を見るから」
「怜くんの手付きが厭らしいからいけないの! 絶対ワザとだもん」
「はあ~ぁ。責任転嫁はダメだよ?」
「どっちがよッ」

 言い合っている間にも、怜はさっさと服を脱いで梓を抱き上げ、浴室に入って行く。シャワーのお湯で温めたバスチェアに彼女を座らせ、「掛けるよぉ」の声と共に頭上からお湯が降ってきた。



 怜が珍しく悪戯も不埒な動きも見せず、一心に梓を洗い上げた。
 温めのお湯に半身だけ浸かり、湯船の縁に凭れて、身体を洗っている怜をぼんやりと眺めつつ、やれば出来るんじゃない、などと考えていると、視線に気が付いた彼が振り返った。

「その視線の意味するところは、一体なにかな? やっぱり物足りなかった?」
「ち…違うし。逆です。悪戯目的じゃない怜くんに洗って貰ったのって、初めてかもって思ってただけだもん」
「あのねぇ。悪戯目的って、世の男の殆どが、好きな人に触れて平静でいられる訳ないんだからね? どれだけの精神力を要するか、考えてもみてよ。ったく。変なこと言い出すから、勃ってきた」

 泡を洗い流し、怜が湯船に入って来る。
 宣言通り元気になりつつある淫茎がピクッピクッと蠢き、ちょうど梓の目に入る高さにあって、慌てて目を逸らした。
 妊娠していて今更な気もするけど、明るい所で直視するのはやはり恥ずかしい。そんな彼女を揶揄うように、背後に身を沈めた怜が梓を抱き寄せて、屹立を腰にグリグリと押し当てる。

「咥えてくれるのに、まだ恥ずかしいの?」

 梓の顎をくいっと持ち上げ、彼女の頭を自分の胸に預けた。意地悪気な笑みを浮かべた瞳に覗き込まれ、赤面した梓は俯こうとして怜の手に制止された。ニヤニヤ笑ってる彼の目から逃れるべく、眉を引き絞って目を伏せる。
 事の最中だって極力見ないようにしているのに。

「明るいとこじゃ、無理ぃ」

 “イチモツを見ている梓を見る怜” を想像しただけで、軽くパニックになれそうだ。
「咥えながら上目遣いで見られたら、ゾクゾクするんだけど」
 彼の長い指先が、仰け反らせた喉を滑り上がり、熱を孕んだ声が耳元で囁いた。
 お湯に浸かっているのに、全身に鳥肌が立つ。ぶるりと身体を揺らした梓の耳朶を唇が食んだ。

「や……変態」
「へんた……って僕に限った話じゃないからね?」

 ちょっと不服そうにしながらも、怜の両手がゆるゆると、交互に喉を撫で上げていく。
 どうやらマッサージは始まっていたみたいだ。
 彼の指使いが心地良い。
 温まって血行も良くなってきたせいか、ふわふわした気分になって来る。
 梓はそのまま怜に身を預け、揺蕩うように眠りに落ちて行った。



 目が覚めると、柔らかな間接照明の灯りが、ぼんやりと室内を照らしていた。
 寝室は遮光カーテンなので、閉め切っていると外の明るさが分からない。
 一体何時だろう、とベッドヘッドの目覚まし時計を手に取った。
 まだ寝惚けていて渋い目を文字盤に凝らすと、デジタルの数字が十九時十三分を表示している。
 帰宅したのは十四時前だった。それからすぐにお風呂に入り、気が付いたらこんな時間である。何だかんだと三時間近く眠っていた。

(怜くんのマッサージ、気持ちいいなぁって思ってからの記憶が、ないわ)

 しっかりパジャマを着せて貰っている。
 寝ている大の大人の身体を拭いて、服を着せるのは中々に大変だと思うのだが。
 全く目が覚めなかった。
 梓が思うよりも、身体はずっとストレスを感じ、疲れていたようだ。

(……拉致監禁だもんね)

 あの後、龍兵は尚人をどうしたのか、気にならなくもないが、正直怖い。龍兵の世界には、首を突っ込む気にはなれない。彼もそれを知っているから、必要以上に関わって来ない。子供の頃にはなかったしがらみ。

