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○2章 クエストへ行こう
-5 『変人とドラゴン』
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「また会ったな、少年!」
きまぐれ亭を出ると、颯爽と元気の良い声で呼び止められた。
振り返るとマルコムの姿があった。
爽やかな笑みを浮かべながら、額から多量の血を流している。
「うおっ。お前、なんだよその顔」
「ああ、これかい。ちょっと転げてね」
それにしては随分と出血が多そうだが。
それにマルコムに見えるHPが9になっている。明らかにダメージを受けているようだ。
「勇者様はおっちょこちょいよねぇ」
マルコムの脇で、肘を抱きながら穏やかに微笑んだのはスクーデリアだ。
山を下りる時に彼らとは別れたのだが、どうやら二人で一緒にいたらしい。
――あのダメージ、ぜったいスクーデリアの仕業だろ。
ドラゴンである彼女はマルコムによって力を封印されてしまっている。それを取り戻すためにはマルコムを殺さなければいけないのだ。
お互いに命を狙われていて大変だな、と俺は同情する気持ちでマルコムの肩をたたいた。
しかしマルコムはまるでそれを理解していないのか、馬鹿みたいに明るい顔で飄々としている。表情はずっとにやけていて、せっかくのイケメン面も血まみれのせいもあって、ひどく気持ち悪いものになっていた。
「随分とご機嫌そうだな」
「そう見えるかい」
「頭から血を流してても笑ってられる奴は、無邪気な子供かご機嫌な調子者くらいだよ」
「ふっ、そうだな。私はいま、万全と調子付いているといえるだろう」
またなんというか、かなり前向きに言葉を捉えられたようだ。
ふと顔を近づけたマルコムが、声を潜めて俺に囁く。
「私は女の子が好きだ」
「だからなんだよ」
「だがこれまで、どういうわけか私の周りには女の子がまったくついて来なかったのだ。勇者なのに、だ。せっかく勇者として名を上げて、その名誉と功績で世界中の女の子を侍らせて、勇者ハーレムランドを作るつもりだというのに。まったく女の子がいなかったのだよ!」
マルコムがポケットから紙切れを取り出して見せてきた。
『マルコム様 勇者ハーレムランド。一日招待券』
そう書かれたチケットのようなものだ。
「私は将来のためにこれを配り歩いてまで女の子を集めようと必死だったのに。それなのに、これまでまったく成果なし!」
――いや、これのせいじゃないんですかね。
チケットには手書きなのかミミズのような線でマルコムの似顔絵まで書かれていて、その絵から吹き出しで『一緒にすけべえしようよ』とおっちゃらけた言葉を呟いている。
控え目に言って、気持ち悪い。
「それが見たまえ! 私にやっと熱心なファンが現れたのだ! 一生、私が死ぬまでついてくると言ってくれるほどに熱心な! これはやっと、私の夢が叶いはじめる第一歩と言えるではないだろうか!」
「いやあ、どうだろうな」
「言えるのさ!」
聞いちゃいない。
というか間違いなく、死ぬまで、ってのはこの先何十年人生をまっとうするまで、という意味ではないだろう。
しかし有頂天となっているマルコムからすれば、スクーデリアからの攻撃も、ファンからの熱烈なアプローチに変換されてしまうのだろう。
そのお気楽さはある意味羨ましい。
「それで、見たところ君たちもクエストを受注してきたようだが。どうだい。一緒に私を連れて行かないかい」
「え、なんで」
つい率直な言葉が出てしまった。
「私もちょうどクエストを受けようと思ってたところなんだ。ここで会ったのも何かの縁。私がそのクエストを手伝ってあげるさ」
「まあ、それは助けるんだけど」
不自然な親切は少し警戒心を抱いてしまう。
マルコムはそんな複雑なことを考えるような人間ではなさそうだが。
「なに、気を張るでない。私も最近、気がつくといつの間にか怪我をしていたり体力を消耗していて、薬草の消費が早くて金欠なんだ」
でしょうね。
「それだけか?」と俺が耳打ちをすると、
「二人も侍らせているなんでずるいぞ。私ももっと女の子に囲まれたい!」と鼻息荒く囁き返された。
だめだこの勇者。俗にまみれてやがる。
はやく魔王を討伐させて隠居させないと。
「と、いうわけで。私も同行させてもらうよ。安心したまえ。私の報酬は二割といったところで十分だから」
「……勝手にしろ」
どうせ断ってもついてきそうな勢いだ。
