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第二章 王国編
第十一話 賊を懲らしめろ!
しおりを挟む俺と聖女様は村を建て直すべく村長の友人だというドワーフの大工アルゴーの元へと向かっていた。
目指すは大国''ロゴス''。
なんでもこの世界には主となる三大国というものがあるらしい。
大陸中央に位置するロゴス、
西側にあるプネウマ、
北のメシアの三つだ。
その中でも目的地であるロゴスは最大なのだとか。
三大国にはそれぞれ特色がある。
ロゴスは世界経済の中心。
商業や貿易が盛んで世界各国から色々な人々が集まり、とても活気が盛んな国。
プネウマは神秘の国。
美しい建物や景観、景色、文化が有名で、なんでもプネウマの女王様は世界一の美女らしいのである。
一度は見てみたいものだな…。
メシアは武人の国。
武と礼儀を重んじる国で、三大国の中では小国家だが武力は遥かに他の二国を上回る。
どの国も一回は行ってみてえなあ。
まあでも今は目的に集中するとしよう。
—————
ロゴスまでの道のりは徒歩なら三、四週間あたり。
道中、旅の行商人の護衛をして馬車に乗せてもらったり、金を払って乗せてもらえば二週間ぐらいまで短縮できる。
一人なら気が狂うような長さだが聖女様がいるなら話は別だ。
この人がいるだけで空気が弾む、世界が変わる。
一家に一台欲しい。
それに旅も意外と良いもので、特に俺は村以外の景色を見た事がなかったからとても新鮮だ。
どこまでも広がる青空に、遠くを眺めれば見えるヤバそうな城にでけぇ山。
夜になれば輝く星たちや、降り注ぐ流星群に美しいオーロラの姿。
まるでゼ○ダのような世界観に圧倒されつつもわくわくする。
オラワックワクすっぞ!
—————
「マナ!前方に魔物二匹!オウルベアとスパイダーです!」
「はい!」
旅に出てからというもの、魔物の対処は中々スムーズにやれていると思う。
これも聖女様と特訓したおかげだな。
感謝しかない。
とくに始めて戦ったスライムやスパイダー、ミストのヤツらの処理はワンチャン世界ランクトップ10に入るぐらいなんじゃ?とも感じるぐらいだ。
森を通る事が多いから出てくる魔物が多種多様で実におもしろい。
例えば今しがた倒したオウルベア。
コイツはクマとフクロウを混ぜたような見た目をしており、手に鋭い爪を持った魔物。
駆け出し冒険者の登竜門らしいからコイツを倒せるようになった俺は新米冒険者を名乗れる事だろう。
他には、でけえ蛇のサーペント、
見慣れたオークやゴブリン、
はたまた歩くキノコのような魔物?にロック鳥という恐ろしくデカい鳥。
魔物はとにかくデカいやつが多いな。
魔物どもはその独自に発達した力に混合魔術を使用しているので戦っている最中でもとても勉強になる。
それに戦闘経験も積めるし、ためになる。
これは俺のレベルを上げる良いチャンスだ。
今レベリングしとこ。
—————
「ふー…。聖女様、お怪我はありませんか?」
討伐を終え、聖女様に安全を伝える。
オウルベアは魔術こそ使ってこないが、肉体の強度がバリ高い。
これが厄介で、まあ倒すのがめんどくさいだわな。
だが素早さはそれほどなので数を当てればその内倒れてくれるのが救いだ。
スパイダーは言わずもがなの相手。
対処法は熟知している。
「ええ…。大丈夫ですがなぜでしょう…。何か胸騒ぎがします。」
「胸騒ぎ…ですか。僕から離れないで下さいね。」
実際のところ多分、俺より聖女様の方が強い。
しかしだからと言って、
おら!お前俺より強いんだから戦えや!