「ホント、みっちゃんと智さんの交友関係って……」

 境界線がなさ過ぎる。
 その恩恵に与っている部分があることは、否めない。
 梓はのっそりと起き上がり、はあと吐息を漏らす。

「お腹、減った」

 大きなベッドの上を四つん這いで移動し、端に腰掛ける。立ち上がろうと足に力を篭めた所で、部屋の扉がそっと開かれ、怜が覗き込んで来た。

「あ、起きてた……ご飯出来てるけど、すぐ食べられそう?」

 何故だか残念そうに言って、真っ直ぐ近寄って来る。気のせいかと首を傾げつつ、梓は眉をふにゃっと寄せて笑った。

「ペコペコ」
「…そう。それは良かった。起きて直ぐ食べられるのは元気な証拠、なんだけど……」

 歯切れの悪い物言いに、一抹の不安が過る。
 怜がベッドの端に片膝を乗り上げ、梓は怪訝に彼を見上げた。その唇に怜の唇が重なり、身体がゆっくりと後ろに傾いでいく。
 怜の舌先が梓の唇を割って入り、彼女もまたそれを受け入れた。



 互いの舌を絡ませ、唾液と吐息が混ざり合う淫靡な水音に耳を犯され、虫が這うようなザワザワとした感覚が脊椎を伝い、腰に甘い衝撃が走る。下腹部がきゅんと疼き、蜜がトロリと零れるのを感じた。
 唇が離れ、梓の甘い吐息が漏れると、怜はうっとりするような微笑みを湛え、指は惑うことなく彼女のパジャマのボタンを外していく。梓はその手を押さえた。

「怜くぅん。お腹ペコペコなんだけど」

 下腹がきゅんきゅんして、確かに梓のやる気スイッチは入っている。
 けど、お腹が空いているのも事実で、怜の粘着気質を鑑みると長期戦になることも想定し、無視できない案件であるため、ダメもとで言ってみたら、

「うん。ごめんね。その前に、梓食べさせて。寝込み襲ってそのまま問答無用で縺れ込む心算だったんだけど、一足先に起きちゃってるし。昨夜から梓に飢えてて限界。ちょっと運動したら、ご飯がもっと美味しくなるからね?」

 艶然と笑ってクズ発言する怜に、眩暈を覚えた。彼は梓をベッド中央に移動させ、手並みも鮮やかに衣服を剥ぎ取られていく。
 床に放り投げられたパジャマを目で追って、夕飯はしばらくお預けになることを覚悟すると、梓は溜息混じりに口を開いた。

「ねえ。すぐにご飯食べさせて貰えないなら、何で食べるって訊いたの?」

 梓に跨り、自分の服を脱ぎ始めている怜を半眼で見る。

「すぐに食べられるなら、体調は悪くないって事でしょ。いくらアズちゃん不足でも、不調の時は手を出せないよ。いま大事な身体だし」
「でも、寝込み襲おうとしたんだね? 矛盾してる」
「そこが難しいとこではあるよねぇ」

 悪びれずに言い退けた怜の胸をペチッと叩くと、困ったように眉を寄せて薄く笑みを浮かべる。

「あの人の性癖は知ってるからそこは心配してないんだけど、念のために魔除けのマーキングしとかないと、ね。不安でしょうがないんだ」

 怜の揺れる眼差しが見下ろし、梓の頭のサイドに両肘を着くと、彼女の唇を啄む。

「僕が不甲斐ないばかりに、怖い思いさせてごめんね」

 自責の念を滲ませた双眸。
 梓はその両頬を包み込み、口角を上げた。

「怜くんとお兄ちゃんの可愛~い梓は、二人の指導の元、お陰様でその辺逞しく出来てるの、忘れてない? 二人を信じてたから、怖くてパニックになることはなかったよ? だからもう安心して」

 怜を引き寄せて唇を合わせた。
 薄く開かれた梓の唇を舐め、彼の舌がぬるりと滑り込む。彼女もソレを絡ませて誘い込むと、吸い付いて甘噛みした。


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