「よろしく、お嬢さんたち」
指を鳴らしてきざったらしくミュンたちにウインクして見せたマルコムだが、額から流れるひどい流血のせいでまったく締まりのない格好だった。
きまぐれ亭を出ると、颯爽と元気の良い声で呼び止められた。
振り返るとマルコムの姿があった。
爽やかな笑みを浮かべながら、額から多量の血を流している。
「うおっ。お前、なんだよその顔」
「ああ、これかい。ちょっと転げてね」
それにしては随分と出血が多そうだが。
それにマルコムに見えるHPが9になっている。明らかにダメージを受けているようだ。
「勇者様はおっちょこちょいよねぇ」
マルコムの脇で、肘を抱きながら穏やかに微笑んだのはスクーデリアだ。
山を下りる時に彼らとは別れたのだが、どうやら二人で一緒にいたらしい。
――あのダメージ、ぜったいスクーデリアの仕業だろ。
ドラゴンである彼女はマルコムによって力を封印されてしまっている。それを取り戻すためにはマルコムを殺さなければいけないのだ。
お互いに命を狙われていて大変だな、と俺は同情する気持ちでマルコムの肩をたたいた。
しかしマルコムはまるでそれを理解していないのか、馬鹿みたいに明るい顔で飄々としている。表情はずっとにやけていて、せっかくのイケメン面も血まみれのせいもあって、ひどく気持ち悪いものになっていた。
「随分とご機嫌そうだな」
「そう見えるかい」
「頭から血を流してても笑ってられる奴は、無邪気な子供かご機嫌な調子者くらいだよ」
「ふっ、そうだな。私はいま、万全と調子付いているといえるだろう」
またなんというか、かなり前向きに言葉を捉えられたようだ。
ふと顔を近づけたマルコムが、声を潜めて俺に囁く。
「私は女の子が好きだ」
「だからなんだよ」
「だがこれまで、どういうわけか私の周りには女の子がまったくついて来なかったのだ。勇者なのに、だ。せっかく勇者として名を上げて、その名誉と功績で世界中の女の子を侍らせて、勇者ハーレムランドを作るつもりだというのに。まったく女の子がいなかったのだよ!」
マルコムがポケットから紙切れを取り出して見せてきた。
『マルコム様 勇者ハーレムランド。一日招待券』
そう書かれたチケットのようなものだ。
「私は将来のためにこれを配り歩いてまで女の子を集めようと必死だったのに。それなのに、これまでまったく成果なし!」
――いや、これのせいじゃないんですかね。
チケットには手書きなのかミミズのような線でマルコムの似顔絵まで書かれていて、その絵から吹き出しで『一緒にすけべえしようよ』とおっちゃらけた言葉を呟いている。
控え目に言って、気持ち悪い。
「それが見たまえ! 私にやっと熱心なファンが現れたのだ! 一生、私が死ぬまでついてくると言ってくれるほどに熱心な! これはやっと、私の夢が叶いはじめる第一歩と言えるではないだろうか!」
「いやあ、どうだろうな」
「言えるのさ!」
聞いちゃいない。
というか間違いなく、死ぬまで、ってのはこの先何十年人生をまっとうするまで、という意味ではないだろう。
しかし有頂天となっているマルコムからすれば、スクーデリアからの攻撃も、ファンからの熱烈なアプローチに変換されてしまうのだろう。
そのお気楽さはある意味羨ましい。
「それで、見たところ君たちもクエストを受注してきたようだが。どうだい。一緒に私を連れて行かないかい」
「え、なんで」
つい率直な言葉が出てしまった。
「私もちょうどクエストを受けようと思ってたところなんだ。ここで会ったのも何かの縁。私がそのクエストを手伝ってあげるさ」
「まあ、それは助けるんだけど」
不自然な親切は少し警戒心を抱いてしまう。
マルコムはそんな複雑なことを考えるような人間ではなさそうだが。
「なに、気を張るでない。私も最近、気がつくといつの間にか怪我をしていたり体力を消耗していて、薬草の消費が早くて金欠なんだ」
でしょうね。
「それだけか?」と俺が耳打ちをすると、
「二人も侍らせているなんでずるいぞ。私ももっと女の子に囲まれたい!」と鼻息荒く囁き返された。
だめだこの勇者。俗にまみれてやがる。
はやく魔王を討伐させて隠居させないと。
「と、いうわけで。私も同行させてもらうよ。安心したまえ。私の報酬は二割といったところで十分だから」
「……勝手にしろ」
どうせ断ってもついてきそうな勢いだ。
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