なんて言えるわけないだろう。
聖女様は俺が守るべき人。
村長との約束もあるし何より俺がそう誓ったからだ。
守りたくて守る。
聖女様はそういう人なのだ。
それに村長から教えられた賢者のこともある。
最大限周囲を探りつつ、いつでも戦えるようにして先へと進む。
—————
「だ、誰かああああ!!!」
「お兄ちゃあああん助けてええ!!」
しばらく森を歩いていると、奥の方から子供の悲鳴が聞こえてきた。
「マ、マナ!行きましょう!!」
「はい!!」
俺たちは声のした方へと急いで走り出した。
—————
「な、なんだあれ…!」
現場に到着した、目に入ったのは幼い女の子を拉致していた謎の賊の姿。
全員一貫して黒い鎧を装備している。
近くには捕まっていた女の子と同い年かもうちょい上ぐらいの男の子。
多分、この二人は兄妹だ。
「なんだお前らは?」
俺たちに気づいたか賊の一人が睨んできた。
鎧に包まれた無機質な顔がめちゃくちゃ怖い…。
やばい、冷や汗が溢れてきた。
「その子たちを離してあげて下さい。」
言いつつ、敵を観察する。
ざっと五、六人といったとこか。
増援の可能性もあるから注意した方が良い。
過去にスペル○ア兵が無限に増援を呼んで詰んだ記憶がある。
だから呼ばれる前に無力化させるのが一番の得策だ。
全員、腰に剣を構えてるからコイツらの武器はきっと剣だな…。
(よし…。)
そうと決まればやる事は一つ。
本は常に持ってたから魔法を使う準備は出来ている。
俺は手をクイッとさせ一連の工程を終わらした。
「聖女様、その男の子の側に。」
「分かりました。気をつけて下さいね…!」
聖女様が男の子のところに行ったところで改めて賊の方を向き直す。
「邪魔者はさっさと殺せ!!」
女の子を掴んでるヤツが叫んだ。
察するにコイツがリーダーか、その言葉を境に全員が剣を抜き俺に斬りかかってくる。
だが動いたと同時に彼らの動きは止まった。
「な、なんだこれ!?体が…!!」
「これは…糸か!?」
これは以前、ロックスとの戦闘で敗れてしまった技。
しかし、ロックスが異常なだけで並の相手や多人数戦闘においては十分実用可だと踏んだのだ。
(やっぱり…ロックスさんが強すぎただけか…。いや、でも…。)
この兵士たち、動きが恐ろしく早かった。
剣を抜いてから俺に斬りかかるまでの間があまりにも短すぎたのだ。
スライムとの修行で多少動体視力は上がったつもりだったが、スパイダーウェブを張ってなかったらさっきのでゲームオーバーだっただろう…。
「クソ…まだまだ弱いな…。」
少々愚痴がこぼれたが俺に抜かりはない。
スパイダーウェブで縛られた賊の頭上に土魔術で石を作り、落っことす。
バゴン!という実に痛そうな音が響き、兵士たちは気絶した。
「チッ…!役立たずどもめ…!!」
「マナ!女の子の方をお願いします!」
どうやら女の子を捕まえてたやつは仲間を置いて逃げるらしい。
それはそれで良いんだが子供を傷つけた罪は重いぞ。
それにな、
「無駄ですよ。」
逃げようとしたやつも俺があらかじめ逃げると予想して張っておいた糸に引っかかってずっこけた。
滑稽である。
「糸…!?なんじゃこりゃあ…!!」
「その子は返してもらいますよ。」
俺は指をパチっと鳴らす。
するとピリッという音と共に男を賊の男を気絶させた。
本当はコインをぶっ放して超電磁砲をコイツの脳天にぶち込んでやりたいが、聖女様と子供がいる手前、やめておいてやる。
三人に感謝するんだな。
今使ったのは雷魔術と風魔術を組み合わせたもの。
微量な電気を空気中に乗せ、音速を超えたスピードで相手に伝えるものだ。
威力は控えめだが気絶させるぐらいにはある。
ちなみにこの技は''サンダーマウス''という魔物の放電能力と同じ原理だ。
「見事ですよ、マナ!」
(しっかしこのマーク…。どっかでみた気がするようなないような…。)
紋章のようなマークの下には''II''という文字もある。
まあ今はそんな事どうでも良い。
俺は捕まっていた子供二人の方を見た。
この二人、多分兄妹だな。
二人とも顔が似てるし、それに美男美女だ。
今はどっちもかわいいが大人になったらお兄ちゃんはかっこようなりそうだ。
このお兄ちゃんは多分すごい優しい子だ。
俺たちも警戒してるのだろうが絶対に妹を離そうとしない。
「さあ、もう大丈夫ですよ。」
そんな二人の子供に俺は手を差し出した。
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